TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

家へ帰宅し、僕は外出した装いのままベッドに倒れ込んだ。

そして布団を頭まですっぽりと被り、泣きそうな目を擦っていた。

……ロシアへ、帰る。

いつか、そんな日は来るだろうなとは感じていた。

でもまさか今だなんて……神様はどれだけ僕を苦しめるおつもりなんだろう。

それに、……僕が菊くん以外の人と結婚するだなんて……

イヴァン・ブラギンスキ

……そんなの、考えられるわけがない……

と、その時

コンコン

軽快に扉をたたく音がした。

母かと思い、体が強張るが、聞こえてきた声は

アーニャ・ブラギンスカヤ

……イヴァン? アーニャだけど……

姉さんの声だった。

イヴァン・ブラギンスキ

な、なに……僕ちょっと今は一人になりたいんだけど……

そんな僕の意見もおかまいなしに、姉さんはズカズカと僕の部屋へ入り込んできた。

イヴァン・ブラギンスキ

……なに、姉さん……

姉さんは僕の前に立つと、顔をくしゃくしゃにして

アーニャ・ブラギンスカヤ

……ごめんなさい、イヴァン……

と謝ってきたのだ。

イヴァン・ブラギンスキ

え?

アーニャ・ブラギンスカヤ

あなたが、ホンダくんのことを愛しているのは知ってるのに……

アーニャ・ブラギンスカヤ

ごめんなさい、わたし、お母様に、逆らえなかったわ……

イヴァン・ブラギンスキ

姉さん……

姉さんが震えている。

いつも上から偉そうに圧をかけてものを話す姉さんが、こんなにも震えている。……

あの人に僕たちの幸せという言葉は存在しないのだろうか……

ブチン、と僕の中で何かが切れた音がした。

イヴァン・ブラギンスキ

……姉さんのせいじゃないよ

アーニャ・ブラギンスカヤ

イヴァン……?

イヴァン・ブラギンスキ

全部全部、あのババアが悪いんだ……

アーニャ・ブラギンスカヤ

ば、ババア……? イヴァン、そんな……!

イヴァン・ブラギンスキ

でも実際そうじゃないか!

イヴァン・ブラギンスキ

あの人のせいで僕たちはこんなにも苦しんでいるんだよ!

イヴァン・ブラギンスキ

子どもを駒としか扱ってないんだ、あの人は、そういう人だ……

アーニャ・ブラギンスカヤ

イヴァン……

昔から父と母は“僕たち”に興味を示してはくれなかった。

興味があったのは、“優秀で、なお後継ぎとしての才覚がある嫡子”のみだった。

僕は体が弱く、気も弱く、両親の望む理想の子としては不十分だった。

だが姉さんは両親の理想の子として育っていったけれど、女だからという理由で不当な扱いを受けていた。

朝早くから夜遅くまで勉強勉強。

口答えを少しでもすれば、食事抜きは当たり前

ひどい時はシベリアの寒空の下、ニット一枚で家から追い出される。

そんな、両親だった。……

イヴァン母

いつまで寝ているのですか、イヴァンさん!

パシン、と胸ぐらを掴まれて、左頬に母の手が跳ねる。

クラクラとする視界が、さらにぐるぐると回って吐き気がする。

ああ、これは幼少期の頃の記憶だ。

イヴァン母

あなたという子は……

イヴァン母

どうして時間通りに行動することができないのですか?

イヴァン母

あなたのお姉さんはもう勉強を始めているのですよ!

イヴァン・ブラギンスキ

お、お母さま……でも僕、今体調が……

イヴァン母

ああどうしてこんな子が生まれたのかしら!

イヴァン母

私もあの人も充分体が強いのに、あなただけこんな……!

イヴァン・ブラギンスキ

ごめんなさい、ごめんなさい……

イヴァン母

はあ……どうしてこんな子を産んでしまったのかしら……

イヴァン母

アーニャさんはとても聞き分けの良い子だけれど、女だからあとは継がせられないわ……

イヴァン母

……イヴァンさん。罰としてお外で反省してもらいます。

イヴァン・ブラギンスキ

はん、せい……?

イヴァン母

お母様との約束が守れなかったこと、体調が悪いなどと嘘をついたこと……

イヴァン母

それらの罪の躾です。良いですね?

イヴァン・ブラギンスキ

でも、本当に今辛くて……立っているのも、やっとで……

イヴァン母

この期に及んで言い訳ですか? 一体いつまでお母様を失望させるのですか

イヴァン・ブラギンスキ

ちがっ……ごめんなさい、許して、お母様……!

イヴァン・ブラギンスキ

……寒い……

母に家から追い出されて、もう何分経過しただろう。

そろそろ手の感覚がなくなってきたし、意識もなんだかふわふわして気持ちがいい……

……このまま、死ぬのかな……

アーニャ・ブラギンスカヤ

イヴァン!

……あの人は、誰だろう……

ああ、お姉ちゃんだ……お姉ちゃんも反省しにきたのかな……

いや、お姉ちゃんはめったに反省することなんて、ない……あの人は、優秀だから……

アーニャ・ブラギンスカヤ

大丈夫? イヴァン、お願い、しっかりして……!

イヴァン・ブラギンスキ

……おねえ、ちゃん……

アーニャ・ブラギンスカヤ

! そう、そうよ! わたし、お姉ちゃんよ!

イヴァン・ブラギンスキ

……

アーニャ・ブラギンスカヤ

……イヴァン? ねえ、目を開けて……イヴァン? イヴァン? ……イヴァン!

そこで、僕の意識は途切れた。

僕が君を愛さない理由がないよ

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

255

コメント

1

ユーザー

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙イヴァン"ン"ンンッッッッッッッッッ!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚