累音
鬱々する…
6月の蒸し暑いじめりけ
鬱蒼とした髪の毛に苛立ちを覚える
振られたばかりだから
きっと雨すらも気持ちいいのに
この暑さのせいで汗のようで気持ち悪い
累音
ははっ
累音
こりゃいいや…
いくら涙を流したって
降り注ぐ雨と共に流れてしまう
五月雨過ぎの篠突く雨
華々しく洗い流してくれない
くそったれな雨
累音
溶けてなくなりたいや…
悲しみもろとも
全部湿気に変わってなくなればいいのに
拓哉
…ん。
あいつは傘をさしに来やがった
累音
なに?
拓哉
え
累音
なんできたの?
拓哉
いや
累音
いまさら遅い
拓哉
うん
傷つけたあいつの
いらぬ優しさ
ボツボツと落ちる大粒の雨に
乾く笑いが絶えない
累音
ばかなの?
拓哉
え
累音
…
拓哉
いや、ごめん
累音
や、あんたのせいなんだけど
拓哉
…
累音
…
ボツボツボツボツ
ザザザザー
累音
え?だから…?
拓哉
いや、
累音
…
拓哉
えっと…
拓哉
風邪ひくし
ボツボツボツボツ
ザザザザー
今更許せるはずなんかないのに…
累音
まじ、やめてや…
いらぬ優しさが悲しさを引き立てる
軽く傾けた斜め45度の傘に
彼はずぶ濡れて
私の背中へ雨は遠ざかる
累音
遅いんだけど…
拓哉
…ぅん。
拓哉
ごめん。
累音
知らんし…
迎えに来てなんか言ってない
迎えに来ても欲しくない
なのに生ぬるい
この湿気のせいだろう
頬から雨粒が伝った
累音
…バカ
拓哉
…ぅん。
五月雨過ぎの篠突く雨
遠く離れた相合傘
75センチ離れた僕と君
累音
バカ、
累音
バカ
累音
バカバカバカバカ!!!
累音
大っ嫌い!!!!
この大きな雨音で全部かき消されればいい…
拓哉
帰ろう?
累音
…ぅん。
2人が入るには狭すぎるような傘に
無理やりねじ込んだ肩と肩
累音
お前なんて雷にうたれて死ねばいいのに…
拓哉
なんか言った?
やっぱり君の隣がいい…