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死んだはずの日菜が相合傘をするため俺を待ち構えている。
青ざめた顔でびしょぬれになって 登校してきた俺を海里が
海里
と心配してくれたが今はそれに 答える余裕がなかった。
ジャージに着替えた俺は席に座って 授業が始まるまで消しゴムを削った
樹
体育の授業と家庭科の調理実習には イライラした。
どうしても使えないからだ。 それなのに時間はどんどん過ぎて いってしまう。
放課後になっても残りちょっとの 消しゴムが残っていた
海里が、
海里
と誘ってくれたが
樹
と断った
どんどん人が少なくなっていく中で 俺は消しゴムをこすり続けた。
外はどんどん暗くなっていく 先生が見回りに来たら追い出されるだろう。
ふと窓の外を見ると校門に誰かが 立っていた
まるで人を待っているかのように立つ女子の傘の色は真っ赤だった
樹
誰だったか察した俺は急いでこすった。 いらだちと焦りで頭がおかしく なりそうだった。
樹
やがて外は真っ暗になり、 ようやく消しゴムを使い切った。
おまじないのかかっていた消しゴムはカスとなり無くなった。
ビクビクとしながら窓の外を見ると もう真っ赤な傘をさしていた女子はいなかった。
樹
俺は安心して帰り支度を始めると, カバンを背負って教室を出る。
樹
校門まで来て登校中に傘を投げ捨ててきたことを思い出した。
樹
校舎の外に飛び出すと、 やや小降りとなった雨の中を俺は駆け出していく。
あの交差点まで行けば放り捨ててしまった傘がまだ落ちてるかもしれない。
樹
そして日菜が事故にあった交差点に たどり着いた俺は電信柱に誰かが 折りたたんでくれたビニール傘が 置かれているのを見つけた。
樹
ビニール傘を取りに行ったら傘の下になにか小さなものが落ちていた
樹
古い電灯の辺りがパチパチと 点滅している。
よく見えないのでしゃがみ込んで 覗き込み,俺の目は見開いたまま 凍りついた
落ちていたのはー俺が使い切ったのと同じカバーの消しゴムだった
でも俺の消しゴムなわけない。 おまじないのかかった消しゴムは使い切ったのだから それなのに、なんだかやけに気になった。 嫌な予感しかしなかった
思わず手を伸ばして消しゴムを 拾ってしまう。 たいして走ってもないのに心臓の バクバクが止まらない。
俺は誰かに操られるように 消しゴムのカバーをゆっくり引き抜いてー。 そこには俺と日菜の名前が書いてあった。
確かに俺は取り消したはずの おまじないのかかった消しゴム。 でもーこれは違う。 これは俺が書いたおまじないじゃない。
その字は見覚えのある日菜の文字で 書かれた日菜の消しゴムだった。 しゃがんだまま固まった俺の視界が真っ赤に染まった
再び強くなり始めていた雨が 俺の体に当たらない 誰かが俺の頭上にさしていた
俺の目の端に黄のスニーカーが映っていた。 伸びた足は俺と同じ歳ぐらいの女子もので,肌はびっくりするぐらいに 血の気がなくて青い
足を潰れてしまった頭から流れ出ているだろう赤い血がつぅーと伝った
傘の中なのにポタリポタリと真っ赤な滴が頬にも垂れ,顎へと流れていく
樹
でも目の前で俺を傘の中に入れて 相合傘をしている人が想像がつき、
日菜
本当なら嬉しい言葉のはずが 今の俺には気を失いそうなほど 絶望していた。