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冥界の守護者

第2話 - バディ

1,014

2025年04月03日

#司類

#冬彰

#寧々えむ

#こは杏

#瑞類

あかまる🍓🐾໊

司

「やけに吹くなぁ…。イヤだイヤだ、夜の風は…。誰かがひっきりなしに叫んでるような気がしちゃう…。」

自分の頭の角に触れる仕草をした。

司

「あっ、まただ…。また少し伸びてる…。イヤだなぁ…まったく…。」

今オレのやっている劇は、とある黄鬼の話だ。

あらすじとしては、角が生えて1人前になった黄鬼が、親方の手下になって村を襲うことになる。しかし、心優しい黄鬼には中々その決心がつかない。そこで、友達の化け狐と共に「徴兵逃れ」の作戦を練るという話だ。

これは生前、オレが初めて舞台で主役を飾った時の演目で、思い入れ深いものだった。

司

「どうしてこんなもの振り回さなきゃならないんだろ…。こんなもので暴れるなんてとてもできないよ…。」

ルイ

…

司

(ルイは…よし！困惑しつつもちゃんと見てくれてるな！)

「」…黄鬼『』…狐〈〉…猟師 …語り手

司

「やっぱり…僕に村を襲うのは、無理だ…行きたくないよ…」

司

『だったら、行かなければいいじゃない。』

司

「でも…」

司

『今、決めて。私と逃げるか、それとも心まで鬼に変えて、人を殺しに行くか。』

司

「……」

司

「…分かった。僕、君と一緒に行くよ。」

司

『じゃあ決まり！私、荷物取ってくるから、貴方も荷物まとめておいてね。』

司

「えっ…荷物なんかいらないよ。今から行こうよ。」

司

『すぐだから大丈夫！行ってくるね！』

司

「あっ！待っ…」

司

…夕立でしょうか。突然、雨が降り始めました。その上、雷までなり始めて…気味の悪い夕暮れでした。

司

その時遠くから、「バーン」という音が聞こえてきました。

司

…銃声。雨音に交じって遠くから聞こえてきたのは、たしかに銃声でした。

司

「…遅いな、」

司

狐は待てども待てども、戻ってきません。

司

その時、黄鬼のいる洞窟に、何者かがやってきました。

司

〈動くな！！！〉

司

「人…？」

司

それは、銃を持った猟師でした。

司

〈お前……鬼か。まさかこんな所に住んでやがったとはな。撃ち殺してやるわ。〉

司

「ま、待ってください！僕は今から、ここを去ります。絶対みなさんに迷惑はかけませんから！」

司

〈迷惑をかけないだと？笑わせるな。鬼のくせに。〉

司

「本当です！だから、見逃して下さい！」

司

〈「見逃して下さい」か。確かさっきの化け狐も同じようなこと言ってやがったな…。〉

司

「化け狐……って、」

司

よく見ると、猟師が背負っている袋から、狐の尻尾が出ていました。

司

「………撃ったのか？」

司

〈あぁ、撃った。猟師が狐を撃って何が悪い？〉

司

「…っ」

司

…黄鬼は金棒を手に取り、そのまま、猟師の頭に金棒を振り下ろしました。

司

その後の黄鬼の暴れっぷりときたら…。いつも鬼たちの先頭に立って村を襲い、それはそれは恐れられておりました…。黄鬼は村を焼き、人を殺すたびに、ニヤリと笑ってこう言ったそうです。

司

「鬼が人を殺して何が悪い」と。

司

…と、一旦これでお終いだ！

司

どうだった？ルイ。一応、オレとしては一番自信のある演目だったんだが…

ルイ

…

司

ルイ？

ルイ

き…君、凄いね！

司

うぉっ？！

ルイ

演技力は当然、間のとり方や視線誘導、体の使い方も非常に興味深かったよ！

司

お、おぉ！喜んでもらえたんだな！

ルイ

うん！面白かった！

司

それは何よりだ！

ルイ

ねぇねぇ、黄鬼くんはこの後どうなったの？鬼に寿命はある？金棒ってどんなもの？

司

質問攻めだな…しかし！全て答えようではないか！

司

まず、この後黄鬼は1人の娘によって殺されてしまうんだ。

ルイ

えっ、黄鬼くん殺されちゃうの？

司

あぁ！実は、この後ある村を襲った時に…

数時間後

ルイ

はぁ、はぁ…ふふっ、こんなに話したのは久しぶりだな。

司

オレも、演劇の話が出来てとても楽しかったぞ！

ルイ

あぁ、僕も興味深い話が聞けて楽しかったよ。

ルイ

その金棒とやら、ちょっと作ってみたいねぇ

司

つ、作る？！作れるのか？

ルイ

僕は生前、とある発明家でね。金棒については教えてもらったし、作れると思うよ。

司

おぉ…！！発明家だったのか！

司

(あ、そうだ本題…！)

司

ルイっ！オレとバディを…

ルイ

すまないが、それは無理だ。

司

なっ、何ぃっ？！？！

司

こ、断るか？！大分仲良くなれたと思ったんだが！？

ルイ

だから無理なんだよ。君と話して…楽しかったから、

司

！

ルイ

だからこそ嫌だ。もう…失いたくない。

司

…どういう意味だ？

ルイ

…

ルイ

楽しかったよ。君と話せて良かった…素敵なショーをありがとう。

ルイ

君は天国に帰りなよ。

司

？！

司

お、オレが天国行きだったこと…何故分かった？

ルイ

魂見てたら分かるよ。君は僕らとは違う。

ルイ

君は本来ここにいるべきでは無い。だから、いるべき場所に帰るべきだ。

司

…それでも、ここで死神になると選んだのはオレだ。

司

オレは1度決めたことは絶対に曲げん。

ルイ

そうか…

ルイ

なら…君は、次の詠唱者が来るまで、ここでショーでもしていればいいさ。

司

！？

司

今のは……皮肉か？

ルイ

好きに捉えてくれて構わないよ。

司

…納得いかん！

ルイ

そうかい。

司

ルイ！待て！

ルイ

じゃあね。

バタンッ

司

……はぁ、

司

(むぅ……困った。頑なにバディを組むのは拒まれる…)

司

(何がそこまで…「失いたくない」って…ルイは、何に怖がってるんだ？)

庭園

司

うーーーむ…

アキト

何してんの？

司

あぁ、ルイを説得する方法を…

司

って、アキト？！いつの間に背後に？！

アキト

お前が唸り出した辺りから。

アキト

ルイさん、やっぱダメだったか？

司

あ、あぁ……仲良くなれたと思ったんだが、「バディにはならない」の一点張りだ。

アキト

ふぅん…そうか、

司

アキト、何か心当たりはないか？ルイは何を恐れている？

アキト

さぁ…俺も、詳しくは知らない。

アキト

詳しいのはトウヤだろうな。トウヤはルイさんの次に年長だから。

アキト

気になるなら聞いてみれば？

司

なるほど、トウヤか…ありがとう！

アキト

多分部屋にいると思う。ちゃんとノックしろよ。

司

あぁ、分かった！

トウヤの部屋

コンコン

トウヤ

どうぞ。

司

トウヤ、オレだ。少し時間いいだろうか？

トウヤ

あぁ、構わない。アキトに言われて来たのか？

司

あぁ。ルイのことについて聞きたい。

トウヤ

…そこに座ってくれ。

トウヤ

ルイさんとは話せたのか？

司

あぁ。だいぶ仲良くなれたと思ったんだが…それでも、バディにはならないと頑なでな。

司

ルイは「失いたくない」と言っていた…ルイは一体、何を恐れているんだ？

トウヤ

…

トウヤ

きっと…ルイさんは、自分から話さないだろうからな、

トウヤ

ルイさんのバディなら、聞く権利はある。俺の知っている範囲でになるが、話そう。

約1000年前

俺がまだ冥界に来たばかりで、バディもいない状態の頃だった。

ミズキ

トウヤくーん！たっだいま〜！

トウヤ

あ、アキヤマさん。お帰りなさい。

ミズキ

ミズキでいいってば！相変わらず真面目だね〜

アキヤマ･ミズキ…ルイさんの一番最初のバディで、守護者だった。

ルイ

ちょっと、ミズキ。さっき怪我してただろう？手当するよ。

ミズキ

舐めてたら治るから大丈夫〜

ルイ

はいはい、問答無用だよ。

ミズキ

ギャーー？！いきなり消毒ぶっかける？！

ミズキ

うぅっ、痛いよぉ！滲みるよぉ！

ルイ

ふふっ

ミズキ

何でそんな笑顔なの？！もー！ボクが痛がってるのがそんな面白い？

ルイ

うん♪

ミズキ

悪魔だぁぁ…

トウヤ

ふっ

ミズキ

あ、トウヤくんまで！

トウヤ

すみません。賑やかで楽しいと思って。

アキヤマさんは実力もたしかで、いつも明るく、楽しい人だった。

だけど、100年ほど経ったある日…

ルイ

っ、はぁ、はぁっ

トウヤ

ルイさん？！

ルイさんが1人で、物凄い大怪我を負って帰ってきた。

トウヤ

ルイさん！大丈夫ですか？俺が分かりますか？

ルイ

…んで、

トウヤ

え？

ルイ

なんで…なんで…っ

ルイ

ミズキ……っ！！

トウヤ

ミズキ…

トウヤ

そ、そういえば…アキヤマさんは…？

ルイ

……っ

トウヤ

あ…さ、先に手当しますね！

トウヤ

ルイさんは動かず、安静に…

ルイ

ミズキは…

ルイ

…

ルイ

もう……戻ってこない。

トウヤ

！

トウヤ

それは…どういう…？

ルイ

……

ルイ

堕ちたんだ、悪霊に。

トウヤ

！！

死神から悪霊になることを、「悪霊堕ち」という。

どうやらアキヤマさんは、「悪霊堕ち」してしまったようだった。

トウヤ

もしかして…その、怪我は…

ルイ

あぁ、ミズキと少し…やり合ってね。

ルイ

僕が……僕が絶対、止めなきゃいけなかったのに…！

ルイ

ごめん……悪霊、逃がしちゃった……

トウヤ

ルイさん…

司

悪霊堕ち…

司

ルイは…オレがそうなるのを恐れているということか？

トウヤ

それは…そうだな、それもあるかもしれないが、

トウヤ

もう少し…続きがあってな。

トウヤ

ルイさんはその後、計…7人の守護者とバディを組んだんだ。

トウヤ

でも……全員、悪霊に食べられて、消滅した。

司

！！

トウヤ

7人目のバディが消滅した日から…ルイさんは1人で戦うようになった。

トウヤ

バディを組みたがらない理由は、恐らくそれだろう。

トウヤ

正直…無理もないと思う。

司

…

司

(最初のバディは悪霊となり、その後の7人も全員消滅…)

司

(そうか……だから、「失いたくない」なのか…)

トウヤ

バディというのは、何よりも大切な存在だ。

トウヤ

俺も、アキトとバディになってから、やっとルイさんがどれほど辛いか分かった。

トウヤ

俺は、アキトが……と思うと…耐えられそうにない。

司

(そんな……大切な存在を、ルイは8回も…)

トウヤ

…俺が話せるのはここまでだ。

司

あぁ、ありがとう。トウヤ。

トウヤ

司に…どうか、頼みたい。

トウヤ

ルイさんのバディとして、ルイさんのことを守って欲しい。どうか…頼む。

司

…あぁ、頼まれた！

司

任せてくれ、トウヤ。やると決めたからには、必ずやり遂げてみせる。

司

それが、この天馬司という男だからな！

トウヤ

……とても、頼もしいな。

トウヤ

何か困ったことがあればいつでも教えてくれ。必ず力になろう。

司

あぁ、感謝する！

庭園

ルイ

…

ルイ

(いっその事…僕も消滅してしまえたらいいのに、)

ルイ

(みんな…僕を守って消滅した…7人も、)

ルイ

(ミズキの魂を葬送するまで…僕は、バディを組めない。)

ルイ

(なんで……どうして、ミズキは…)

司

ルイは花が好きなのか？

ルイ

？！

ルイ

…司くん、

司

トウヤから聞いたんだ。お前のバディのこと。

ルイ

！

司

お前はオレと組んで、オレが消滅することが怖いのか？

ルイ

……あぁ、そうだよ。

ルイ

どこまで聞いたのか分からないけど…ミズキのことは聞いたかい？

司

あぁ、聞いた。悪霊堕ちした初めてのバディだろう。

ルイ

うん…

ルイ

今までの僕の7人のバディはね、みんなミズキに食べられちゃったんだ。

司

！！

ルイ

ミズキが僕に何の恨みがあるのかは分からないけど…

ルイ

彼女は僕のバディをみんな、殺しにくる……

ルイ

だから、彼女の魂を葬送するまで、僕はバディを組めないんだ。

司

…そうか、

司

それが、お前がバディを拒む理由なんだな。

ルイ

…あぁ。

司

オレにも手伝わせてくれ。

ルイ

…？

司

そのミズキとやらの魂を葬送する手伝いをさせて欲しい。

ルイ

！

ルイ

それって…

司

あぁ、バディを組めという意味だ。

ルイ

こんな…理由まで話したのに、まだ諦めないのかい？！

司

オレは困っている人を見過ごすことも、諦めるということも出来ん性分でな。

司

オレはお前のバディになると決めたんだ。だから、お前も決めてくれんだろうか？

ルイ

……

ルイ

(また…また、きっと…死なせてしまう)

ルイ

(嫌だ…)

司

大丈夫。オレは絶対、お前の前から消えたりしない。

司

信じろ！オレは嘘をつかない男だからな！

ルイ

(…そんな、なんの根拠もない…)

ルイ

(でも…何故かな、信じたくなるのは…)

ルイ

(ううん、駄目…前もずっと、そうだったじゃないか。)

ルイ

(僕にもう、バディは…)

トンッ

ルイ

？！

ふいに、背中を誰かに押されたような気がした。

振り返ると当然、誰もいない。

ただ、押された背中は少し温かかった。

ルイ

……あぁ、そうか、

ルイ

ねぇ、司くん。

司

なんだ？

ルイ

本当に、君のことを信じていいのかい？

司

あぁ！！もちろん！

ルイ

…そうかい。

ルイ

これからよろしくね。僕の『守護者』くん。

司

！！！

司

あぁ！よろしく頼むぞ！ルイ！！

この選択は間違いだったかもしれない。

でも、僕は彼を信じたことに後悔はしないだろう。

きっと…信じて良かったと思える。

彼には、不思議とそう思わせてくれる力があった。

冥界の守護者

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一気読みするつもりがついつい読んでしまった…続きが気になりすぎて寝れませんどうしましょう😭

あかまる🍓🐾໊

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