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8 - 花弁が散る頃に

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2021年05月28日

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日曜日の朝

朝食を食べ終えた私は、兄がいる病室に向かった

ガラガラと病室の扉を開ける

古寺 アスカ

おはようお兄ちゃん!
今日は、晴れだよ!

私はそのまま病室のカーテンを開けて外の景色が見れるようにした

古寺 アスカ

ほら、桜も満開…
綺麗だね〜

古寺 アスカ

今年こそ、2人でお花見行けるといいね……

兄、優雅からの反応はない

そりゃそうだ、兄は数年前から事故で意識不明なのだから

ふわっと風が吹き、私と兄の髪の毛が揺れた

スっと整った鼻、綺麗な唇目に少しかかるくらいの前髪

昔から変わっていない顔で目を閉じて眠っている兄を私は見つめることしか出来ない

いつかきっと目覚めてくれる時が来るまで

古寺 アスカ

じゃあ私、もう行くね

窓から見たように外の桜は満開だっだ

古寺 アスカ

……本でもよ持っかな……

私は桜の木の下に移動すると持ってきていた本を開いた

本には桜の花びらで作ったしおりが挟んである

古寺 アスカ

……

私はしおりを見ると思い出を見るように目を閉じた

数年前

古寺 優雅

アスカ、誕生日おめでとう

古寺 アスカ

ありがとう!!!
お兄ちゃん!

古寺 優雅

はい、これ誕プレ

古寺 アスカ

わぁ〜!ね、開けていい?

古寺 優雅

うん、いいよ

古寺 アスカ

やった!

紙袋を開けると中には桜色のものが沢山あった

古寺 アスカ

あ、このハンカチ桜の刺繍がしてある〜!

古寺 アスカ

どれも桜色で可愛い〜

古寺 優雅

アスカ、桜色好きだろ?
今春でたまたま桜セットみたいなのが売ってたから……

古寺 アスカ

なるほど〜あ、これは手作りかな?

私はしおりを手に取る

古寺 アスカ

綺麗……

古寺 優雅

うん、手作り

古寺 優雅

……アスカの目の色は桜の色とよく似てるね

古寺 アスカ

そう?

古寺 優雅

うん、すごい似てる

そういうと兄は目を細めてニコッと微笑んだ

古寺 アスカ

懐かしいなぁ……

古寺 アスカ

お兄ちゃんの笑顔を見たのはあれが最後だっけ……

古寺 アスカ

いや、起きたらきっと笑ってくれるよね!

私はそういうとパタンと本を閉じた

古寺 アスカ

よし!お兄ちゃんが起きた時寂しくないように花を集めよう!

古寺 アスカ

あ、でもこの病院の人にとっていいか許可を取らねば……

看護師

花?

古寺 アスカ

うん!

私は大きく頷いた

古寺 アスカ

お兄ちゃんが起きた時に寂しくないように!

看護師

勿論いいよ、アスカちゃんはほんとに優雅さん思いだね

古寺 アスカ

へへへ……ありがとうございます!

私はそう言うとまた庭に向かった

医師

ほんと、アスカさんはお兄さん思いですね

看護師

大好きなんでしょね……きっと

医師

起きた時寂しくないように……か……

医師

あれは自分の状況の意味も入れて言っているのかな……

医師

優雅さんが起きても会えない可能性が高いから

看護師

さぁ、どうでしょうね……

医師

可哀想に、あんなに可愛くて、優しくて、明るい子が……

看護師

ほんと、その通りです……

古寺 アスカ

同情されるのは嫌いだ

皆、私の状況を聞いたら「可哀想」と口にする

可哀想で済むわけでもないのに、そう思うなら楽しい話しようよ

楽しい話をして私に元気をちょうだいよ

可哀想で済ませて、ムカつく

医者も、友達も、親戚も、教師も、近所の人も

可哀想、可哀想って

そう言ってしばらくの間はお見舞いに来るのにいつ間にか「どうせ生きてるんだから」というように見舞いなんか誰も来なくなる

ほんと、ムカつく人間ってなんでこうなんだろう

お兄ちゃん、私は毎日死ぬまで、お兄ちゃんが起きるまでお見舞いに行くからね

古寺 アスカ

……このくらいでいいかな

古寺 アスカ

ほら、お兄ちゃん見て沢山花を持ってきたよ

古寺 アスカ

どれも綺麗でしょ?
ここに飾っとくからね

古寺 アスカ

ほら、この花小さくて可愛くない?

古寺 アスカ

……

やっぱり兄からの反応はない

でも、寝ていても人は話しかけられたことは聞こえているらしい

だから、私はそれを信じて話しかけ続ける

いつか起きた時に私の言ったことが覚えているように

3日後、朝方

周りで看護師や医師の慌てる声と話しかけてくる声や「ピーピー」と機会の音が聞こえる

正直、何を言っている間からない、頭が混乱していて聞き分けることすら出来ない

苦しい、息ができない

心臓が「ぎゅぅぅ」と痛む、「キーン」と耳鳴りがする

ついに、死ぬのだろうかそんなことが頭をよぎる

景色がかすれて見えてくる、「ピッ…………ピッ…………」と弱々しい機会の音が聞こえてくる

古寺 アスカ

おに…………ちゃ………………

「ピー」

古寺 優雅

んっ……ん?

目が冷めるとそこは知らない天井だった

ベットも服も知らないものばかり

しかし、雰囲気でここがどこなのかすぐにわかった

古寺 優雅

……病院…………

どうしてこんなとこに居るのか、どれほど眠っていたのか全然分からない

すると「ガラガラ」とちょうど看護師らしき人が入ってきた

看護師

……ゆ、優雅さん?!

古寺 優雅

え、あ……ど、どうも……?

看護師

起きたんですね!良かった……
優雅さん、事故で2年くらい眠ってて……

古寺 優雅

え、そ、そうだったんですか…………

看護師

あ、そ、それより妹さん……分かりますか?

古寺 優雅

あぁ……アスカの事ですか?

看護師

はい、その……実は

看護師

アスカさん……半年前から”心臓病”で病気もかなり進行しててその……さっき……

看護師

上手く心臓が動かなくなって、心肺停止しました……

古寺 優雅

は……?

古寺 優雅

……アスカ、どこにいるんですか……

看護師

き、緊急治療室です

場所を聞いた瞬間、俺はベットを出て治療室に向かった

看護師

あ、だ、ダメですよ!
起きたばっかなのに走っちゃ……

看護師の話を無視し、俺は部屋の場所を確認すると全速力で病院内を走り抜けた

走っている途中色んなことを思い出してきた

思い出すと言っても声だけ

きっと、全て俺が寝ている間にアスカが喋ったことだろう

「お兄ちゃん、今日ね、学校でね……」

「今日はお兄ちゃん誕生日だね〜 いっぱいお祝いしてあげるからね〜!」

「聞いて!期末テスト今までで最高得点だったの!」

「お兄ちゃん……本当なら今頃大学卒業して、教師になってるはずだったのにね……」

「人間ってさ、酷いよね。 生きてさえいれば大丈夫とでも思ってるのかな」

「今日は私の誕生日だ〜! プレゼントいっぱい貰っちゃった〜!」

「今日家庭科で調理実習だったんだ。 お兄ちゃんの料理、また食べたいなぁ……」

「ごめん、私病気になっちゃった…… んまぁ、でも大丈夫!きっと死なない!」

「私、将来教師になりたい。 お兄ちゃんと一緒!」

「桜……今年こそお花見行けるといいね」

どんどんどんどんアスカの言葉が頭の中に浮かんでくる

きっと、毎日のように話しかけてくれたんだろう。 ごめんな、答えられなくて

ずっと我慢させてたよな、寂しくさせてごめん

苦しかったよな、悲しかったよなごめん、ごめんな

どれだけ考えても謝罪の言葉しか思い浮かばない

涙が頬をつたる

ずっと寝ていたせいか、すぐに体が疲れて息が切れてぜぇぜぇだ

古寺 優雅

(お願い……生きててくれ、間に合ってくれ……!)

部屋の前に着いた

短時間だったのに汗がだくだくで服と背中がくっついている

俺は背中から服を剥がして「コンコンコン」とノックをした

古寺 優雅

……あ、あの……兄の古寺優雅…………です……

中からの反応はない

古寺 優雅

……あの…!

医師

あ、優雅さん?!

するとちょうど後ろから医師の人に声をかけられた

医師

お、起きたんですか?!

古寺 優雅

そ、それよりアスカは……!!

医師

あー……

医師

心臓マッサージでなんとか一命は取り留めました

医師

でも、すごく危険な状態

医師

すぐに心臓が止まってしまう可能性が高いです

古寺 優雅

……

医師

意識が無くなる前にずっと「お兄ちゃん、お兄ちゃん」て言ってましたよ

医師

ずっと起きた優雅さんに会いたかったんでしょうね

古寺 優雅

そう……ですか…………

すると、ガラガラガラとアスカがいる部屋から人がでてきた

看護師

あ、あの!アスカさん目覚めました!

医師

ほ、本当かい?!
凄いな……

古寺 優雅

……!

医師

優雅さん、いいですよ部屋に入って

古寺 優雅

……失礼します…………

古寺 優雅

アス…カ……?

病室に入ると「ピ…………ピ……」と心電図が今にも音がなくなりそうに弱々しくなっていた

俺の声できずいたのかアスカはゆっくりとこちらを向いた

古寺 アスカ

……お兄……ちゃん?

古寺 優雅

アスカ……!

古寺 優雅

アスカ、俺だよ……優雅だよ……
お前の、兄の……目、覚めたよ

古寺 アスカ

……

するとアスカはニコッと笑って呟いた

古寺 アスカ

……良かった…

古寺 アスカ

おはよ、お兄ちゃん

古寺 優雅

……うん、おはよう

古寺 優雅

ごめん、ずっと眠ってて、こんなに大変なことが起きてるなんて知らずに

古寺 優雅

苦しかったよな、寂しかったよな……
ほんとにごめん……ごめんなさい……ッ

なんともなんとも誤っているうちに涙が出てきた

古寺 アスカ

……泣かないでよ…………まっ……たく…………

古寺 優雅

ごめん、でもお願い……死ぬな、アスカ……死なないでくれ

俺はがっちりとアスカの手を掴んだ

古寺 アスカ

死にたくないよ、でも……生きれるか……わかんない…………

古寺 優雅

…………

古寺 優雅

アスカ、お花見に行こう。
もう桜は散り始めてるけど

古寺 アスカ

……お兄ちゃん

古寺 アスカ

泣かないで、笑って

古寺 アスカ

私はお兄ちゃんの笑った顔が好きだよ

古寺 優雅

…………

古寺 アスカ

ニコッ

心電図の音がさっきよりもテンポが遅くなっている

古寺 優雅

アスカ……

俺はゴシゴシと涙をふいてニコッと笑う

上手く笑えているかは分からない。 でもこれが今の俺に出来る最大限の笑顔だった

古寺 アスカ

……

アスカは何も言わずにまた笑った。 さっきよりも満面の笑顔で

その瞬間「ピー」と心電図の音が鳴り響く

古寺 優雅

あ、アスカ……?!

医師

ちょっと、失礼します

何人もの医師が入ってきてアスカに心臓マッサージしている

俺はまだ暖かいアスカの手をつなぎながらそれを見ていることしか出来なかった

五分ほどたって医師に告げられた

医師

優雅さん……

医師

4月5日
2時35分42秒
古寺アスカさん、ご臨終です……

古寺 優雅

んな……

古寺 優雅

嘘、だ、嘘だ嘘だ!
だって……だってまだ……花見行ってないし、それに……他にも……

古寺 優雅

もう、何も出来ないんですか?!
助からない……のか……?

医師

残念ながら…………

古寺 優雅

ッ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

アスカの命は散っていった

まるで桜の花びらが散っていくように

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