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1月1日 月曜日 天気 晴れ
今日から日記を書こうと思う。
先月からこの病院に転院することになり、所在なさげな僕を見かねて 先生から日記をもらったのだ。
とはいっても、書くことなんて窓から見える景色しかない。
とりあえず三日坊主にならないことを祈ろう。
1月2日 火曜日 天気 曇り
今日も日記を書くわけだが、なんと僕の病室に新しく人が来るらしい。
先生曰く、とても臆病な人だから、優しく接してほしいらしい。
明日からは、日記のネタには困らなそうだ。
1月3日 水曜日 天気 曇り
昨日書いた通り、僕にルームメイトができた。
名前は『荒井 頼朝』というらしい。
頼朝というと、かの有名な源氏の頼朝と同じだなと思った。
本人に言ったら、「そんな偉人と比べないでください」と返された。
見た目は平均的な一般男性といったところで、 特徴といえるのは黒縁の眼鏡くらいか。
その後も、頼朝と世間話をしていたら、 時間はいつもより早く過ぎたように感じた。
明日は、何を話そうか。
1月4日 木曜日 天気 雨
今日は、雨だった。
雨は、ここ最近降っていなかったため、久しぶりだ。
雨の日は清々しい気持ちになれる。
今日は、頼朝はいなかった。
目覚めたら、先生の書き置きがあり、頼朝は検査だったそうだ。
折角、新しくルームメイトが来たというのに、これでは興ざめだった。
ラジオの天気予報ではしばらく快晴が続くそうだ。
一人しかいない病室は、面白くなかった。
今日はもう寝よう。
1月5日 金曜日 天気 晴れ
朝起きたとき、僕はまたかと思った。
先生に言っても、何も答えてくれない。
知っていて、僕に隠しているのは何となく分かる。
とりあえず、検査から帰ってきた頼朝と話をした。
頼朝は、どうやら昔から病院に通っていたらしく、かなりの古株だった。
僕は一年ほど前だから、まだ新人といったところのようで、頼朝は色々な病院での出来事を語ってくれた。
僕は、それを夢中で聞いていたのだが、頼朝は途中で笑って
「もう、僕は諦めた」と言った。
どうやら、現代でいう不治の病らしかった。
まだ出会ってから3日と経たないが、僕は少し悲しくなった。
1月6日 土曜日 天気 晴れ
今日は僕が検査の日だった。
検査といっても簡単なカウンセリングと血圧の測定や採血などだ。
ただ、少し疲れてしまった。
頼朝と話す気力は沸かず、この日記を書き終えたらすぐ寝よう。
おやすみなさい。
1月7日 日曜日 天気 晴れ
最近、思った。
僕はなんでこの病院にいるのだろうか。
特に健康障害もなく、何か精神疾患を持っている訳でもない。
この病院に長いこといるはずなのに
いつの間にか居て、いつの間にか過ごしている。
とても気持ちが悪い。
日記に書いていないと、心がざわつく。
胸の中から、何かが溢れてきそうで
今日はもう寝よう。
おやすみなさい。
1月8日 月曜日 天気 晴れ
今日は何だか体の調子が悪かった。
頭痛が周期的に襲ってくる感じ。
先生に鎮痛剤を打ってもらった。
痛みはスッとひいたが、眠気がすごい。
今日はもう寝よう。
最近、こんなばかりだ。
1月9日 火曜日 天気 曇り
今日も気分が悪かった。
頼朝が僕に大丈夫かと声をかけてくれた。
僕はつい頼朝に、うるさいと怒鳴ってしまった。
ああ、申し訳ないことをした。
気分も具合も悪くなった。
ラジオの天気予報では明日から雨が続くらしい。
最悪だ。
1月10日 水曜日 天気 雨
今日は豪雨だった。
今日は頼朝は検査ではなかった。
彼は寝ている。
俺も寝ようか。
どうすべきか。
自分の思考を書くというのは、意外と落ち着く。
とりあえず、久しぶりにストレス解消ができた。
あいつは悲しむかな。
いや、きっと喜ぶ。
なにせ、俺がそうだから。
1月13日 土曜日 天気 晴れ
僕は、どうしたんだろうか。
僕は、寝ていただけだ。
彼も、寝ていた。
日記を書くのも、億劫だ。
日記を見返すと、気づいた。
そう言うことかと気づいた。
無意識的に、避けていた現実を見た。
先生は、いない。
さよなら
1月14日 日曜日 天気 どうでもいい
俺が消えた。
閉じ籠った。
どうしてだ。
お前を閉じ込めていた偽善者は消した。
あいつは俺を知っていた。
でも、言わなかった。
今日のような日は俺がいると知っていた。
前歴も知っていた。
可哀想な彼も消した。
偽善者に利用されてしまった哀れな彼を消した、救った。
偽善者は、俺が偽善者の仲間になると信じていたようだ。
そんなことはないのに。
なぁ、返事を書こう。
俺は、僕を助けるためにここまでしたんだ。
これは、今から交換日記だ。
返事を書いて、話し合おう。
これが今から、俺と僕のコミュニケーションの方法だ。
明日はまだ雨だ。
だから明後日だ。明後日に返事をくれ。
待っているぞ。
おやすみなさい。
1月15日 月曜日
1月16日 火曜日 天気 晴れ
返事をすることにした。
結論は無理だ。
僕はもう、君という存在が疎ましい。
君が今もいると知っただけで、発狂しそうだ。
だから、君を消す。
狂人の君は、僕の行動を狂ったとでも思っているのかな。
でも、僕は正しい。
だから、一緒に虚に堕ちよう。
地獄でも、天国でもないところへ
さようなら