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あれからもクロは毎日のように口に何かを付けて帰ってくるようになった
そして、決まって似たようなものを付けて姿を表す
家に返ってくるとたまに居るときもあるのに、同じような時間帯に帰ってくる
これはきっと、何かクロの身におきているのてはないだろうか
時雨
学校から帰ってきた私は、今日も誰も居ない家に足を踏み入れた
何も変わらない、何も無い日々
そんなものにはとっくに明け暮れているのに
時雨
時雨
時刻は午後六時くらいを回る
気がつけばもうそんな時間になっていた
そんな時、とある事に気がついた
時雨
私は思わず目を見開いた
クロは暗くなってくると大抵帰ってくるものなのに、今日は中々帰ってこない
本当に最近はどうしてしまったんだ
時雨
あまり仲良くないとはいえど、クロは帰ってくると何らかの形で姿を表す
恐らく帰ってきたよ、という報告だろう
時雨
時雨
一応私の良き話し相手だ
言葉は通じ合わなくとも、一緒には居てくれる
私は夕焼けに染まる外へと飛び出した
時雨
時雨
外に飛び出して十数分
クロの行きそうな場所を全て回ったが見つからない
時雨
時雨
簡単に見つかるものだと思っていたので、内心怖いくらい焦っていた
時雨
時雨
私は家に一度帰ろうと思い、曲がり角を曲がる
時雨
クロ
時雨
少し遠くに見える古びた空き家
そこの塀にいる黒い毛玉に金色の目
私は確信していた
あれはクロだ
時雨
私は柄にもなく声を上げてその方へ走った
もう全力疾走して疲れていたが、そんなの忘れていた
……が
クロ
時雨
近くまで行ったとき、私は思わず言葉を飲んだ
何故かと言うと、クロの傍にはやけに親しげな男の子がいたからだ
千切豹馬
時雨
思わず目が合って、どうしたらいいかわからなくなる
もっと周りを見ておくんだった
クロには悪いが、見つけたとて他人のフリをするのが最適
しかし声を出してしまった以上、自分とクロの関係を否定することはできない
千切豹馬
時雨
気がつけば鼓動が速くなっていた
自分でも緊張しているのが手に取るようにわかる
ジャージ姿の彼には、胸の辺りに「羅古捨実業高校」の文字が見えた
時雨
羅古捨実業は近くにある高校で、最近はサッカーが盛り上がってるんだとか
時雨
時雨
次々に疑問が浮かぶものの、どうにも言えそうにない
クロ
時雨
千切豹馬
千切豹馬
時雨
……
ダメだ、上手く喋れそうにない
まず他校の知りもしない人と話すのが最初から高難易度過ぎる
見る限り、きっと私とは違う世界線の人だ
時雨
時雨
時雨
クロ
ここはクロを連れて帰るのが一番だ
一番不自然ではないし、相手もこれを望んでいるはず
時雨
私は塀の上のクロに向かって腕を伸ばした
しかしその瞬間、クロの目つきが変わった
クロ
時雨
なんということだろう
この状況で不機嫌なクロ
時雨
クロ
時雨
クロ
千切豹馬
時雨
千切豹馬
時雨
千切豹馬
変なの、と言わんばかりに少年は笑った
私は至って真面目だった
傍から見ると、飼い主と猫が仲悪いのは面白いんだろうか
時雨
千切豹馬
千切豹馬
その口ぶりから、クロは彼の前ではかなり穏やかなことが伺える
時雨
時雨
でも不思議と悪い気はしなかった
地味に引っ掻かれた手をなかったことにすると
珍しく、私も少し笑った