奇跡の歌声

ガチャ

このミサンガ…

なぜかココは、そのミサンガを咥えて俺の左腕に押し付けてきた。

俺はココに言われた通り左腕につけてみた。

ミサンガか…ただのガラクタだと思ってたけど、意外と悪くないかも。

"色彩…良い題名ですね。笑"

急に、

声なんて　聞こえないのに

俺にそう話しかける声が、

記憶が

頭の中に、流れてきた。

俺より前を歩いていて、 後ろ姿で顔が見えない。

…ガサガサ言っててうまく聞こえないのに 何故か会話は分かるし、 歌声だけは、はっきり聴こえる。

その歌声は、Riruと一緒で。

…これは、

…俺の、記憶だ。

全て、俺の記憶なんだ。 今までのも。

俺は確かに、"生きていた。"

自然と涙が溢れていた。

涙なんて出たのいつぶりだろうか。

…Riruの中の人に会えなくてもいい。

この人を、思い出さなければ。

俺の記憶の中で、『色彩』という歌を歌うこの人を。

名前を、声を、顔を。

たとえこの人が、俺を覚えていなくても。

俺の記憶と Riruの歌声と、このミサンガを頼りに、

全てを、思い出さなければ────

思い出さなければ。

そう強く決心したその日から俺は、左手首にミサンガを付けている。 バレたらめんどいから学校ではよく外すけど。

……このミサンガは、俺がプレゼントしたもの。

そんな大切なことを今まで忘れてた。

だからこそ、早くあの人を思い出さないと。

振り返ってみれば、歌詞、メロディー…

全て、あの人の歌声とともに流れて来るんだ。

前の席で飯を頬張る治に聞かれる。

俺の好きな人である○○が、

俺の記憶に出てくるRiruと重なるのは

何故だろう。

【屋上】

物凄く、

胸騒ぎがする。

名前や顔は、まだ思い出せない。

けれど、

どんどん鮮明になっていく記憶。

手がかりは、

彼女の歌声と、ミサンガと────

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