父
おい!なんどいってんだ

父
こんな点数…ひどすぎだろ

奈緒
ごめんなさい

父
いつも謝ってばっかでなんも変わってないじゃねえか

奈緒
はい…

父
はあ、もうひどすぎんだろ

奈緒
お母さん…

母
大丈夫よ

奈緒
86点ってまぁまぁよくない…?

母
そうね、とても頑張ったと思うわ

母
偉いわね

奈緒
ありがとう😊

奈緒
なのに…お父さんひどいよ。

母
でも仕方ないじゃないの

母
もっとがんばりなさい!

母
そしてお父さんを見返してやりなさい笑

奈緒
うん…がんばる。

父
おいてめえ

奈緒
…?

父
ちゃんと洗濯やれ!

父
お母さんいねえんだからそれくらいやっとけ

奈緒
はい…分かりました。

父
さっさとやれっつーんだ。

奈緒
ねえ…お父さん?

奈緒
なんで奈緒は頑張ってるのにわかってくれないの?

奈緒
お父さんだって洗濯やればいいじゃない。

奈緒
なのに座ってばっかりでテレビみて。

父
なにいってんだよ!!

父
どこが頑張ってんだよ

父
頑張ってる姿なんかみられねーよ

父
俺に洗濯やれと?

父
誰に口聞いてんだよ

父
いい加減にしろ早くやれ!

奈緒
ぁ…はい…

先生
今度の土日の宿題は父についての作文です

先生
なんでもいいのでお父さんの良いところを見つけ作文に書いてきてください。

生徒A
はーい

生徒B
了解でーす。

奈緒
お父さんのいい所なんてひとつもないよ。

友美
そうなの?

奈緒
うんいっつもひどすぎ。

友美
そっかー例えば?

奈緒
洗濯しろとか点数低いとか

友美
えええ、奈緒ちゃん成績トップ10なのに?

奈緒
うん、だけど怒られてばっか

友美
でもお父さんには奈緒に頑張ってもらいたいから言ってるんじゃない?

奈緒
そんなわけあるか

奈緒
命令ばっかであんたの奴隷かっつーの。

奈緒
命令に従わないとめんどくさいことになるし。去年くらいまでは優しかったんだけどなあ

友美
んーー…

友美
まあ、なにかあったら相談して!

奈緒
うん…ありがと!

奈緒
(はぁ…くそじじいのことなんてなにもかきたくない。)

奈緒
(いいことなんて1つもないじゃない。)

奈緒
(何を書こう…)

奈緒
(もう、ここは嘘ついちゃおうかな…)

奈緒
(ほんとにどうしよう…)

奈緒
ただいまー…

奈緒
(あれ、…?やけに静かだな)

奈緒
(お父さんいないのかな?)

奈緒
(でもお父さんが外に出るのはめったにないからな…)

奈緒
…?!!

奈緒
お父さん?!!!!?

父
ぅ………

父
………う…ぅ…………

奈緒
(どうしよう…。救急車呼ぼうかな。いつも私のこと見下して怒ってばっかりで)

奈緒
(電話しなかったらこのまま苦しんで死んだらお母さんと仲良く2人で住める)

父
ぁ…、うぁ…ぅ……

奈緒
ねえ?

奈緒
なんで、助けなきゃ行けないの?

奈緒
こっちの苦しみもわからないくせに

奈緒
なんでそっちの苦しみを助けなきゃ行けないの?

奈緒
私が助けると思う?

奈緒
なんで去年くらいまでは優しかったのに…

父
……ぅ…

父
な……

奈緒
(もう…可哀想か…救急車に電話しよう)

母
奈緒?!いまどこよ?!

奈緒
お母さん…!!

母
お父さんは?!

母
大丈夫なの?!!

奈緒
私も今病院にいるの…

奈緒
お父さんはわからない…でも今緊急手術してるみたい

母
私も今向かってるわ!

母
ちょっとそこで待ってなさい

母
奈緒ー…

奈緒
お母さん!

母
今着いたわよ遅れてごめんね

奈緒
ねえ…お母さん?

奈緒
お父さんはなんでこうなったの?

奈緒
さっき救急車の中で聞いちゃったんだけど

奈緒
前から心臓の病気があったの?

奈緒
ねえ、お母さん??

母
…………

奈緒
答えてよ!

母
そうね…お父さんはね、一年前から心臓の病気が見つかったの

母
心臓にねなにかしら腫瘍があったみたいで手術じゃなんもできないらしいの。

母
それで余命はあとわずかだって。でもね今生きていれたことが奇跡なのよ

母
お父さんはいつ死ぬかわからない、生死の境目にいたのよ。

奈緒
そんな…

母
だから急に一年前くらいから厳しくなったでしょ?

母
それは、お父さんが貴方を自らの手で必死にいい大人に育てたいって言ったからよ

母
だから私は無茶なこと言わないで病院で入院するべきよと言った。

母
けれど人間はいつか死ぬんだ、だから今あるこの時間を大切な人と過ごすって。大好きな奈緒と少しでも多く過ごしたいんだって

母
お父さんはこのことを奈緒に伝えないでくれと言ったの。もし俺が天国に行く時が来たら奈緒にはないしょで天国に行くって。

母
奈緒の悲しむ姿が見たくないからって。

奈緒
なんで…ねえ?なんでよ!!なんでそんな厳しく…怒ってばっかで…

母
お父さんはあなたが影で泣いてるのを知ってるのよ。それを見てお父さんもたまに涙するときもあるのよ。でもね、お父さんは奈緒を立派な大人にさせたいんだって。

奈緒
お父さん……私ひどいこと言っちゃったのに……

病院の先生
終わりました。

母
どうだったんですか?!

奈緒
…?!!

病院の先生
残念ながら…最善を尽くしましたが……

奈緒
え……ぉお父さん、、?

母
あ…ぁ…………

奈緒
もっと早く電話してれば……

奈緒
わ、私がお父さんを殺したん…だ

奈緒
もっと

奈緒
もっとはやく

奈緒
電話すれば助かったかもしれないのに…!……

先生
では作文で書いたことを発表してください

先生
えー、じゃあ横山奈緒さんお願いします。

奈緒
はい。

私のお父さんはとても厳しくて怒ってばっかで最低な人でした
ただただ憎くて、お父さんがいなくなればいいのにと思ってました
わたしは家に帰った時お父さんが苦しんで倒れてる姿を見て
ようやく私はお父さんによって苦しめられた気持ちがわかった?
お父さんは私がそんなくだらない事を言ってる間も愛してくれていました
テストで怒っている時も洗濯やれと怒っている時も私を立派な人間にしてくれようと愛情をもってくれていました
どうして私はお父さんにそんなひどいことを言ったのだろう
自分の命を犠牲にしてまで私を最後まで愛してくれていたことです。