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藍
藍
制裁を下したいところではあるが、今日は二人ともいなかった……
藍
何となく部屋を掃除してみる。 部屋には引っ越してきた時の段ボールが一箱だけ放っておいてあった。
藍
そっとカッターで箱を切る。 この箱には大した荷物は入っていない。 ……忌々しい記憶と、ほんの少し、良い記憶が入っているだけである。
藍
処分してしまおうか。 そう思いつつ中身をざっと見る。
黄ばんだ文庫本、 欠けている花瓶、 埃を被った櫛、 ……古びた写真立て。 どれも俺のものではない。
藍
藍
写真立ての写真が目に入ると、どうしようもなく記憶が蘇って来る。
「っ……」 「もういい。今日はここまでだ。 ……私は何度も言っているぞ。私の名に恥じない動きをしろと」 「は、い」 「明日も予定がある。くれぐれも粗相をしないように」 それだけ言うと、父さんは部屋を出て行った。 部屋に戻らないと……と思いつつも体が動かない。 何せ朝から最強クラスの父さんと柔道をしていた…… 否、させられていたため、体中が痛いのだ。 「このあとは……部屋に戻って、勉強して……」 「藍!」 そう叫んで父さんと入れ替わりに姉さんが近寄って来る。 「あっ、立たなくていいから!抱えて部屋まで……!」 「どうせ無理でしょ?」 俺は苦笑しながらそういい、無理やり立つ。 「う~、ごめんね……いつか藍のこと運べるようになるから」 「別にいいって。……父さんが何言うか分からないし」 「……そうだね……」 「ほら、姉さんも用事あるでしょ?」 「嫌だ……藍と一緒にいたい……」 「…………」 何も言えなくなった俺は、黙って一歩歩く。 「ねえ、藍……私たち……」 続く言葉は予想できた。 でも、何も言えなかった。 「ずっとこのままなの?」 ほら、やっぱり。 だから、また気休めを言う。 「そんなことない、と思う」 「そうだよね。それじゃ、戻ろっか」 そう言って二人で歩く。 俺は跡継ぎとしてとにかく「完璧」であることを求められる。 姉さんは、空気みたいに扱われて、そこそこの人生を歩めればいいと思われる こんな日常に、いつか終わりは来るんだろうか……
……気付くと結構な時間になっていた。 結局段ボールの中身は処分するか……
藍
藍
藍
ナツ
藍
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ナツ
ナツ
藍
ナツ