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マサキ

—別れよう

それが彼の言葉だった

マサキとアサミは付き合って一年程のカップルだった

突然のマサキの発言にアサミは動揺と驚きを隠せなかった

アサミ

え…?

正直何を言っているのか分からなかった

今すぐにでも激しく問い詰めたい気持ちを抑え込んで

笑顔を貼り付けながら答える

アサミ

何?いきなり?別れるっどう言うこと?

マサキ

こ、言葉のまんまだよ…もう嫌なんだ

いや?

イヤ?

嫌?付き合うのが?

アサミ

なにそれ…

マサキ

お前、重すぎるんだよ…何かにつけて縛るし女子と話しだたけで怒る

マサキ

さすがにめんどくさい

アサミ

……

マサキ

っあ、いや、その…

少し言いすぎたのかと思ったのかマサキは軽くうつむいた

重いって何?マサキのことが大切だからやってきた事だ

アサミ

でも、私はマサキの事を想って—

マサキ

何がだよ!

アサミ

えっ…?

マサキ

マサキ

本当に俺のことが好きならそんなに縛るなよ!

マサキ

カナコちゃんだったら絶対に…あ

饒舌に動いていたマサキの口が止まる

アサミの顔から笑顔が消える

しかしアサミは別段驚きはしなかった

マサキの周りをうろつく女。

一緒にいるのを見ると吐き気がする

マサキ

いや、違うんだ、別に—

マサキは何か言い訳をしているがそんなものどうでもいい

頭に考えを思い浮かべる

縛り続けたのはあくまで マサキを悪い女から守るため

好きで縛ってた訳じゃない

実際カナコという女に騙されている

もっと厳しくしなければいけない

マサキと別れるつもりなんて根っからない

アサミ

マサキ

でも、こうした方が…

まだ何か話している

ふっとここである考えが浮かぶ

私達は不味いゼリーなのかもしれない

ゼリーというのは柔らかく程よく固いから美味しい

固すぎても柔らかすぎてもいけない繊細なスイーツだ

だが私達のゼリーは固すぎる

ゼラチン(愛)を注ぎ過ぎて固くて不味い

表面は綺麗だが、亀裂が入れば汚さがよく目に見える

ゼリーを作り直すことはできるか?

少し恐ろしくなって考えを振り切る

アサミ

…ねえ

マサキ

ビクッ

マサキ

な、なんだよ

そんなに怯えているのによく 別れようなんて言えたものだ

アサミ

私、別れたくないよ

マサキ

マサキ

お前変わったよ

マサキ

元に戻ってくれよ…

そんなに変わっただろうか?

思わず鏡を見るがそこにはいつもと変わらないアサミの姿があった

しかしどことなく狂気を感じる

アサミ

今が素だよ

マサキ

マサキ

え?

アサミ

これがワタシなの

アサミ

今までずっと隠してだけ

だんだんマサキの顔が恐怖でひきつっていく

アサミ

あんな女より私の方がマサキのこと好きだよ?

アサミ

別れたくないよ

マサキ

やめろよ…

一歩近づくとマサキも一歩後ずさる

それほどアサミのことが恐ろしいのだろう

アサミ

なんで?一時的な感情に流されないで

アサミ

どうせすぐに飽きちゃう

アサミ

ね?

アサミ

ね?

アサミ

ね?

アサミ

ね?

無言で涙を流すマサキに投げかける

マサキ

何だよ…

マサキ

嫌だ、嫌だ

マサキ

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!

マサキはそう叫びながら玄関に向かって走る

アサミはすかさずマサキのうでを握る

ギリギリと強く握られている

アサミ

逃がさないよ

マサキ

あ、ああ

マサキはアサミのことを化け物のような目で見る

マサキ

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!

マサキ

やめろ

マサキ

やめろ

同じことを何度も繰り返される言葉にさすがに怒りを覚える

アサミ

……

そしてアサミはポケットから鋭く光るモノを出した——

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