コメント
2件
面白かったっスわ! 運転手ぅぅぅぅぅ
はい、はい、と
相槌紛いなものが口から出るが
私の脳内には入ってこない
何の話をされていたのか
ああ、思い出した
今、私は
誘拐されたんだ
「おい、車出せ」 と、1人が指示すると、私含め4人が同時に車ごと進み出す
スモークガラスのせいで、フロントガラス以外の窓からは外の景色が見えない
が、スモークを超えてちらちらと映る街の光が更に私の不安を煽った。
「はい」 と、返事をしようと、口を開こうとした途端
ちかちか、とフロントガラスから光が射し込んでくる
パッシングだ。と分かった次の瞬間には
1台の車が、私達の乗るバンに向かって突進していた
一拍置いて、周りからの悲鳴がバンと私達を包んだ
「おい、大丈夫か?」 と、1人の男が運転手の安否を確認するも、もれなく彼は大きめのガラスの破片が目に刺さり死んでいた
私の口から言葉にならない声が溢れ出てくると同時に恐怖が縛る
「おい、降りるぞ」 ほかの仲間と私に声をかける
1人がスライドドアに手をかけ、ノブを引き、滑らせる
完全に開き切ると同時に、刀のような物が1人に襲いかかった
嗚咽が聞こえる、彼はそのまま倒れ込み、気を失ってしまう
「おい!」と、もう1人が叫ぶも、その人も刀のような物で突かれて狭い車内で倒れ込む
もう1人がドアを閉めようとするも、気絶した1人が挟まれる形となり、閉めることが出来ない
「おいお前、こっちだ」 と、反対側のドアに案内され、スライドドアを滑らせると、腕を引っ張られ外に投げ出され、数メートルほど飛ばされた
痛い、が、なんとか起き切ると、目に映ったのはタクシーに突っ込まれフロント部分がひしゃげているバンと、そのバンに乗っていた大柄な男が、タクシー運転手のような人と対峙していた
「お前よくも!」と怒りをあらわにする男を置いて、傘がを持つ右手が動く
その素早さは、目で追うのには速すぎて見えない程の技だった
少しの嗚咽の後、大柄な男からの図太く、圧巻な、重たい殴りが繰り出される
男が勝ちを確信したかのような笑みを浮かべた後、運転手は軽々のそれを躱すと、傘の先端から鋭利なナイフの様な突起物飛び出させ
一気に、でも繊細に、男の首へ突き刺した
男は何も言わず、血を噴き出しながら倒れた
タクシーの運転手は、大きく、浅いため息を吐き出すと、どこからかメガネ拭きのような布を取り出し、大量の血が付いた傘を拭き始める
サイレンが聞こえてきた頃、運転手は布を仕舞うと、私に
「乗るか?」と一言だけ
私はボロボロだがまだ動きそうなタクシーの後部座席に乗り込む
運転手も直ぐに乗り込んで来て、鍵を刺す、鍵を捻ると、少し時間はかかったが、無事エンジンは始動した
ギアをバックに入れると、様々な破片を踏んづける音と共に、勢いのよいエンジンの音がした
「お客さん、どちらまで?」 それがその日、私が憶えている最後の言葉だ。