テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

一覧ページ

恋の終わりかた

第27話 - 第27話つきはのぼるしひはしずむ

2025年02月11日

#第4回テノコン

#恋愛シリーズ

#純愛

#恋愛

#創作

O乙(おづ)

去っていくハルナを見送りまたもやぼうっと海辺を眺めていると、カヤが僕の方に駆け寄ってきた

アキラ

……どうしたの？
まさかもうダウン？笑

カヤ

……。

アキラ

……？

こちらの冗談に動じることも無く軽く切らした息を整えながら真剣に僕を見つめるカヤに思わず僕も言葉に詰まる。

カヤ

いやだ。

アキラ

……え？

カヤ

やだよ、行かないで。

アキラ

……！

カヤ

ハルナちゃんのところ、行っちゃうの？

アキラ

見てたのか……。

カヤ

…うん。

神妙な面持ちのままカヤは続ける

カヤ

あたし、少しわかった気がするの。

アキラ

……？

カヤ

今夜、2人で話せないかな。

アキラ

……っ！

まさか、カヤからも声がかかるとは思っていなかった。それにこの距離だ。ハルナとの会話の内容まで聞こえたわけじゃないだろう。それなのに重なる偶然に鼓動が熱くなっていくのがわかった。

アキラ

…わかった。
僕も聞きたい。

カヤ

うん、ありがとう。

カヤ

それで、ハルナちゃんとはどんな話してたの？

アキラ

……カヤと同じだよ。

カヤ

えっ？！

アキラ

バイトが終わったあと、少し話がしたいって。

カヤ

……でなんて答えたの？

アキラ

少し考えさせてくれって。
でも、ハルナをいつまでも同じ場所に留めてしまうようなことをするべきじゃないって今思った。

アキラ

だから、行かないよ。

カヤ

そ、そっか……。
良かった……。

心の底から安堵するように胸を撫で下ろすカヤに僕も少し落ち着いた。

アキラ

……なんで、ハルナのとこに行かないでって思ったの？

カヤ

…なんとなくだよ。

カヤ

アキラくんが、アキラくんの心が離れていくような気がして。

カヤ

あたし、なんか怖かったんだ。

アキラ

ごめん…。

カヤ

ううん、いいの。

カヤ

あたしこそ、わがままばっかりでごめんね。

アキラ

気にしてないよ。

アキラ

それより……

カヤ

……？

アキラ

カケルは？

カヤ

あ゛っ！？

慌てて海を振り返るカヤを連れて僕は海辺にカケルを迎えに行った。

日もすっかり落ち、夕焼けが水面に顔を沈め始めた頃僕らは身支度を終え僕は受付に鍵を返却しに向かった。

アキラ

はい、これ。
今日はありがとう。
すごく助かったよ。

ハルナ

ううん、いいのこれくらい。

ハルナ

……で、返事は？

アキラ

…やっぱり今日は行けない。

ハルナ

……！

ハルナ

どうして……？

アキラ

ハルナをもうこれ以上僕で縛りたくないから。

ハルナ

…………。

アキラ

僕と話せば話すほど、僕を思えば思うほど。
ハルナの足は僕といたあの日から動けなくなる。

アキラ

ハルナにも前に進んで欲しい。それは、僕がハルナを好きだったからで、ハルナを今でも大切に思っているから。

アキラ

ずっと同じ場所に留まって縛られる必要なんてない。僕がハルナから離れてしまったんだ。ハルナは僕といるべきじゃない。

ハルナ

…ち、違うの！
アキラが離れたんじゃない！
私が離れたの！
だから……

アキラ

それでもだ。

ハルナ

……。

アキラ

それでも、僕らは離れた。
戻る道も、多分あったと思う。

アキラ

でも僕は戻らない道を選んだ。
追いかけ続けたってその先に僕はいない。

ハルナ

……っ。

アキラ

それでも追うならそれもハルナの道だから、止めることは出来ない。
でも僕はハルナに前を向いて進んで欲しい。

アキラ

自分勝手でごめん。

ハルナ

…………。

ハルナ

わかんないよ……。

ハルナ

わかりたくないよ！

アキラ

……。

ハルナ

……ごめん、わかったって言って背中を見送りたいのに。

ハルナ

私の心も思いも全部、アキラの言葉を受け入れたくないの……。

泣き顔を擦るハルナに僕からこれ以上かける言葉は見当たらない。それでも、僕は心の底から思う言葉をハルナにぶつけたのだから。酬いがなくても、僕が見なくても、ただ前へ進んで欲しいと思うエゴを放すことは出来なかった。

ハルナ

好きってなんだろうね……。

ハルナ

好きにならなきゃ良かった、なんて小説だけの話。好きになったからアキラと一緒にいたいのに……。

ハルナ

それなのに……好きがこんなにも苦しい……。

ハルナ

アキラのことがこんなにも愛おしい……。

ハルナ

私を……私を前に連れて行ってよ…………。

アキラ

……ごめん。

アキラ

好きを教えてくれて
好きでいてくれて
好きを大事にしてくれて

アキラ

本当にありがとう。

ハルナ

やめて！！！

まるで吐き出す言葉の先を遮るように、ハルナは涙の止まらない眼を必死でこちらを見つめる

ハルナ

やめてよ……！
もう何も言わないで！

アキラ

……。

泣き叫ぶハルナを他所に僕は唇をかみ締めながら最後の言葉を吐き出した。

さようなら。

恋の終わりかた

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

0件

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう！

O乙(おづ)

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

恋の終わりかた

第27話 - 第27話つきはのぼるしひはしずむ

作者の他の作品すべて見る

#第4回テノコンの新着小説
一覧

関連するタグ

恋の終わりかた

第27話 - 第27話 つきはのぼるし ひはしずむ

作者の他の作品すべて見る

#第4回テノコンの新着小説一覧

関連するタグ

第27話 - 第27話つきはのぼるしひはしずむ

#第4回テノコンの新着小説
一覧