私
私
…ふぅ…
何時も通りの風景に癒されて
少し肩の力を抜いた
何となくこのカフェに来て何となくここに座って何となくコーヒーを飲む
それが私の日課だ
今日もコーヒーを飲んでいたら
あの
相席、いいですか
知らない人に 声を掛けられた
私
あっちの席
空いてますけど…
空いてますけど…
私
…っていうか店内
ガラ空きですけど。
ガラ空きですけど。
ここがいいんです
ここじゃダメですか
私
ダメです
即答ですか…笑
お願いしますよ
私
お断りします
お願いします
…ね?
男性がにっこりと笑う
私はこの笑顔に弱いようで
私
私
…分かりましたよ
簡単にOKをしてしまった
なんだか不満そうですね
私
当たり前でしょう
私
私は相席なんて
したくないのに…
したくないのに…
あっ、なら
お話しません?
私
…は?
イライラを治すには楽しい話をするのが一番かなと思いまして。
私
私はお話なんてしません
ちょっとだけ話すくらいいいじゃないですかぁ…
私
ダメです
時間を決めるのはどうでしょう?
私
時間?
私
時間を決めて話す
なんてもっと嫌です
なんてもっと嫌です
私
婚活パーティーじゃあるまいし…
コーヒーを時計にするのは如何でしょうか
私
…え?
コーヒー1杯を飲み終わるまでを時間にすれば
その日の気分によって時間を変えられますから。
…どうです?
私
毎日相席をする前提ってとこが気になりますけど…
いいじゃないですか
…ね?
相席なんて絶対嫌だ
…と思っていたのに。
私
…まぁ…いいでしょう
やっぱり私は その笑顔に弱いみたいだ
私
私
…初めてお話した日から
私
半年程経ちましたね
そうですねぇ…笑
……って、あれ?
今日はアイスコーヒーなんですね
何時もはホットなのに。
私
…ああ
私
今日はアイスの気分なんです
本当は
アイスの方がホットよりも 量が多いし
冷めても美味しく 飲めるから沢山話せる
だからアイスを選んだ
…まぁ、そんな事 口が裂けても言わないけど。
珍しいですね
アイスコーヒー頼むなんて初めてじゃないですか?
私
流石に盛りましたよね、それ。
私
この前も飲みましたよ
…盛ったかもです
私
盛らないでください
いいじゃないですか
…ケチ
私
ケチじゃないです〜っ
今日も会話が弾む
やっぱり、貴方と 話すのは飽きない
私
あ、そういえば
私
お訪ねしたい事があったんです
なんでしょう?
私
何故私に構うのですか?
私
口下手ですし…私と居ても大して楽しくないのでは?
楽しいですよ
私
…絶対嘘じゃないですか
私
それに
私
私達、お互いの名前
すら知りませんよね
すら知りませんよね
私
年齢も、住んでいる場所も。
では貴女は
見ず知らずの人に個人情報をばら撒けますか?
私
出来る訳ないじゃない
私
でも貴方になら。
それじゃあ…名前、
教えて頂けますか?
教えて頂けますか?
私
勿論。
私
夜栄です
私
──犀川 夜栄
…性格とは正反対のお淑やかなお名前ですね
私
バカにしないで頂けますか
はいはい、すみません
素敵なお名前ですね
私
貴方は?
草野 朔羅
っていいます
私
ふーん…さくら ね…
私
なんだ、貴方だって見掛けによらず可愛い名前じゃない
…バカにしないで頂けますか
私
はいはい、すみません
私
素敵なお名前ですね
…思ってないですよね、それ。
私
思ってますよ、
素敵な名前だって
素敵な名前だって
絶対嘘だ
だってそれさっきの俺のセリフ…。
私
あ、バレました?
そりゃバレますよ
私
ふふ笑
私
私
…そういえば、今思い出したんですけど
私
男の子でさくら、って名前の幼馴染がいたんですよ笑
私
あの子…今何してるかなぁ…
さぁ…
今頃何処かでコーヒーでも飲んでるんじゃないですかね笑
私
そうかもしれませんね笑
つまらない思い出話でも 貴方となら花が咲く
この瞬間が1番好きだ と改めて思った
2人のカップの中にはたっぷりとコーヒーが入っている
素敵な物語は
まだ 始まったばかり──