テラーノベル
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置いていきやがって〜!
人通りの全く無い道端に、男の声が反響する。 雨に降られて友人に置いていかれ。
こんな叫びたくなる程散々な日は、今後二度と更新することはないだろう。 この街は、どこか監視されているようで気持ちが悪い。
さっさとこんなところからオサラバしてしまいたいものだ。 けれど、道がわからない。
どこを通って来たんだっけ。 …いや、俺が迷子なんじゃない!アイツらの方が迷子なんだ!
…アイツら、って…
名前が、出てこない。 顔も、俺が霧の向こうに立っているかのようにぼやけている。
そういえば、友人と合流してからの記憶が少し曖昧だ。 友人とこの街に遊びに来たことだけは覚えているが…
まあ、そんなことはどうだっていい。 ふと街の壁に目を落とすと、暴言がいくつも書き重ねられているのが見える。
そこには、それらを隠すように。
この街の誰かが傷付いてしまわないように。
ポスターを何重にもされて貼られていた。 …『ヒトガタ、でていけ』 ポスターの隙間から見えた、スプレーで乱雑に書かれた文字。
友人曰く、この街には「ヒトガタ」という奴が人間に紛れて住んでいるらしい。
ヒトガタ。スライムみたいな、液体みたいな、変なバケモノ。
でも、意識も自我も持っている。
昔っから、奴隷のように扱われてきた。
生き残る為に、人間のフリをした。
目や鼻。口や腕。
生き残るには、そうするしかなかった。
蔑まれて、苦しんで、悲しんで。
それでもある筈も無い希望へ手を伸ばそうとした。
そんな虚しくて可愛らしい種族。
小学校の頃授業でやったっきりだったっけ。
「アイツは危険だ」 って言われて、友人の近くにいることが出来なかった。 寂しかったな、あの時は。
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少し歩けば誰かには会えるだろう。 そこで道を聞けば良い。
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重い腰をあげ、足を進めていく。 コツ、コツ、と。 一歩ずつ。一歩ずつ。
慎重に。綱渡りをするように。
俺以外に人は居ない。 世界に一人だけで取り残されている気分だ。
暫く進み、とある十字路の辺りに来た時だった。 路地裏の奥から聞こえる、変な音。
まるで水音のような、内臓に細長い物を突っ込んで、掻き回しているような。 反吐が出そうな程に酷い音だった。
急がなければいけないんだ。 友人とはぐれてしまったのだから。
何処かで待っていてくれているかもしれない。 無視してでも――――…
進むべき、だったのだ。 しかし、勝てる訳がなかった。 好奇心に。
「好奇心は猫をも殺す」?そんな言葉、俺の辞書にはない。 吸い寄せられるように、奥の方へ飲まれていく。
暗い。
陽の光が入って来ない。
寒い。
入るんじゃなかった。
後悔をしつつも最奥へ辿り着く。
そこには、人間がいた。
いや、訂正しよう。
人間ではなかった。
顔面の左っ側がくり抜かれているかのように、そこには何もない。
目も、肉も、骨すらも。
顔が欠けている。
ドロドロとした深緑の液体が、その周りへと纏わりついている。
少し蠢いたかと思えば、それはやがて集まって人間の形を成していく。
気味が悪い。そう感じた。 背筋を指先でそっ、と撫でられているような、そんな感じの悪さ。
けれど、何処か美しかった。 森林の奥深くの様な、深緑色のそれがゆったりと人の輪郭を成していく。
深緑の髪に映える、深紅の瞳が見え始める。 思わず、言葉を失ってしまった。
…美しい…? 言葉を、失った? 何故そんなことを思ったのかなんて俺にもわからない。
???
ソイツと目が合う。
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反射的に、声が喉から溢れ出してしまった。
目を見開き、彼は俺の事をじっと見つめる。
怯えたように、彼の瞳がわずかに揺れた。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
叫び声が街中にこだまする。
片手で数えられるぐらいしか人の居ないこの街では、 返答してくれる奴なんて誰も居る訳がなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー スクロールお疲れ様でした。 どうも、トゲナシトゲアリサボサボです。 1章、短すぎたでしょうか…? 小説を書くのは占いツクールで黒歴史を生み出して以来ですので、 小説のしの字すらわからないんですよ。
楽しんでいただけたなら幸いです。 それでは、またいつか。
コメント
2件
続きが楽しみです😊