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その夜、高専の校舎は静まり返っていた。 他の術師や生徒は任務や外出で不在、明かりが点いているのは医務室と訓練場だけ。
星乃は、訓練場の片隅で、ひとり術式の調整をしていた。
星乃 絵梨
私の術式は、染料色創術式 (せんりょうそくしょうじゅつしき) 呪力で作り出した絵の具を使う術式。絵の具の色によって効果が違う。混ぜ合わせることも可能で基本は赤、青、黄色の三色。それと黒と白を作りだすことができ、他の色は混ぜ混ぜして作るんだ
呪具は、筆
⇧イメージ図
赤__あか 赤色の絵の具が触れたところが燃える。炎と同じ性質を持った色。量が多いほど威力は比例する。全身赤の絵の具を被ったなら、火だるま間違いなし。 青__あお 青色の絵の具が触れたところから水が出てくる。威力やスピード、量は自由に調節可能。その分絵の具の量が必要になる。 黄__き 黄色の絵の具が触れたところに雷が落ちる。絵の具の量が多いほど威力の高い雷落ちる仕組み。 紫__むらさき 赤と青を混ぜ合わせた絵の具。触れると毒に侵される。毒の強さは毎度のごとく、絵の具の量に比例する。 黒__くろ 黒色の絵の具に触れると飲み込まれる。吸収され、呪力へと変換。その後は術者の呪力へと流れる。 白__しろ 白色の絵の具に触れた傷口はたちまち癒える。回復力は絵の具の量に比例。 藍__あい 青と少量の黒を混ぜ合わせた絵の具。触れると徐々に呪力が抜け落ち、体が怠くなってくる。 緑__みどり 黄色と青を混ぜ合わせた絵の具。触れたところに植物が生え、その植物を操ることができる。 橙__だいだい 赤と黄色を混ぜ合わせた絵の具。触れると身体能力が上がる。
星乃 絵梨
五条悟
星乃 絵梨
星乃 絵梨
五条悟
五条悟
振り返ると、五条がコンビニ袋を片手に立っていた。
自然と笑顔になり、ペットボトルとお菓子を受け取る。 ベンチに腰掛けた五条は、しばらく黙って星乃の手元を眺めていたが、ふと口を開く。
五条悟
五条悟
星乃 絵梨
星乃は、手を止めて、無言だった。 五条は苦笑いを浮かべ、肩をすくめる。
五条悟
星乃 絵梨
星乃 絵梨
五条悟
五条悟
五条が、星乃に笑いかけると星乃は、ホッと安心した顔を見せた。
五条悟
五条悟
星乃 絵梨
思わず声が裏返り、星乃は慌てて 首を振った。
星乃 絵梨
五条悟
五条悟
五条の声がわずかに低くなる。心配そうな色も混じっていた。
星乃は一瞬ためらい、けれど視線を落としたまま、小さな声で告げる。
星乃 絵梨
星乃 絵梨
静まり返った訓練場に、その言葉だけが響いた。 星乃は耐えきれず視線を逸らし、五条は、しばし動けなかった。 胸の奥で、何かが一気に解ける音がした。
五条悟
五条悟
星乃 絵梨
蚊の鳴くような声。顔は真っ赤で、視線は床に落ちたまま。
短く笑ったその声は、驚きと安堵と、少しの後悔が混ざっていた。
次の瞬間、星乃の顎の下に指が添えられ、視線が強引に上げられる。
五条悟
星乃 絵梨
五条悟
星乃 絵梨
言い終える前に、五条は半歩踏み込み、距離を詰めた。 視界いっぱいに五条の長身と、低く落ちた声が降ってくる。
五条悟
星乃 絵梨
星乃の息が止まる。 五条の声は冗談めいていたけれど、その瞳の奥は冗談じゃなかった。
五条悟
五条悟
五条悟
星乃 絵梨
五条悟
星乃 絵梨
五条悟
耳元で囁かれた言葉に、心臓が跳ね上がる。 顔の熱が、引かなかった。 五条は、ゆっくりと身を離し、口元に軽い笑みを戻す。
そう言ってコンビニ袋を置き、何事もなかったかのように背を向けた。 けれど星乃の胸は、もう静まる気配を見せなかった。
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