私は、昔から意気地なしだ
時雨
皆んなが平然とやっていることが、私にはどうにもできなくて
でも、大抵のことは傍から見ればできているのだ
理由は簡単で、できていることが個人ですることだからだ
時雨
今年から晴れて高校に上がった私は、我ながら頭の良いところに入った
でも、それは間違いだった気もした
時雨
時雨
この子なら話せそう、がなかった
何か頼まれれば断れないし、時折生きている意味がわからなくなる
その場にいるのが億劫になる
時雨
どうしようもなく悩んでいた
こんなでは社会に出れない
時雨
学校からの帰り道
ほしいのは、ほんのちょっとの勇気
時雨
ガチャ
時雨
家に入った途端、肩の力が抜けていった
時雨
私の家には、帰ってくると毎回人がいません
理由は別に両親が死んだとか、二人揃って海外赴任とかでもない
単に共働きで家にほとんどいないというだけだ
時雨
時雨
そう自分に押し付けて、あたかもそれが正しいかのようにして思い込んだ
時雨
何か音がすると思えば、付けっぱなしのテレビだった
消すのを忘れて家を出ていたらしい
時雨
時雨
時雨
私は鞄をその辺に置くと、床に座ってリモコンを手に取った
今の時間帯はちょうど夕方
ニュースやら子供向けアニメがやっている時間帯だ
時雨
私は小さな頃からテレビっ子だ
アニメでもニュースでもバラエティでも何でも見る
時雨
時雨
私はじっとテレビを眺めた
テレビは何もしなくても音がする
必ず、誰かが話している
私に向けられていなくとも、人の声を聞くだけでなんだか安心できた
時雨
眠気が襲ってくる中、私が最後に見たニュースは高校サッカーのトピックだった
ガシャン!
時雨
時雨
いつの間にか居眠りをしてしまっていた私
台所の方からの物音で跳ね起きた
時雨
時間は五時を回ったくらい
親はもっと遅い時間に帰ってくるはずだ
だから、今この家にいるのは私だけ
時雨
時雨
私は部屋の隅にあったコロコロを持って、台所へ向かうことにした
なぜ台所から音がしたんだろうか
もしかして、私が帰ってきた時から居たのかな……
時雨
クロ
時雨
時雨
私が台所を見ると、そこにはうちの飼い猫であるクロが居た
どうやら強盗ではなかったらしい
時雨
時雨
台所を見回すと、窓が開いていることに気がついた
がっつり開いていたので、普通に不審者が入ってきてもおかしくはなかった
時雨
時雨
私は皿の破片が散った床を見た
時雨
クロ
時雨
時雨
クロを見ると、何か拾い食いしてきたのか口元が汚れていた
時雨
時雨
クロ
時雨
クロ
クロは消え入るような声で呟くと、そっぽを向いた
時雨
実際、何か悪いものを食べていないか心配になる
でも私がなんと言おうと、クロは変わらない
そう、私とクロは家族だ
クロが幼い頃からの仲なのに、何故か仲良くできなかった
私が友好的な態度で接しても、クロは知らんぷり
なんなら怒られる
時雨
力なく笑った
クロ
中々噛み合わないクロと私
でも、クロが後に私の運命のキーパーソンとなる
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