アーニャ・ブラギンスカヤ
ハッと我に返る。
体がカタカタと震えている。
アーニャ・ブラギンスカヤ
首を縦に振る。
アーニャ・ブラギンスカヤ
姉さんは僕の手をぎゅっと握っていた。
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
黙りこくる僕を見て、姉さんは仕方なさそうに
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
僕は何も言えず、ただただ俯く。
先ほどはあのババアなんて言ってしまったが、僕には両親に反抗できるほどの勇気は持ち合わせていない。
むしろ、反抗の仕方などわからない。
今までずっと従うということしか学んでこなかったから……
アーニャ・ブラギンスカヤ
姉さんは僕の手をぎゅっと握る。
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
姉さんは意味ありげに微笑む。
そして、続けて何か言葉を紡ごうと口を開いた時だった。
コンコン
冷淡にも扉をノックする音が聞こえた。
モロゾフ
(イヴァンおぼっちゃま、アーニャお嬢様)
母の付き人であるモロゾフの声が聞こえた。
肩がびくりとひそむ。
彼はとても厳しい人だった。
僕たちの両親の言うことには絶対で、
僕たちが言いつけを破った時には折檻を任されるほど厳格な人だった。
母がいるということはモロゾフもいる。
わかっていたことなのに、どうしようもなく動悸が収まらない。
モロゾフ
(ご挨拶をしにまいりました。)
モロゾフ
(大変お久しぶりですから。)
モロゾフ
(そこにいらっしゃるのでしょう?)
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
モロゾフ
(寒いですか?)
イヴァン・ブラギンスキ
(凍えちゃうよ……)
モロゾフ
(なら、その寒さを忘れないでください。)
モロゾフ
(そして耐えてください。)
モロゾフ
(ブラギンスキ家の嫡子なら、)
モロゾフ
(そのくらいできますでしょう?)
イヴァン・ブラギンスキ
息を呑む。
過去の出来事が鮮明に思い起こされて、
その恐怖がナイフとなって口から出ないとように唇を固く結んだ。
その時だった。
モロゾフ
(入りますよ)
モロゾフは強引にも、扉がかすかに開けようとする。
だが、姉さんが入らせまいと、少しだけ下品だが足で扉を止めた。
アーニャ・ブラギンスカヤ
(いきなりどうしたの、モロゾフ)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(あなたらしくないわ)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(主人の断りもなく開けてしまうだなんて)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(あなたっていつもこんなに無遠慮だったかしら?)
すると、力が加わっていた扉は、すっと元の定位置に戻っていった。
モロゾフ
(それは大変失礼いたしました)
モロゾフ
(どうか入る許可をくださいませんか?)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(いいえダメよ)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(そこで話してちょうだい)
アーニャ・ブラギンスカヤ
(私たちにどんな用があるの?)
扉越しで、モロゾフは面倒くさそうにため息を吐く。
モロゾフ
(……奥様からの伝言をお伝えいたします)
モロゾフ
(これから、お嬢様方がお通いになる学校の送迎を)
モロゾフ
(私が務めさせていただきます。)
ハッとした表情で、二人顔を見合わせる。
そんな僕らの感情を察したのか、
モロゾフ
(もう決まったことですからね)
モロゾフ
(お夕食のお時間になりましたら、また伺います)
と言葉尻を強くして言い、少し経ってから扉越しの気配は消えた。
アーニャ・ブラギンスカヤ
姉さんがぼそりと呟く。
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
姉さんは唇を固く噛んで、
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
僕はぎゅっと姉さんの手を握る。
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
少しだけ大きく深呼吸をする。
そして、姉さんから顔を背ける。
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ
イヴァン・ブラギンスキ
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
アーニャ・ブラギンスカヤ
イヴァン・ブラギンスキ








