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6人兄弟

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6人兄弟

20 - 責務の時間

♥

1,934

2021年10月30日

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思ってもないのに

 

表情に出ること

 

それは君自身が
気づいてないだけで

 

君の奥の奥に気持ちが
燻っているんだよ

 

まあ分からなくてもいいよ

 

自分自身すら
分からないのに

 

他人が分かるわけない
でしょ?

寒さが体を刺してきて

切れそうな息を

どうにか繋げて

痛くなってきた足も

無理矢理動かす

𝑁.

...はぁっ!...はぁっ!

全力疾走なんていつぶりだろうか

次第に

喉から血の味がしてくる

寝癖も直りきってないまま

とにかく走る

受付の人に会釈をして

迷わずに奥の方へと歩く

ドアに手をかけて

𝑁.

...

ふと、手が止まった

怖い

どうしよう

もしも

彼が俺のことを軽蔑したら?

俺が彼を傷つけてしまっていたら?

𝑁.

...ダメ

6年前にしたことと同じことを

ドアの前で繰り返す

𝑁.

...逃げない、...逃げない

持て余した左手を

首にあてて

自分の脈をしっかりと感じる

逃げない

もし彼が俺を軽蔑しても

憎んでも

俺はそれに向き合うんだ

義務じゃない

俺自らが向き合うんだ

大きく息を吸って

ドアをスライドする

部屋に入った瞬間

彼を明るすぎる朝日が照らして

その姿が

一瞬

ほんの一瞬

あの頃の母さんに重なった

𝑁.

...さと、み、くん...

独り言のように呟いた

俺の小声に気がついて

彼は顔上げて

𝑆.

...なーくん

たった一度だけ

俺の名前を呼んで

にっこりと笑った

𝑁.

...ごめ、...ん...

景色全てが霞んで

そんなつもりなかったのに

いつの間にか

しずくが頬を伝った

𝑁.

...ごめん...ごめん...っ

なんで自分が泣いてるのか

そんなこともよく分からず

あんなにも堪えてた昨日が 嘘のようで

涙は後から後から流れてくる

ちゃんと、

ちゃんと話さなきゃ

引っ掻きそうな程の力で

目を隠す手の平を

強く握りしめる

話さないと、

しっかり

自分の気持ちを言わなかったら 相手は分からないから

どうにも口が嗚咽で塞がれて

話さなければと思えば思うほど

話せなくなる

𝑆.

...大丈夫、...

彼の手に促されるがまま

彼がいるベッドの傍に寄る

こちらに体を向けたと思ったら

急に彼の胸に抱き寄せられる

𝑆.

...ん、大丈夫大丈夫...

不器用な彼なりに

俺をどうにか落ち着かせようと

頭を撫でてくれる

𝑆.

...無事でよかった...

不意に彼が呟いた言葉

部屋の隅で眠っている弟が前 言っていたことを思い出す

″ なんで俺たちが大切な兄ちゃんは 大切にしないの? ″

𝑁.

...さと、み...っく、ん

短い呼吸に挟まれた言葉

彼の胸の中で

綺麗に響く

𝑆.

...ゆっくり、

𝑆.

ね...?

労わるように

少し心配そうな声で

俺の髪を撫でる

𝑁.

...っ、あの、とき

𝑁.

助け、られなくて

𝑁.

っごめんな、さい...

𝑁.

...気づいてた、のに

𝑁.

うまく、助け、られなくて

𝑁.

ごめん、なさい

𝑁.

守れ、なくて

𝑁.

ごめんなさ、い...

彼は何も言わずに

何度も頷いてくれる

𝑁.

...俺、のせいで

𝑁.

怪我をさせて...

𝑁.

っごめんなさい

𝑆.

...それで、

𝑆.

全部...?

𝑆.

...1番謝ってほしいこと、

𝑆.

まだ謝ってもらってない

𝑁.

っ...?

もっと、

1番

俺が謝らなきゃいけないこと?

𝑆.

...わかんない、?

𝑁.

...

𝑆.

...それは、ね?

𝑆.

兄ちゃんが一瞬でも
死に魅力を感じたこと

𝑁.

ぇ...

一瞬だった

死を目の前にして

抗うのを諦めてしまった

ほんの少しだけ

死が魅力的に見えて

楽になりたいと思ってしまったんだ

𝑆.

...俺が手術をしてる時、
兄ちゃんが
心配してくれたみたいに

𝑆.

俺だって兄ちゃんたちを
失いたくない

怒っている訳ではないことを

俺の頬を撫でながら

表してくれる

𝑆.

兄ちゃんに辛いこととか、
死にたいくらいの感情を

𝑆.

ひとりで
持っててほしくない

𝑆.

兄ちゃんが俺たちを
守ろうとするように

𝑆.

俺だって兄ちゃんたちを
守りたい

𝑆.

だから、俺は
兄ちゃんを庇ったし

𝑆.

そのことを少しも
後悔してない

𝑆.

だって、全部俺が勝手に
したことだもん

彼は少し笑いながら

暖かく話す

𝑆.

俺がしたことに勝手に
謝らないでよ

顔を上げれば

あの時と同じように

朝日が後光のように見えて

彼は

...いや

彼も

この6年で

驚く程成長したことを実感する

𝑁.

...うん...っ!

最後の気持ちを

振り払うように

そっと目を閉じれば

目の中に溜まっていた

一筋分の涙が

ゆっくりと落ちていく

彼はそれを

手の甲で拭ってから

俺のことを強く抱きしめた

𝑆.

ほんっっっとに...

𝑆.

無事でよかったぁ...!

彼は

少しだけ

小刻みに震えていて

あぁ

こんなに心配をかけたのか

こんなに大切にしてくれているんだ

それが嬉しくて

彼を

優しく抱きしめ返す

部屋の隅で

少し苦しそうに息をする 彼の方へと歩く

𝑁.

...

寝息をたてて眠る彼の目元は ほんのりと赤くなっていた

𝑆.

...

𝑆.

...ころんが
迷惑かけてごめんな

𝑁.

...ううん

𝑁.

むしろ、俺の方こそ
ごめんね

彼もまた

自分を抑えていた

だから

利き手ではない手を使ったんだ

クッションを抱えている彼の傍に

静かに腰を下ろす

𝑆.

...ぁ

𝑁.

...?

𝑆.

...莉犬兄ちゃんも
なんかやらかしてた...?

𝑁.

...?

𝑁.

いや...

なかった、

と思う

𝑆.

...そ

𝑆.

...ね、兄ちゃん

𝑁.

...ん?

𝑆.

...もしもさ

𝑆.

俺が死んだらどうしてた?

彼ならきっと聞いてくるだろうと 思っていた

𝑁.

...ん〜

𝑁.

...

𝑁.

...さとみくんは
どうしてほしい?

後追い自殺だとか

そんなことは俺から言わせれば

ただ責任から逃げているように しか見えない、

愚行だと思う

𝑆.

...

𝑆.

どうなんだろ...

𝑁.

...もちろんね?

𝑁.

後追い自殺なんかしないし

𝑁.

さとみくんのことを
忘れたりなんかもしない

𝑁.

...当たり前だけどね

𝑆.

...

𝑆.

...じゃあ、

𝑆.

もうひとつ質問

𝑁.

なんなりと

𝑆.

俺がドッペルゲンガーと
入れ替わるとしたら、
どうする?

𝑁.

...

𝑆.

俺よりも正常で

𝑆.

俺よりも優しくて

𝑆.

俺よりも
人の痛みが分かって

𝑆.

俺よりも
周りを大切に出来る

𝑆.

そんなドッペルゲンガーと
入れ替わるとしたら?

𝑁.

...

断言しよう

𝑁.

地獄の果てまで
さとみくんのこと
探し回って

𝑁.

さとみくんが嫌がっても
引きずってでも連れ帰る

𝑆.

...くっw

𝑆.

俺、引きずられんの?w

𝑁.

筋肉だらけだから
大変そうだよ

𝑆.

そっかあww

𝑁.

...言っとくけどね

𝑆.

...

𝑁.

俺は弟だから
さとみくんを守りたいと
思ったんじゃない

𝑁.

さとみくんが

𝑁.

後悔と努力を
繰り返す人だから
守ろうと思ったんだよ

𝑆.

...そっ、かあ...!

𝑁.

大丈夫

𝑁.

俺が幸せに導いたげる

𝑆.

そりゃどーもw

泣けない彼は

ほんの少し

泣きそうな顔をして

顔を伏せた

𝑅.

んん...

隣にいた彼が

小さな声を出して

薄く目を開ける

𝑁.

...あ、ごめん
起こしちゃった...?

𝑅.

...

𝑅.

兄ちゃ...?

𝑁.

ん?

𝑅.

...痛い...かな

𝑅.

...ごめん

驚く程冷たい手で

右頬に触れてくる

𝑁.

...りいぬくん...?

𝑅.

...ごめんなさい

𝑅.

逃げてばっかりで
ごめんなさい

𝑅.

分からなくて
ごめんなさい

𝑅.

泣いてばっかりで
ごめんなさい

𝑁.

...どしたの、なんか
嫌なこと思い出した...?

𝑆.

...

𝑅.

...ごめん

𝑅.

気がつけなくて
ごめんなさい

𝑁.

...ね、ほんとにどしたの?

𝑁.

なんかあった...?

俯いて瞳を潤ませ始めた彼に

膝をついて覗き込み、目を合わせる

𝑅.

...ごめん...

ぼろぼろ泣き出した彼を

慌てて抱きしめる

𝑁.

どした、なんか嫌な夢みた?

𝑅.

...フルフル

声を出さずに

肩だけを震わせながら

首を横に振る彼

𝑅.

...おれぇっ...

𝑅.

...ちゃんと正しいこと
できてるのかなぁっ...

𝑅.

...おれのせいかなぁっ...!

𝑁.

...ん、

𝑁.

大丈夫大丈夫...

𝑁.

りいぬくんも
頑張ってるよ...

背中を一定の間隔で

軽く叩く

𝑆.

...

数秒も経てば

胸の中から彼の寝息が聞こえてくる

𝑁.

...ね、昨日何時に
莉犬くんが寝てたとか
分かる...?

𝑆.

ん〜...

𝑆.

多分5時とかかな

𝑆.

...朝の

𝑁.

...ん〜

𝑁.

そっかぁ...

うまく寝れなかったのかな

ちゃんと寝れないと

泣きやすくなっちゃうのは

今も変わってないんだね

𝑆.

...昨日、兄ちゃんは
ちゃんと寝れた?

𝑁.

...うん、ジェルくんのお陰で

昨日は

泣いたあと

泣き疲れて彼に縋ったまま 眠ってしまった

朝起きたら

ベッドにいたので

恐らく彼が運んでくれたのだろう

″ 無理しすぎないでね ″

なーんて

置き手紙を彼が寝ていたであろう、 俺の隣に残して

彼は朝にはもういなかった

𝑆.

あぁ、なら良かった

彼は傍で寝ている 弟の頭を撫でながら

寂しそうに笑った

𝑁.

...そーいえば、

𝑁.

さとみくん、
お腹の縫ったとこ
痛くない?

𝑆.

ん〜、

𝑆.

なんかちょっと
キリキリする

𝑆.

引っ張られてる感じ

𝑆.

痛くはないかな

𝑁.

そっかぁ、

𝑁.

跡が残らないと
いいんだけどなぁ

自分の左腕についてしまった

あの時に爪を食い込ませていたせいで

一生消えなくなってしまった 変色した皮膚の部分に

無意識に目を向ける

𝑆.

ま、ゆーて腹だし

𝑆.

見えないからセーフっしょ

𝑁.

そうだねぇ...w

いつも通りに

少しいたずらっ子のような 顔をして笑う弟を見て

なんとはなしに安心する

𝑆.

ね、兄ちゃん

𝑁.

ん、どしたの?

𝑆.

ころんになんて言って
やればいいのかなぁ...

𝑁.

ん〜w

𝑁.

そのまま、

𝑁.

さとみくんのそのままの
気持ちを伝えれば
いいんじゃない?

昨日、年下の弟が教えてくれたこと

綺麗事なんかではなく

その人の1番素直な気持ちが

なによりも人を救えること

𝑆.

そうかなぁ...

𝑁.

うん、
さとみくんならできるよ

𝑆.

...そっか

𝑆.

兄ちゃんが言うなら
そうかも

俺の胸で眠る彼も

ベッドに突っ伏して寝ている弟を

愛おしそうに撫でる彼も

そして俺もまた

兄として迷っている

経験が少ないなりに

大好きな弟たちを

どうにかいい方向に導こうと

自問自答を繰り返す

俺だって完璧じゃなくて

泣くし

崩れるし

正しさなんて分からないし

それでも、

人生の先輩として

弟たちの親代わりとして

導かねばならない

だからたまには

兄同士の

自分の気持ちも分からないような

少しぐちゃぐちゃな時間があっても いいでしょ?

𝑡𝑜 𝑏𝑒 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑖𝑛𝑢𝑒𝑑...

この作品はいかがでしたか?

1,934

コメント

48

ユーザー

ブクマ失礼します❕❕

ユーザー

ブクマ&マイリスト失礼します!!🙇🏻‍♀️

ユーザー

これは涙無しでは読めない‪( ´•̥  ̫ •̥` )‬ 私の心にどこか優しいような今すぐでも壊れてしまいそうなそんな言葉が刺さりました 続きを楽しみにしています頑張ってください 連載ブクマ失礼しますm(*_ _)m

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