花山セラ
伊賀さん、次の調理実習
よろしくね

伊賀アオイ
あ、うん!
よろしく

伊賀アオイ
でも、その………
花山さん、大丈夫?

花山セラ
え?
ああ……
ママのこと?

伊賀アオイ
……うん

同級生の花山セラ
長い黒髪
白くてきめ細かい肌
手足は長くて、頭は小さい
彼女はまるでどこかのお姫様のようだ
花山セラ
大丈夫だよ
ママには調理実習があるってこと
秘密にしてたから

伊賀アオイ
え?

花山セラ
言ったら、絶対止められちゃうもん

花山セラ
また学校に乗り込んできて

花山セラ
『私のお姫さまがケガしたらどうするの?』
って……
笑えるよね

伊賀アオイ
……

花山さんのママにとって
花山さんは本当にお姫さま
何かある度に学校に乗り込んできて
怒鳴り散らして抗議する
有名なモンスターペアレントだ
花山セラ
ママはね
自分の作品に傷がつくのが許せないだけなの

伊賀アオイ
そんな……
きっと花山さんのことが心配なんだよ

花山セラ
ううん
心配なんてレベルじゃない
私もう中学生でしょ?
これからは自分の好きなようにするって決めたの

伊賀アオイ
……そっか

花山セラ
伊賀さん、よろしくね

伊賀アオイ
うん

花山セラ
アオイ!
お待たせ

伊賀アオイ
セラ!
ううん
今来たばっかり

花山セラ
支度に時間かかっちゃって

伊賀アオイ
(あれからもう五年か)

私たちは高校三年生になった
花山セラはますます美しくなっている
伊賀アオイ
セラは着飾らなくたって綺麗でしょ?

花山セラ
ふふ
からかわないでよ
そんなこと言うの、アオイだけよ

伊賀アオイ
そう?

花山セラ
そう

伊賀アオイ
じゃあ先にお昼食べに行こっか

花山セラ
うん

花山セラ
ねぇアオイ

伊賀アオイ
何?

花山セラ
高校卒業したら、私、家を出るつもりなの

伊賀アオイ
え?

花山セラ
お金はバイトして貯めたし、
足りない分はパパが助けてくれるって……

伊賀アオイ
そっか

花山セラ
それでね、私たち、同じ大学に行くでしょ?

伊賀アオイ
うん

花山セラ
……ルームシェアしない?

伊賀アオイ
……いいよ

花山セラ
ええっ?
そんなあっさり決めていいの⁉

伊賀アオイ
だってセラは親友だもん
家も大学も、一緒ならきっとすっごく楽しいよ

花山セラ
……嬉しい
アオイと仲良くなってから、私、本当に毎日楽しいの

伊賀アオイ
私もだよ

伊賀アオイ
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不在着信

伊賀アオイ
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不在着信

伊賀アオイ
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不在着信

伊賀アオイ
(何で出てくれないの?)

伊賀アオイ
セラ……

花山セラ
ただいまー

伊賀アオイ
セラ!
どうして電話に出なかったの⁉

花山セラ
え?
あっ……
ごめん、マナーモードにしたままだった

伊賀アオイ
じゃあ、どうして遅くなったの⁉

花山セラ
バイトよ

伊賀アオイ
嘘!
木村くんと遊んでたんじゃないの?

花山セラ
違うよ
木村くんとはただの友達

伊賀アオイ
向こうはそう思ってないかも
セラは綺麗なんだからもっと自覚して?

伊賀アオイ
私、セラが心配なの!

花山セラ
大丈夫
そんなこと言うの、アオイだけよ

伊賀アオイ
セラ、セラは綺麗だよ!
誰より綺麗……

花山セラ
アオイ?

伊賀アオイ
髪も、肌も、唇も
手も足も全部

伊賀アオイ
何もかも綺麗よ

花山セラ
……アオイ
ごめんね

花山セラ
あの日から、私は自由になったけど
代わりにアオイを壊しちゃったんだね

伊賀アオイ
セラ……
セラは、ダレヨリ、キレイ
ダレヨリ……

花山セラ
アオイ
調理実習の時、私が油を浴びたのは
本当はあなたのせいじゃないのよ

伊賀アオイ
セラ……?

花山セラ
私、ママの作品を壊してやりたかったの

花山セラ
アオイを利用して、ママの束縛から逃げたかった

伊賀アオイ
セラ……
いいの
それでも

花山セラ
アオイ?

伊賀アオイ
セラは綺麗よ

花山セラ
肌がただれていても?

伊賀アオイ
うん

花山セラ
ずっと嘘をついて
あなたに罪の意識を感じさせていたのに?

伊賀アオイ
うん
それでも

伊賀アオイ
セラは綺麗よ
誰より綺麗

伊賀アオイ
私だけの、完璧な……
