阿部亮平
目の前にいる男の人は、そこまで言って言葉を失った。
理由はたぶん…僕が泣いていたから。
理由はたぶん…僕が泣いていたから。
阿部亮平
「……ふぇっ……うぅっ……ぐすっ…」
阿部亮平
涙が止まらない。
生まれてはじめて、こんな怖い思いをした。
この人が助けてくれなかったら、どうなっていたか……。
生まれてはじめて、こんな怖い思いをした。
この人が助けてくれなかったら、どうなっていたか……。
?
「……泣いているのか?」
阿部亮平
男の人は座り込む僕の目の前にしゃがみこんだ。
?
「……大丈夫だ、もういないだろ。
だから泣くな。」
だから泣くな。」
阿部亮平
男の人は自分の服の袖で、ゴシゴシと僕の涙をぬぐってくれる。
阿部亮平
「うん……」
阿部亮平
僕がうなずくと、男の人は小さく笑って頭をなでてきた。
あらためて、目の前の男の人を見あげる。黒くてサラサラの髪。
感情を宿さない瞳に、無表情な顔。
とても綺麗な人……。
そう思った。男の人に綺麗なんて失礼かな……?
それでも純粋に綺麗な人だと思った。
あらためて、目の前の男の人を見あげる。黒くてサラサラの髪。
感情を宿さない瞳に、無表情な顔。
とても綺麗な人……。
そう思った。男の人に綺麗なんて失礼かな……?
それでも純粋に綺麗な人だと思った。
?
「なんでこんな時間に……こんなところにいるんだ、お前は」
阿部亮平
咎(とが)めるように言われ、僕はうつむいた。
地面に転がっているリュックをギュッと抱きしめる。
地面に転がっているリュックをギュッと抱きしめる。
?
「……お前……家出か?」
阿部亮平
僕の荷物を見て納得したようにつぶやく男の人。
僕はコクンとうなずいた。
僕はコクンとうなずいた。
?
「…なにか…ワケありか?」
阿部亮平
男の人は心配そうに僕を見つめる。
見た目は怖くて…感情をあまり出さなそうな人。
でも今、僕に向けられているのは、
優しい眼差しだった。
見た目は怖くて…感情をあまり出さなそうな人。
でも今、僕に向けられているのは、
優しい眼差しだった。
阿部亮平
「……あ……あの……」
阿部亮平
とりあえずお礼を言わないと。
この人が助けてくれなかったら、今頃
大変なことになっていた。
この人が助けてくれなかったら、今頃
大変なことになっていた。
?
「……なんだ?」
阿部亮平
無表情のまま、男は僕を見つめる。
阿部亮平
「あ……の……助けてくれて、ありがとう……ございます」
阿部亮平
僕はバッと頭を下げた。
そんな僕を男の人は驚いたように目を見開いて見ていた。
そんな僕を男の人は驚いたように目を見開いて見ていた。
?
「ククっ……お前、おもしろいヤツだな」
阿部亮平
小さく笑い、僕の頭を優しくなでる。
あれ……?
これ、この人のクセなのかな……?
さっきもこうやって頭をなでられた気がする。
その手は優しくて、出会ったばかりだというのに安心できた。
あれ……?
これ、この人のクセなのかな……?
さっきもこうやって頭をなでられた気がする。
その手は優しくて、出会ったばかりだというのに安心できた。
阿部亮平
「えっ……あっ……」
阿部亮平
僕があわてていると、「悪い」と言って手を離した。
?
……おい、家出男
阿部亮平
「は、はいっ……」
阿部亮平
とっさに返事をしてしまったけれど家出男って……。
なんか嫌な響きだなぁ。
ムッとしていると、男の人の笑い声が聞こえた。
なんか嫌な響きだなぁ。
ムッとしていると、男の人の笑い声が聞こえた。
?
「ックク。見てて飽きないな…お前は」
阿部亮平
わ、笑われた?
僕は頬をふくらませ、男の人をにらむ。
なんだかバカにされてるみたい。
僕は頬をふくらませ、男の人をにらむ。
なんだかバカにされてるみたい。
?
「行く当てはあるのか?」
阿部亮平
男の人は急に真剣な顔をして、僕を見つめる。
この短時間にいろいろありすぎてわすれてたけど…。
僕、家出中だった……。
「行く当てなんかありません」、そういう意味をこめて、ブンブンッと首を横に振った。
そんな僕を男の人は無言で見つめた。
この短時間にいろいろありすぎてわすれてたけど…。
僕、家出中だった……。
「行く当てなんかありません」、そういう意味をこめて、ブンブンッと首を横に振った。
そんな僕を男の人は無言で見つめた。
阿部亮平
え?な、なんだろう?
なんか……見られてる?
僕も男の人を見あげているため、
必然的に見つめ合う形になってしまう。
なんか……見られてる?
僕も男の人を見あげているため、
必然的に見つめ合う形になってしまう。
?
「……はぁ……仕方ないか」
阿部亮平
長い沈黙のあと、男の人は深いため息をついて立ち上がった。
それから、僕を無表情のまま見おろす。
それから、僕を無表情のまま見おろす。
?
お前、名前は?
阿部亮平
「えっと……亮平……」
阿部亮平
ぼそりと言うと、男の人は小さく笑った。