夏。 夏。 もう逢えないのかな。 覚えてないの? 海であったあの女の子だよ。 夏の音が聞こえたあの海の。
夏
誰だろうあの女の子は。
夏
うっ。
夏
思い出せないよ…
歩
おい夏。
歩
転校生来るらしいよ。
夏
興味無い。
夏
(あの女の子に会いたい。)
歩
探してるんだろ。
歩
小さい頃にあった女の子。
夏
別に。
歩
俺。知ってるから。
歩
夏がその子のこと忘れられないってこと。
歩
幼馴染みには嘘つけないよ。
歩
俺もその場にいれば良かった。
歩
見たかった。夏の一目惚れした子。
夏
お前もついてないよな。
夏
海の家にいる間に俺はその子に出会ってたんだから。
夏
歩はその子の良さなんて分からないだろうけど。
音
神奈川県から転校してきました。
音
川瀬音です。
音
東京は何年ぶりか分からないけど
音
小さい頃住んでいました。
音
これからよろしくお願いします。
歩
ねー。夏。あの子美人。
夏
ああ。
夏
(何回か目が合ったような。)
夏
(気のせいか。)
凛
……
歩
夏。
歩
小さい頃東京に住んでたって言ってたよね。
夏
あぁ。
夏
でも、人違いの可能性もあるし。
歩
とりあえず、音って子のこと探ってみたら。
夏
うん。
夏
あれ。音…
音
あの子で間違いないのかな。
夏
ねぇ。
音
え?
夏
あ、ごめん突然。
夏
同じクラスの河田夏です。
音
あ〜。
音
河田さん
夏
夏でいいよ。
夏
みんな夏って呼ぶから。
音
じゃあ、夏。
夏
小さい頃東京にいたって言ってたけど
夏
いつくらいまで?
音
小学校入学前くらいかな?
音
私、ここの近くの海が大好きで。
音
よく行ってたんだ。
夏
俺も。
夏
親が、海の家に期間限定で働いてたから、
夏
よく遊びにいってた。
音
じゃあ、会ってるかもね。
音
私、会いたい人がいるの。
夏
(え?)
音
引っ越す前に海に行った時にあった人なんだけどね。
音
小さいから顔とか覚えてなくて。
音
でも、優しくて。暖かい人だった。
音
会えたらいいなって思ってて。
夏
会えるよ!
音
え?
夏
いや、何でもない。
音
じゃあ、私そっちだから。
凛
なにあの子。
夏
何?凛
凛
あの子誰なの?
凛
転校初日から夏に色目使って
凛
ほんとに嫌いなんだけど。
夏
お前に関係ないだろ?
夏
それに、俺から話しかけたんだし。
凛
は?
凛
なんであんな子に話しかけんのよ。
凛
凛は、夏を思って言ってるの。
凛
転校してきてよく分からない女に捕まって欲しくないの!
夏
悪いかどうかなんてまだ分からないだろ。
夏
それに、俺はいつから凛のもの?
凛
っ…
凛
夏は、ほんとに気づかないんだね。
凛
凛がどれだけ夏のこと思ってたと思ってんの?
凛
何も知らないくせにそんな気軽に言葉ぶつけないでよ!
凛
もう帰って。
夏
は?
夏
呼んだくせになんだよ。
凛
いいから!
凛
帰って!!
音
夏君か…
音
覚えてないのかな。
音
思い出してよ。早く。
音
私が
音
辛い思いをする前に。
歩
音ちゃん?
音
え?
歩
ごめん!
歩
クラスのグルチャから引っ張ってきちゃった。
歩
迷惑だった?
音
いや!
音
別に、迷惑じゃないですよ。
音
ただ、いきなり過ぎて
音
びっくりしたというか。笑
歩
ごめんね〜笑
歩
聞きたいことがあるんだけどさ
歩
音ちゃんって
歩
海にいた子でしょ。
音
え?
音
なんで、
歩
俺。
歩
あの時の子だよ。
音
音
嘘ですよね?
歩
え?
音
私、覚えてるんです。
音
どんな子だったか。
音
歩さんじゃないと思います。
歩
バレちゃったか。
歩
俺、今日の自己紹介の時
歩
一目惚れしちゃったんだよね。
歩
付き合ってって言ったら
歩
困る?
音
困り、
音
ますね。
音
私、海の子が忘れられないんです。
音
あの、暖かい優しさが。
音
申し訳ないけど
音
歩さんとは付き合えないです。
音
でも、協力して欲しいんです。
音
私の初恋を探すの。
歩
いやだ。
歩
って言いたいところだけど。
歩
好きな子のお願いは聞くしかないもんね。
歩
だから、協力してあげるよ。
音
ほんとですか?
音
じゃあ、お願いします。
夏
(なんかあの2人親しくなってんなー)
歩
このクラスにいるかな?
音
えー。わかんないです。
音
でも!きっといるはずなんです。
歩
分かってるって。でも焦らないで。
凛
ねー。夏
凛
音ちゃん。
凛
歩にメロメロだけど。
凛
やっぱ。男たらしだったんだね。
夏
お前。
夏
その言い方やめろよ。
凛
なんでそんなにあんな奴に夢中になるの!!
凛
夏が振り向かないならいいや。
凛
音ちゃんがどうなるか知らないから。
夏
は?
夏
おい!凛!
音
…
音
(凛ちゃんと楽しそう……)
音
え、
真彩
どしたの?音
音
教科書が破れてて…
真彩
誰?
真彩
こんなことしたの!
凛
ほんと。ひどーい笑
夏
凛だろ。
夏
音の教科書破ったの。
凛
夏酷っ。そんなに凛のこと悪者にしたいの?
夏
お前しかいないだろ、音の事気に入らないの。
凛
そんなの分からないよ?
凛
真彩ちゃんだって、クラスの学級委員長だから
凛
無理して付き合ってるだけかもしれないし。
真彩
そんな事ない!
真彩
音と仲良くしたいだけ!
凛
ほんとに?凛にはそう見えなーい!
凛
だって、今までずっとぼっちだったじゃん。
真彩
!
夏
おい!
音
もう凛ちゃんいい加減にして!
音
私の教科書隠したのも誰かわからないし、
音
凛ちゃんじゃないのかもしれないけど。
音
私の大事な友達の悪口言うのはやめて
音
もう傷つけるのは私だけにして。
音
お願い…
凛
は?何それ。いい子ぶってさ。
凛
音の教科書破ったの凛だよ。
夏
やっぱりお前!
夏
音のなにが気に食わないんだよ!
凛
うるさい!
凛
全部気に食わないの!
凛
凛の夏をとるし。
凛
友達も全部音の話ばっか。
凛
もうみんな凛と友達やめれば?
音
凛ちゃんに私はなりたいな。
凛
は?何言ってんの。
凛
今の凛最低じゃん。
音
凛ちゃん本当はいいこでしょ。
音
だから、素直に教科書やぶったって言ってくれたんじゃん。
音
お金持ちでみんなに愛されてる凛ちゃんになりたいよ。
夏
音……
音
私ね、好きな子がいるの。
音
小さい頃浜辺であった男の子。
音
私、それが誰だかもう気づいてるんだよね。
音
相手はなんにも気づいてないけどさ。
音
相手に自分の好意を知ってもらってるって幸せなんだよ。
夏
(あの時の女の子は……音……)
凛
ごめんなさい…
凛
ほんとに…
こうして、凛とのトラブルは解決した…
夏
音〜!!
音
夏!
夏
音が言ってた浜辺の男の子って
音
やっと気づいた?
音
ずっと待ってたんだよ。
夏
俺!
夏
ずっと前から…
音
駄目。
音
どうせなら海行こうよ。
音
海で聞きたい。
夏
分かった。
俺はきっというだろう。 夏の音が聞こえる あの海で。 「好きです」 と