マフィアの彼女

俺を買ったのは

マフィアの少女だった。

客が一斉に静まり返る。

俺はこいつに買われるのか…

パクッ

ようやく舌が元通りになった。

一体何をしたらあんなに酷い出来になるのだろうか…

そう言うと、奥から3人ほどの使用人と思われる人たちが出てきた。

お見合い当日

桃音さんは、白いシャツに黒のスーツ姿で出てきた。

1時間後、桃音さんは不機嫌な表情で出てきた。

冗談抜きで、桃音さんは美しい

見た目は幼く、顔立ちも優しそうに見える。

そして、何より、１つ１つの動作が優雅で美しかった。

桃音さんの言ういつものところというのは…

それから半年後、俺たちはもうすでにため口で話せるようにまでなっていた。

でも、桃音さんにはまだできない。

俺の中では、あの人は、申し訳ないくらいに雲の上の人だから。

そして、俺の好きな人だから。

このままでいては、きっと俺は、桃音さんの足手まといになってしまう。

「出て行こう」

そう決心した。

俺は夕方からみんなにバレないように荷物をまとめた。

夜中のうちに、出ていけるように。

そのあと、夕食を食べて、みんなとの最後の会話を楽しんだ。

自室に置き手紙を置き、静かにドアを閉める。

最後に、桃音さんの部屋のドアに向かって

と呟いた。

玄関のドアを開けようとした時…

私は、急いで恵太の後を追いかけた。

1人取り残された椿は、桃音の幸福を、静かに願っていた。

そう思ったのもほんの一瞬で…

俺はすぐに捕まってしまった。

俺は、一瞬桃音さんが悲しい表情をしているように見えた。

その後、暗くなって表情は見えなくなってしまったが、声が震えているのはよくわかった。

それがどう言うことなのか聞く暇もなく、俺は唇を塞がれる。

まるで男がやるようなキスを、何分も休まずにやってくる。

最初は抵抗していた俺も、だんだん心地よくなってきて…

俺はそれを桃音さんの首に腕を回すことで伝えることにした。

彼女の力がふっと緩んだ隙に、形勢逆転。

今度は俺が上だ。

今度は俺から。

今の桃音さんは、普通の女の子と変わらない反応をしている。

やっと唇を離してもらい、私はゆっくりと深呼吸をする。

恵太が私の隣に寝転がる。

あの話をしよう

そう決意した。

渡された手紙を開く。

そこにはのたうつような字で書かれた文字が連なっていた。

桃音へ

この手紙を見てるってことは、僕はもう死んでるんだね

桃音にはずっと黙ってたけど、僕は、いじめられてた。

アトリエをめちゃくちゃにされたり、手をナイフで傷つけられたり、殴られたり…

毎日、生きているのが辛かった

絵を描くのも、もう嫌になっちゃった…

僕は、もう逝きます

桃音、僕が死んでも、自分を責めないでね

桃音と一緒にいられて、幸せだったよ

どうか、また、新しい恋を見つけて、幸せになってね

あと、卒業祝いのプレゼントがあるんだ

見てからのお楽しみね

じゃあ…

さようなら

死んでもずっと、君だけを愛してる

洸太より

俺は手紙の裏側をひっくり返した。

俺は洸太さんからの手紙の裏側を鉛筆で塗りつぶす。

すると、文字が出てきた。

“絵をナイフで削ってみて”

俺は、壁にかかっている絵をナイフで削っていく。

すると、パラパラと何かが剥がれてきた。

そういって俺は洸太さんの写真を見せてもらった。

見た目が俺にとても似ている。

夕方の5時、俺たちは洸太さんのお墓の前にいた。

花とお菓子を供え、線香をあげる。

そういって2人で静かに手を合わせる。

“桃音を愛してくれて、ありがとう”

それから、何度お墓参りに行っても、もう2度と洸太さんの声を聞くことはなかった。

あれはきっと、洸太さんの天国からの最後のメッセージだったのだと、俺は思う。