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生きていてくれてありがとう(前編)

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生きていてくれてありがとう(前編)

1 - 生きていてくれてありがとう(前編)

♥

705

2020年03月03日

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由紀

結衣ー!久しぶりー!

結衣

あ、その声は由紀ね!ほんとすごい久しぶり!

由紀

待って、今席連れてってあげるから。

結衣

ふふ、ごめんね。驚いたでしょ?

結衣

私がこんな姿で。

由紀

そうね、聞いた時はすっごくびっくりしたわよ。

結衣

私もまさかこんな事になるとは思ってもいなかったもの。

由紀

…そうよね。

由紀

でも相変わらず綺麗よ。結衣。

私が3年ぶりに再開を果たした

親友の結衣は

2年前大病にかかり両目を失明していた。

結衣

ふふ、ありがとう。

結衣

今じゃメイクも何もできないからずっとスッピンのままなのよ。

由紀

いいじゃない。結衣は何もしてなくても綺麗なんだから。

結衣

そうかしら?

結衣

でも旦那のために少しでも綺麗でいたいなって思ってるわ。

由紀

あ、そういえばまだ言ってなかったよね!

由紀

結婚おめでとう!

結衣

ありがとう。

結衣

私もまさかこんな自分が結婚できるとは思っていなかったもの…

由紀

旦那さんとはどういう出会いだったの?

結衣

ふふ、それもそれで恥ずかしい話なんだけどね…

私が旦那と出逢ったのはちょうど2年前くらい…

仕事帰りにコンビニに寄ってコーヒーを飲み、一息ついてる所だった。

結衣

痛、痛…痛たたた…

急にお腹が痛くなり全身を這うような激痛が走った。

意識が混濁していき、気付いた時には病院のベッドにいたらしい…

結衣

ここ…どこ?

結衣

やだ…なにこれ?

結衣

真っ暗…何にも見えないじゃない…

お母さん

結衣!!結衣!!

お母さん

よかった!!目を覚ましたのね!!

結衣

ママ、ママなの?

結衣

ねぇ、ママ…

結衣

私どうしちゃったの?

結衣

さっきから全然何も見えないの!!

原因不明の病気だったらしい。

私は数週間眠り続け、気付いた時にはもう視力を失っていた。

医者曰く、身体が弱ってる時に限り動き出す目のウイルスだそうで

私が眠っている間に徐々に目を侵食していったらしいのだ。

結衣

…っう。うっ…

結衣

どうして…どうして私が…

今まで頑張ってきた仕事も何もかも失った。

結衣

これからどうして生きろって言うのよ…

結衣

今どこに座っているのかも…

結衣

電気が付いてるのか付いていないのかすら分からない…

結衣

…。

結衣

もういっそ…そのまま死んでいた方が楽だった…

結衣

こんな惨めな思いをするくらいなら…

私は点滴のコードを抜き取り、自分の首へときつく巻き付けた。

その時だった。

医者

結衣さん!何しているんですか!!

結衣

その時出会ったのが今の旦那さんなの。

由紀

へー!

結衣

私が何も見えなくて絶望してた時にね、

結衣

彼は毎日優しく付き添っててくれたの。

由紀

…。

結衣

私が仕事を失って絶望している時にもね、

結衣

「君が生きていてくれるだけで幸せな人もいるんだ。」って

由紀

きゃー!

由紀

素敵ね旦那さん!

結衣

毎日、素敵な音楽を持ってきてくれたり

結衣

点字を教えてくれたりしたの。

由紀

…。

結衣

私も最初は悲しくて絶望してたけどね、

結衣

あの人のおかげで生きる希望が湧いてきたの…

由紀

うんうん。

結衣

目が見えないって最初は凄く不幸な事だと思ってたわ。

結衣

でも彼は見えないからこそ感じる素敵な世界があるって事を教えてくれたの。

由紀

へー。

結衣

それで…ある日…

結衣

彼が私に言ってくれたのよ。

結衣

君と話してるうちに好きになってしまったんだって。

由紀

…!

結衣

最初は自殺を食い止めるためにもって気持ちで私に会いに来てくれてたみたいなんだけどね…

結衣

でも私も気付かないうちに彼をどんどん好きになってって…

結衣

迷わずにOKしちゃったわ。

由紀

へー。

由紀

ほんとに素敵な旦那様ね!

結衣

ええ、本当に感謝してるの。

結衣

今こうして私が生きていられたのも彼のお陰だもの…。

由紀

そうなのね。

由紀

私も結衣が生きててくれて本当に嬉しいわ!

結衣

ふふ、ありがとう。

由紀

ねぇ!結衣!

結衣

うん?

由紀

明後日ってなんの日か知ってる?

結衣

明後日…んー。

結衣

3月9日火曜…祝日とかではなかったと思うんだけど…

由紀

ふふ、そうよね。

由紀

記念日って訳じゃないんだけどさ、

由紀

明後日3月9日って「ありがとうの日」なのよ。

結衣

3月9日で…

結衣

あ、サンキューって事ね!

由紀

うんうん。

由紀

だからさ、思い切って旦那様に感謝伝えてみたらどうかな?

由紀

私もね、毎年この日にサプライズでプレゼント渡したりしてるのよ!

結衣

へー!

結衣

それはいいわね!

結衣

結衣

んー。でも何がいいかな??

由紀

私ね、丁度いい物知ってるの。

由紀

実はうちの会社で作ってる新商品なんだけどね、

由紀

ありがとうの気持ちを込めた「ありがとうBox」っていうのがあるのよ!

結衣

な、なんかすごいねw

由紀

うん。でもメッセージも付け加えれて旦那さんの好みに合わせて色々商品選べるようになってるのよ!

結衣

へー!それはいいわね。

由紀

じゃあお買い上げって事で!

結衣

ふふ、商売上手なんだから…

俺の名前は冴沼 健二46歳。

今日も妻が慌ただしく俺を起こす。

結衣

あなたー起きてー!

結衣

朝ご飯出来たわよー!

健二

う、ううん…

健二

おはよう。

結衣

あなた、今日昼から名古屋で会合って言ってなかったっけ?

健二

え、

健二

あ、ああ…

結衣

お弁当も用意しといたからね。

健二

あ、ありがとう…。

今日も俺は妻に嘘を付き、

アルバイトのコンビニへと向かう。

健二

美味しいよ!結衣!

結衣

ふふ、ありがとう。

結衣

あなたが調味料に全部点字貼ってくれたおかげよ。

健二

いやいや、料理のセンスが元々あったからじゃないか?

結衣

そうかしら?

結衣

私が会社員をしてた時なんて料理まったくしなかったけどねw

健二

じゃあ才能かな?

結衣

ふふふ、本当に褒め上手なんだから…

俺がこんな才色兼備な妻をもらえたのには訳がある。

それは…

俺が最低な男だからだ…

数年前…

健二

いらっしゃいませー

結衣

すみません、コーヒー1つお願いします。

健二

あ、はい…

一目見た時に恋に落ちた。

彼女は毎晩仕事帰りにうちでコーヒーを買っていくお客さんで、

俺は毎日彼女に逢えるのがとても幸せだった…。

健二

いらっしゃいませー!

結衣

コーヒー1つお願いします!

健二

は、はい!

健二

いつものですね!

結衣

…。

結衣

(何この人…なんか気持ち悪…

でも彼女は俺なんて見向きもしなかった。

そりゃそうだ…

俺は42歳独身のブサイクなデブ男…

綺麗で若い彼女になんて振り向いて貰えるはずもなかったんだ…。

健二

いらっしゃいませー!

それでも彼女に毎日会うために毎日シフトを入れ、

毎日彼女に会える時を楽しみにしていた。

そんな時だった。

悪魔が俺に囁いたんだ…

悪魔

彼女が何も見えなくなれば

悪魔

お前にだって機会はある…

健二

…。

人生に一度の大恋愛…

俺はどうしても彼女が欲しくて

毎日少しづつ…毒入りのコーヒーを煎れたんだ…

健二

(睡眠薬と…目薬…

健二

(これを2週間程与えれば…

俺は彼女のいる病院へ通い、

毎日睡眠薬とウイルスの入った目薬を彼女に与えた。

罪悪感もあった。

でもスヤスヤと眠る美しい彼女を見るたび

手に入れたい、手に入れたい…

と涎を垂らすかのように心が馳せ回った。

そうして彼女が目覚め、弱っている時

僕は医者になりすまし

存分に彼女に尽くしたのだ…。

健二

(こんな僕でも…

健二

(結衣は笑顔を向けてくれている…

健二

(言葉を交わしてくれている…

健二

(俺を頼っていてくれる…

健二

(早く…早く俺の…俺のものにしたい…!!

健二

(結衣、結衣、結衣、結衣…!!

…つづく

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コメント

3

ユーザー

最初は、いい人だなーって思ったけどまさか、嘘ついてただなんて、嘘ついちゃダメだなって思った。

ユーザー

公式の作品を読んでいる気分になりました✨ まさかのデブ男だったなんて…!!もっと痩せててイケメンなのかと思ってましt((殴

ユーザー

えええええ まさかの、デブ…😱 医者でもなく、ただコンビニのアルバイト🙄 騙されてるのが可哀想😭 自分のためだからって、大恋愛だからって 目を失って見えなくなる方の気持ち考えてみろって思いますよね😤

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