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あの日 はじめて君を見た
くだらない飲み会の帰り道
向かいのホームに君はいた
綺麗な人だと思った
その日はただそれだけだった
次に君を見たのは
バイト先のコンビニ
客足も少なく 退屈な夜勤
ただ時間が過ぎるのを待っていた
「あの日の綺麗な人だ」と思った
思っただけで 口にはしなかった
綺麗な人は
度数の強いお酒を2缶買って行った
バイト終わり
朝焼けに包まれて帰路に着く
この瞬間はいつも虚しい気持ちになる
いつからかそれに耐えられなくなって
酒を片手に帰るようになった
クサい台詞だと思ったけど
たまにはそんなことを呟いてみたくもなる
驚いて振り向くと
あの綺麗な人がクククと笑っていた
クサい独り言を聞かれた恥ずかしさと
もう一度彼女に出会えた喜びと
バイト終わりの朝焼けの虚しさ
色んな感情がごちゃごちゃになって
頭がおかしくなりそうだった
あの日 はじめて貴方を見た
彼氏の家に向かう途中
突然雨が降ってきたので
雨宿りで立ち寄った深夜のコンビニ
あてもなく店内を見渡したけど
すぐに雨が止んだので
何も買わずに出て行った
店員さん ぼーっとしてたな
その日はただそれだけを思った
次に貴方を見たのは
あの日からしばらく経って
彼氏と別れた夜
「あの日のぼーっとしてた店員さんだ」 と思った
彼氏と別れて まんまとヤケ酒
なんだか恥ずかしくなった
もうこの街に来ることもない
そう思うと何故だかまた寂しくなった
ベンチでお酒を飲んでいたら
いつの間にか朝になった
突然この状況がバカバカしく思えてきて
朝焼けのうつる川沿いを独り歩きだす
前から聞こえたそのクサい台詞に
何故か涙が出そうになった
酒を片手に独り言を呟く貴方に
「また会えた」と純粋に思った
振り向いた貴方の顔は真っ赤で
とても愛おしかった
そんな貴方の右手には私と同じ
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