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花が枯れるまで

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花が枯れるまで

♥

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2019年02月28日

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妻が死んで

1ヶ月経った。

唯一の心の支えが消えたあの日。

そう。

あの日から

俺の人生はどん底へと落ちたのだ。

仕事でのミスも増え

それが原因で不眠症になり

集中力が散漫になって

またミスをする。

まるで

終わらない悪夢のようだ。

そして俺は遂に

生きる気力すらも失った。

今年で46歳。

今から出世するなど

俺には至難の業。

恋愛面だって

妻以外の女を選ぶなんて考えられない。

友人も

家族も

俺のことなど気にも止めていないに決まっている。

こんな俺に

もう

生きている意義は無いように感じられた。

嘉人

……縄でも買ってくるか

俺は

財布の中に500円玉だけを入れて家を出た。

嘉人

眩しいな

ここ2、3日家を出ていなかったため

やけに景色が明るいように思える。

嘉人

……どうせ、最期だしな

俺は

快晴の空に導かれるように

近所の公園へと足を踏み入れた。

ふと目に止まったベンチに腰掛ける。

遊具では

子供たちが遊んでいた。

嘉人

元気だなぁ

その様子を見ているだけで

自然と笑みが浮かぶ。

するとその時

女の子

おじちゃん

声をかけられた。

嘉人

何だい?

女の子

大丈夫?

嘉人

え?

女の子

おじちゃん、悲しそうだよ?

嘉人

ああ……ちょっとね

女の子

ふーん……

女の子

あ、そうだ!

女の子

これあげる!

嘉人

これは?

女の子

お花!

女の子

ごめんね

女の子

名前は分からないの

嘉人

そっか

嘉人

ありがとう

女の子

あのね

女の子

幼稚園の先生が

女の子

「黄色は希望の色なんだよ〜」

女の子

って言ってたの!

女の子

だから

女の子

おじちゃんも早く元気になってね!

嘉人

……ああ

嘉人

ありがとう

涙を流しながら答える。

女の子がおろおろしていたが

止められなかった。

嘉人

ねぇ

嘉人

これあげる

無理やり手で目を覆いながら

おもむろに財布を取り出すと

俺は

500円玉を女の子の手に乗せた。

女の子

いいの?

嘉人

お花のお礼だよ

女の子

本当!?

女の子

ありがとう!

女の子

あ、ママが呼んでるから行くね!

女の子

おじちゃん、ありがとう!

嘉人

こちらこそ、ありがとう

嘉人

……ははっ

嘉人

まさか、ここでこんな気持ちになるとは

『希望』

という言葉だけで

何故か心を救われた気がする。

嘉人

俺が生きてなきゃ、この花も枯れるんだろうな

嘉人

花が枯れるまで

嘉人

もう少しだけ、生きてみようか

生きる希望が湧いた

そんな

昼下がりの公園。

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