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母さん、ボクにも彼女が出来ました

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母さん、ボクにも彼女が出来ました

2 - #2 母さん、ボクに彼女をください

♥

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2020年05月27日

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彼女が出来たら、おまけで母親(故人)が守護霊として付いて来た。いや、憑いて来たと言った方が適切か。

 いや、くだらないこと言ってる場合じゃないな。

そんなことより、だ。

彼女に母さん(守護霊)が憑いている。

何で? とか見えてる理由とかどうでもいい。

そんなことより大事なことがある。

それは、

 田心 春樹(たごころ はるき)

エロいことできねーじゃん!

俺は天に向かって叫んでいた。

だってそうだろ? ちゅーする時もえっちする時も母さんが側にいるわけだ。

何、その羞恥プレイ?

そんな状態で事に及べるやつがいたら、そいつは神だ。変態の神だ。神性の変態だ。

無論俺はそうではない。

 田心 春樹(たごころ はるき)

どうすりゃいいんだーっ!

本気で頭を抱える俺。

折角彼女が出来たのに、何かすんごいオプション付いてきたんですけど!?

いや、まあもちろん、死んだ母さんにもう一度会えたのは嬉しい。だが、それはそれだ。

というか、急すぎる展開に着いていけていないだけかも知れないが。

そうやって悩んでいると、

母屋 麗子(おもや れいこ)

……待った?

彼女の声が聞こえた。

彼女の声が聞こえた。

何故二回言ったのかというと、大変素晴らしい響きだったからだ。

特に「彼女」という部分が。

 田心 春樹(たごころ はるき)

いや、全然。今来たとこ

俺はキリッとした顔で応えた。 やべー、彼女出来たらやってみたいやり取りNo.1を初日にしてやってしまった。

感☆激!

田心 月子(たごころ つきこ)

春ちゃん、キモいよ

 田心 春樹(たごころ はるき)

キモッ!?

宙に浮く半透明の人物に失礼なことを言われた。我が母、享年30歳である。

田心 月子(たごころ つきこ)

29よ

心を読むな。

田心 月子(たごころ つきこ)

永遠の29歳です♪

 田心 春樹(たごころ はるき)

そりゃユーレイだからな

母屋 麗子(おもや れいこ)

幽霊?

 田心 春樹(たごころ はるき)

いや、何でもない!

ヤバい、母との会話もほどほどにしないと、初カノに変なやつだと思われてしまう。

 田心 春樹(たごころ はるき)

そ、それじゃ、帰ろうか?

母屋 麗子(おもや れいこ)

そうね

並んで歩き出す俺達。俺の隣に母屋がいて、母屋の隣に俺がいる。

 ヤベー、ドキドキして何も浮かばねえ。

 で、でも何か喋んねえと、間が持たねえぞ。何か、何か……、

 田心 春樹(たごころ はるき)

あの、さ……

母屋 麗子(おもや れいこ)

……何?

 田心 春樹(たごころ はるき)

俺って、初カレ?

母屋 麗子(おもや れいこ)

……

 田心 春樹(たごころ はるき)

……

 何聞いてんだ、俺ぇぇぇえええっ!?

田心 月子(たごころ つきこ)

ふむふむ、春ちゃんは初めて出来た彼女の処女性に興味津々、と

 そしてあんたは何メモってんだ!?

 田心 春樹(たごころ はるき)

死にたい……

 五年振りに会った母親にとんでもない場面を見られた。腹を切ろう……。

母屋 麗子(おもや れいこ)

? そうだけど、それが何?

 田心 春樹(たごころ はるき)

え?

田心 月子(たごころ つきこ)

ふむふむ、処女を確認して嬉しそう、と

だから何メモってんだ!?

 ホッとしたのは事実だが、何かダサいので素直に頷く気にはなれなかった。

田心 月子(たごころ つきこ)

恥ずかしがらなくても大丈夫よ。母さん、性には大らかな方だから♪

 田心 春樹(たごころ はるき)

知りたくなかったわ、そんな事実!

 ねえ、あんた五年振りに会った息子に何てこと言ってんの?

母屋 麗子(おもや れいこ)

? あなたが知りたいと言ったのだけれど

 田心 春樹(たごころ はるき)

いやっ! そうじゃなくて!

 しまった。傍から見たら、自分で聞いといて逆ギレしてるイタイやつだ。

田心 月子(たごころ つきこ)

春ちゃん、彼女を怒鳴りつけるのはどうかと思うな

 田心 春樹(たごころ はるき)

黙れビッチ!

母屋 麗子(おもや れいこ)

……わたし、あなたに何かした?

 田心 春樹(たごころ はるき)

ノオオオォォォッ――!

何故か英語で叫んでいた。

 ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!

 初日から大ピンチなんですけど!

田心 月子(たごころ つきこ)

春ちゃん、彼女は大事にしなさい

主にあんたのせいだよ!

 今度はさすがに声には出さなかった。

 これ以上状況を悪化させるのはごめんだ。

 だけど、何か話さなければ誤解を解くことも出来ない。

 田心 春樹(たごころ はるき)

俺、ビッチでも大丈夫だから!

母屋 麗子(おもや れいこ)

……そう

しまったぁぁぁああああっ!!!

 これじゃただの欲求不満だ!

 見よ、あのドン引きした顔を!

 心の距離が百億光年くらい離れてる!

母屋 麗子(おもや れいこ)

春樹君、変な人ね……

 田心 春樹(たごころ はるき)

……へ?

 それだけ言うと、母屋はスタスタと歩き出した。その背中に、不思議と拒絶の色は見えなかった。

 ……って言うか、今「春樹君」って。

 田心 春樹(たごころ はるき)

……

 速足で追いつき、肩を並べる。

母屋 麗子(おもや れいこ)

……

 田心 春樹(たごころ はるき)

……

母屋は嫌な顔をしなかった。

 そのまま無言で歩く。何も話してやいないのに、何故か心地よかった。

 この時の母屋が、俺には一番かわいく見えたのだった。

 田心 春樹(たごころ はるき)

……

母屋 麗子(おもや れいこ)

……

 これが、彼氏彼女の空気というやつなのだろうか?

 いまいちわからない。

 だけど、一つだけ言えることがある。

 今ならイケる!

 俺の右手の甲が、母屋の左手の甲に触れた。

 勿論、故意にだ。

 母屋は、手を引込めたりはしなかった。

 触れている部分が、妙に熱い。

 喉を鳴らし、手を引っ繰り返す。

 後は、この手を握り込むだけ。

 ピクリと、指が動く。

 瞬間――、

田心 月子(たごころ つきこ)

ドキドキ、ドキドキ……❤

 それをガン見する幽体が一つ。

 田心 春樹(たごころ はるき)

うおわぁぁぁあああっ!?

 慌てて飛び退く俺。  忘れてた! 完っ全に存在忘れてた!

田心 月子(たごころ つきこ)

あらあら、母さんに遠慮せず、ラブラブしていいのよ?

 できるかっ!

 そんなこっぱずかしいことが出来るかっ!

 田心 春樹(たごころ はるき)

うう……

 憑かれているのは母屋なのに、俺に憑りついてるみたいだ。

 彼女がいるのに手も握れない日々が、これからも続くのだろうか?

 母さん、ボクに彼女(と二人だけの時間を)ください。

母さん、ボクにも彼女が出来ました

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