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一番星のキミに恋するほど切なくて。

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一番星のキミに恋するほど切なくて。

1 - 一番星のキミに恋するほど切なくて。

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2021年10月29日

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阿部亮平

目の前にいる男の人は、そこまで言って言葉を失った。
理由はたぶん…僕が泣いていたから。

阿部亮平

「……ふぇっ……うぅっ……ぐすっ…」

阿部亮平

涙が止まらない。
生まれてはじめて、こんな怖い思いをした。
この人が助けてくれなかったら、どうなっていたか……。

「……泣いているのか?」

阿部亮平

男の人は座り込む僕の目の前にしゃがみこんだ。

「……大丈夫だ、もういないだろ。
だから泣くな。」

阿部亮平

男の人は自分の服の袖で、ゴシゴシと僕の涙をぬぐってくれる。

阿部亮平

「うん……」

阿部亮平

僕がうなずくと、男の人は小さく笑って頭をなでてきた。
あらためて、目の前の男の人を見あげる。黒くてサラサラの髪。
感情を宿さない瞳に、無表情な顔。
とても綺麗な人……。
そう思った。男の人に綺麗なんて失礼かな……?
それでも純粋に綺麗な人だと思った。

「なんでこんな時間に……こんなところにいるんだ、お前は」

阿部亮平

咎(とが)めるように言われ、僕はうつむいた。
地面に転がっているリュックをギュッと抱きしめる。

「……お前……家出か?」

阿部亮平

僕の荷物を見て納得したようにつぶやく男の人。
僕はコクンとうなずいた。

「…なにか…ワケありか?」

阿部亮平

男の人は心配そうに僕を見つめる。
見た目は怖くて…感情をあまり出さなそうな人。
でも今、僕に向けられているのは、
優しい眼差しだった。

阿部亮平

「……あ……あの……」

阿部亮平

とりあえずお礼を言わないと。
この人が助けてくれなかったら、今頃
大変なことになっていた。

「……なんだ?」

阿部亮平

無表情のまま、男は僕を見つめる。

阿部亮平

「あ……の……助けてくれて、ありがとう……ございます」

阿部亮平

僕はバッと頭を下げた。
そんな僕を男の人は驚いたように目を見開いて見ていた。

「ククっ……お前、おもしろいヤツだな」

阿部亮平

小さく笑い、僕の頭を優しくなでる。
あれ……?
これ、この人のクセなのかな……?
さっきもこうやって頭をなでられた気がする。
その手は優しくて、出会ったばかりだというのに安心できた。

阿部亮平

「えっ……あっ……」

阿部亮平

僕があわてていると、「悪い」と言って手を離した。

……おい、家出男

阿部亮平

「は、はいっ……」

阿部亮平

とっさに返事をしてしまったけれど家出男って……。
なんか嫌な響きだなぁ。
ムッとしていると、男の人の笑い声が聞こえた。

「ックク。見てて飽きないな…お前は」

阿部亮平

わ、笑われた?
僕は頬をふくらませ、男の人をにらむ。
なんだかバカにされてるみたい。

「行く当てはあるのか?」

阿部亮平

男の人は急に真剣な顔をして、僕を見つめる。
この短時間にいろいろありすぎてわすれてたけど…。
僕、家出中だった……。
「行く当てなんかありません」、そういう意味をこめて、ブンブンッと首を横に振った。
そんな僕を男の人は無言で見つめた。

阿部亮平

え?な、なんだろう?
なんか……見られてる?
僕も男の人を見あげているため、
必然的に見つめ合う形になってしまう。

「……はぁ……仕方ないか」

阿部亮平

長い沈黙のあと、男の人は深いため息をついて立ち上がった。
それから、僕を無表情のまま見おろす。

お前、名前は?

阿部亮平

「えっと……亮平……」

阿部亮平

ぼそりと言うと、男の人は小さく笑った。

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