テラーノベル
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Sion𓃠
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あれからどれだけの時間が流れたのか、正確な記録は誰にも残されていない。 水族館という箱庭の中で発生した特異な「バグ」は、やがて施設全体を飲み込み、そして彼ら二人をもその深い底へと引きずり込んでいった。柳田柊斗の日常は、あの日、閉館後の水族館へ足を踏み入れた瞬間に終わりを告げていたのだ。
現実の世界で、柳田柊斗は「行方不明」として扱われた。警察による大規模な捜索が行われ、彼の足取りを追って水族館にも調査の手が入った。 しかし、そこに残されていたのはただの巨大な水族館であり、彼が迷い込んだ「裏側」の空間や隠し部屋、ましてや水没したエリアなど発見されることはなかった。 昼間の水族館はあまりにも平和で、彼が消えた痕跡すら見つけられなかったのである。
一方、キラの領域——あの閉鎖されたバグの世界では、水がすべてを飲み込んでいた。 サメ・エイの海コーナーを抜け、二人は行き場を失うまで歩き続けたが、どこへ行こうとも出口はなかった。キラの「手遅れだ」という言葉の通り、領域は崩壊を続け、最終的には大水槽の底部に潜んでいた巨大な古代生物の影すらも水に溶けて消え去った。
焦凍は最後まで恐れを抱かなかった。 腰まで浸かっていた水が胸まで、そして首示まで迫る中でも、彼はただキラの冷たい手を握り続けていた。自分のせいでバグが進行したのなら最後まで付き合う、という彼の不器用な誠実さは、死ぬかもしれない中でも揺らぐことはなかった。
キラもまた、そんな彼の手を振り払うことはなかった。永遠の孤独を生きるはずだった領域の主はバグとして迷い込んだ一人の少年の存在によって、その終焉にわずかな温もりや温度のない安らぎを得たのかもしれない。二人は言葉を交わすことなく、ただ静かに深海のような暗闇の中へと沈んでいった。
今もまだ、次の狭間にあるその水族館では青白いLEDの光とヒカリキンメダイの微かな瞬きだけが残されているという。 そこには誰もおらず、水流の音だけが永遠に響き続けている。 紅茶の香りと、ほんの少しの氷の残骸だけを抱いて。
コメント
1件
もうっ…このラスト、胸がぎゅってなったよ…!!😭💔 水に飲まれてく二人が最後まで手を離さなかったのが静かに熱くて、キラの冷たい手が「温度のない安らぎ」って表現されるのが切なくて綺麗すぎる…!!エピローグって形で一区切りなのかな?でもまだ続き読みたいって思わせる余韻が凄い…!!🍵✨