この作品はいかがでしたか?
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コメント
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わー!!のり巻きさん😳 読後1分くらいずっと思考が停止してました… まず、タイトルからは全く内容が察しできなくて最後の最後でタイトル回収された事に驚きました。 伏線だらけだったのに読者に最後まで見抜かせないのり巻きの作品、凄いです。 まさか自分(父)の現実を自分が書いた物語と同じ展開にするお父さんがまたロマンチックで素敵です!! 個人的には、祖父や曾祖父等の言葉を使わないで「父さんの父さんの〜」と
タイトルに込められた想いがストーリーと重なって、伏線となっているなんて… 表現力すごすぎます(
父さんは普通のサラリーマンだった
毎朝太陽が昇る前に家を出て
夜遅くに帰ってくる
時には酔っ払ってて
時には汗で服が張り付いてて
僕はそんな父さんが好きだった
そんな父さんには こだわりがあった
大切な手紙には 直筆で書く
父さんの父さんも
父さんの父さんの父さんも
みんなずっと守ってたことだった
僕が父さんの書斎に行くと
父さんはいつもペンで何か書いていた
僕がじっと見つめていると
父さんはいつも
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
父さん
そう言って 僕の頭を撫でていた
意味はよく分からなかったが なんだか嬉しかった
そんな大好きな父さんが
一昨日、消えた
理由はくだらない浮気
会社の21歳も年下の女と どこかへ消えた
母さんは泣いていた
そりゃそうだ
朝から晩まで俺の子育てを一人でして
夜遅くまで父さんの帰りを待っていた
父さんの文句も 何一つ嫌な顔せず聞いていた
それなのに、消えた
朝、父さんの荷物も一緒に
唯一残ったのは
父さんが大切にしていた万年筆
インクもでないただのガラクタだった
それなのに父さんは大切にしていた
なんでだろ
その答えはもう聞けないだろうが
嫌いな人の物を取っておいても 仕方がない
そう思って万年筆を手にした時だった
カ ラ ン ・ ・ ・
中で音がした
なんだろうと思って開けた
そしたら一枚の紙が目に入った
母さんに見せたら泣き崩れた
何がなんだか分からなかった
母さんは信じてしまったのだろうか
ごめん 愛してる
その嘘みたいな言葉を
母さんがポツリと話し始めた
父さんは作家だった
売れない作家
どこの出版社にも読まれず ただただ埋もれていった
ただの売れない作家
そんな父さんの作品の 最初の読者が
母さんだった
父さんの処女作 「海に溺れて」
母さんはその表現に心奪われたらしい
やがて二人は恋に落ちた
その時出した作品が 「ごめん 愛してる」
病気を患った男性が 愛する女性を思い
女性が自分を思い出さないように 浮気したと言って別れる話
気づかなかった
知らなかった
こんなありふれた内容を 一番嫌っていたのは
他でもない父さんだったから
信じられなかった
そして今日、父さんの遺体が 家に届いた
背中にポツポツと痕があった
腹の下の方に手術痕があった
死因は病死
父さんの最後は誰にも見られる事なく
静かに終わった
立花 ミケーラ@我が家コンさん主催
我が家コンテスト
お父さん部門
完