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渋谷大

学校に出る怪異は大人に興味ねーこと多いけど

渋谷大

今回ばかりは無視されてやれねーんだ

渋谷大

ちょっと顔貸してくれよ、鏡の怪異

言葉に返答はない

取り残されたように鏡の中に立ち尽くした結花の鏡像は

信じられないものを見るような目で

意識を手放した結花を見下ろしていた

結花……

あぁ、なんてことだ

せっかく世界を嫌っている子を見つけたのに

久しぶりのチャンスだったのに

せめて言葉にし終えてくれていたら……

渋谷大

……徹底的に無視の方向?

渋谷大

学校の怪異ってなんでそんなに大人が嫌いかね

渋谷大

俺らだって10年前は学生だったんだから

渋谷大

もうちょっとくらい相手しても

……るせぇな

渋谷大

あ?

成長の止まった大人なんて

価値もねぇのに構うわけねぇだろ

渋谷大

……ほぉーん

渋谷大

さっきまでとずいぶん態度が違うじゃねーか

渋谷大

この子に見られる心配がなくなったから

渋谷大

素に戻ったか?

渋谷大

今のその顔、合わせ鏡で見てみろよ

渋谷大

とてもじゃねーけど結花ちゃんには

うるせぇっつったろ

自分がどんなことしたのか分かってんのか

50年だ

僕はここで、50年待ったんだ!

やっと力を取り戻して、もう少しで!

もう少しで外に出られるはずだったんだ!!

そいつの体で!!

それをお前が!!

渋谷大

つまりアレかお前

渋谷大

お前はこの鏡に封印されてるかなんかで

渋谷大

なんとかそれなりに力が戻ったから

渋谷大

この子を丸め込んで、利用して

渋谷大

この子の意識閉じ込める代わりに

渋谷大

お前が体を使おうとしてた……ってことかな

渋谷大

やり方えっぐいな

そいつを返せ、そいつを返せ!!

そいつが自分で望んだんだ!

今の苦しみから逃れるためならここに入ると!!

なら抜け殻を利用してなにが悪い!!

もう限界なんだ、耐えられない!

叫びと後悔と血肉が喰いたい!!

したたるヨダレと切なさが、お前に分かるか!!

渋谷大

んなもん分かりたくもねぇや

渋谷大

それより、ちょっと聞きたいんだけどよ

渋谷大

お前、50年も大人しくしてたのに

渋谷大

なんで急に動き出した?

そんなこと、お前になんの関係が……!

渋谷大

答えとけよ

渋谷大

それ次第じゃお前にボーナスだ

渋谷大

ご褒美欲しけりゃ答えてみろ

……ッ!!

――好きなことをやってみろと言われたんだ

渋谷大

力を分けてやるからって?

ッ、なんで知ってる!

やっぱりお前、アイツらとなにか関係が……!

渋谷大

アイツら?

渋谷大

おい、一人じゃねぇのか

……アイツらの身内じゃないのか

渋谷大

は?

奴ら、ほとんど……混ざり合ってる状態で

それに、――見えにくいんだけど

僕は鏡だ、それでも概要くらい映せる

アイツらは二つのなにかがくっついて動いてる

その片方が

お前と同じ白い髪なのは、見えた

渋谷はその瞬間、呼吸を忘れた

渋谷大

白い、髪

渋谷大

小柄な女の子だったか

詳しい容姿は見えなかった

だけど、髪色だけはなんとか……ッ!?

鏡像の言葉は、息をのむようにせき止められる

記憶を辿りながら話していたため気付いていなかったが

渋谷の表情は形容しがたく

感極まった悲哀の表情にも

安堵がまじる歓喜の表情にも見え、ただ

その目だけは、標的を見つけた獣の獰猛さを見せていた

渋谷大

――やっと見つけた

わなないた唇から、震えた声が落ちる

しかしその唇は次の瞬間に噛みしめられ

次に鏡像に向き直った目は、慈愛と表現すべき色をしていた

渋谷大

来てよかったよ

渋谷大

少なくとも霊障を追ってれば

渋谷大

手がかりは掴めそうだ

つい先ほど、自分の獲物を取り上げた異色の男が

心底からの感謝を伝える渋谷の言葉に、鏡像は戸惑いを隠せない

自分にとっての味方か、敵か

それすら曖昧になり、混乱を起こしているようだった

そんな鏡像に、渋谷はやはり優しい笑みで声をかける

渋谷大

――約束だ

渋谷大

封印されてるってんなら

渋谷大

お前をそこから出してやるよ

……え?

言うが早いか、渋谷の拳が鏡を叩き割る

血と共に床に落ちる鏡の破片

その向こう側に、焦げたようにほころび始めた

一枚の札が貼り付けられていた

――ッッッ!!

血だ!血だっ!!血だぁっ!!

早く!早くそれを剥がせ!!

早く僕に血を……!!

渋谷大

あせんなよ

渋谷大

50年も待ったわりに堪え性がねぇな

渋谷大

……密教の札、この筆跡

渋谷大

――ははっ

渋谷大

なるほど、それじゃ俺らが後始末役で妥当だ

渋谷大

忘れてるのかもだし、あとでちゃんと報告だな

渋谷大

……さぁ、お待ちかねの開封だ

渋谷大

久しぶりのシャバの空気

渋谷大

気持ちよくって目ぇ回すなよ!!

合図と同時に、ジッポの火が札を焼く

その瞬間から、鏡の破片からは黒い物がコールタールのように滲み出し

札が焼き尽くされると同時に、津波のように膨れ上がった

黒いもの

っは、ははっ!!

黒いもの

あははははっ!!

ぞるりと人に成ったそれは、黒い塊のまま高らかに笑う

それを見て、渋谷は血まみれの手を差し出した

渋谷大

テンション高ぇな、鏡の怪異

渋谷大

血が欲しいんだろ

渋谷大

俺のでよけりゃくれてやる

渋谷大

さっさと……――っ!

言葉の終わりを待たず、黒い塊が半液体となって渋谷の上に降りかかる

それを一瞬ぎょっとした顔で見たものの

渋谷は粘つくそれを一纏めに掴み

鏡の飾られていた側の壁に投げ飛ばした

黒いもの

ッ、ガァアアアアアアアッ!?

渋谷大

悪いな!

渋谷大

さすがに、人間の血肉を喰うって言ってる奴に

渋谷大

これ以上のご褒美はやれねぇんだ!

咆吼するその開口部に、血まみれの手を突っ込む

渋谷大

そこ、今朝の間に悟が拘束結界作ってくれててな

渋谷大

大量の札で作られてるから、藻掻くのも無理だろ

渋谷大

全身が糸でグルグル巻きにされてるみてぇなさ!

渋谷大

いくら力が戻っても、50年のブランク

渋谷大

餓死寸前の空腹が急に満腹になりゃ消化不良を起こす

渋谷大

しかも栄養たっぷり、霊能者様の血だ!

渋谷大

しっかり飲んでパンクしろよ!!

黒いもの

ぐ、ゥううう……ッ!!

まるで腕全体がスライムにまみれるような気持ち悪さを覚えながら

鏡の破片でさらに傷を増やし、出血量を上げていく

やがて黒い塊は膨張を始めると共に結界によって締め上げられ

まるで風船が破裂するように、あっけなくはじけ飛んだ

渋谷大

ッハ、……はぁ

体に付着した粘体が、サラサラと砂になって剥がれていく感覚

それに安堵するより先に傷口を強く締めつけ

渋谷は疲れ切った表情で廊下に座り込んだ

渋谷大

……最近、怪我してばっかだなぁ

渋谷大

姉ちゃんに会えたら、怒られるかな

肩から流れ落ちた白い髪に、思わず頬が緩む

自分に酷似した能力と、白い髪

それだけで姉の関与を確信し、ほんの少し脱力した

渋谷大

なにがあって、なんでこんなことしてんのか

渋谷大

まだなんにも分かんねぇけど

渋谷大

ようやく姉ちゃんの背中が見えた

渋谷大

――絶対捕まえる

痛む拳を握りながらも、その表情は柔らかい

しかし少し離れた場所から香る汚臭に顔を上げ

さてと小さく口を開いた

渋谷大

俺のほうは無事にカタヅいたけど

渋谷大

あっちはまだ頑張ってんのかな

カタヅケ屋霊異記【完結】

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コメント

21

ユーザー
ユーザー

…あ待って全部読んできちゃった!!! すごいな…よく作り込まれてるっていうか、設定がしっかりしてて尊敬…✨ キャラが自立してるっていうか、とても井之上さんが1人で喋らせてるとは考えられない…(メタ発言許して) 更新待ってます!!"(ノ*>∀<)ノ

ユーザー

良かったね、大ちゃん...!!!

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