赤 side
ナツ
他国の兵
目の前にいる敵に向かって、剣を突きつける
蒼白な顔
流れる冷や汗に、涙の溜まった目
他国の兵
きっとこんな中にも
家族と、友人と、恋人と…帰ってくる約束をしてここに出向いた
なんて奴もいたりするんだろう
まぁ、今はそんなこと
ナツ
ナツ
他国の兵
剣を振って血を祓うと
また次の敵へと向かう
ナツ
いるまが今の依頼を受けたとき
あー、正直死ぬかなって思った
城への潜入?桜の花嫁?
何せ国家に触れるわけだから
まぁ俺には他にやりたいことも残ってるものもないから…それで良かった
最悪死んでもそのときはそれでいいやってくらい、この生への執着なんてなかった
ナツ
なつくん!と
ただ純粋に名前を呼んでくるあいつは
懐いてくるから妹みたいで
けど、
ナツ
ナツ
俺と似ているところがある
不思議な奴
約束したいるまのためにも、
……こさめのためにも
ナツ
意地でも
今だけは、生きてやる
桃 side
コサメ
ラン
こさめと2人、書庫の隅で座り込んだ
冷たい隙間風が頬に吹きつけている
上ではまだみんなが戦っていて
想像ができないほどの犠牲者が出て
倒れて、そして…朽ちる
ラン
お願い
早く
早く
ラン
幸せが壊れる前に、私が犠牲になれば…
コサメ
ラン
コサメ
え、私…どんな顔してた?
今、何を考えてた?
ラン
コサメ
コサメ
ふらふらと立ち上がり、数少ない窓に顔を近づける
そこには暗い顔をした自分がいた
あぁ…そうだ
ラン
私は今、生贄になることを望んでいる
桜の花嫁だからなのか
私が本心から思っているのかは、もはやわからない
でもただ、少しでも犠牲が減ることを祈った
ラン
ラン
コサメ
ラン
駄目だ
私がこんな顔してちゃ駄目だ
ラン
ラン
ラン
こくりと、一度頷く
コサメ
コサメ
ラン
ラン
コサメ
ラン
先ほどまでの思考を振り払い
こさめの手を握る
白い手はまだ、不安を表すように震えていた
……そっか、そうなんだ
ラン
コサメ
きっと、そう
ラン
ラン
コサメ
これは私の感と
気づいてはいけない、〝私の想い〟とも重なってしまうから気づいたこと
ラン
目の前の瞳は迷うように揺れた
そして、少し間の後
コサメ
コサメ
ラン
瞳は、幸せそうに細められた
優しい、可愛らしい控えめな笑顔
それを見たら何だか安心した
ラン
コサメ
ラン
コサメ
ラン
コサメ
同時に、浮かんでしまうのは
ラン
気づいては駄目だ
私じゃ、駄目なの
だから見ないふりをする
今はただ信じたい
ラン
ラン
今夜は、どうか全員無事で
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