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第十二話 たった一人で戦い続けた青
遊ぼう、遊ぼう
遊ぼうよ、だいすきな――
きんとき
きんときが向けた弓の先には
緑の服を着た男が立っていた
見ればその手には
何も持っていないようだ
しかしきんときは
警戒を緩めなかった
きんとき
きんとき
きんときは弓を下すことなく
問いかけた
すると緑の服の男は
手を上げると
がりがりと後頭部を掻いた
?
?
?
きんとき
?
?
きんとき
きんとき
きんとき
緑の服の男は
きょとんとすると――
ニヤッと笑った
その瞬間
きんときは矢を放った
緑の服の男は
重心をずらして
その矢を避けると
きんときに向かって走り出した
きんときはすぐさま
次の矢を準備しつつ
逃げ出した
きんとき
きんとき
逃げていたきんときの背に
強い衝撃が走って
きんときは地面に倒れた
ずしりと背に重力を感じて
なんとか顔を上げれば
その背には追ってきていた
緑の服の男が乗っていた
?
きんとき
きんとき
きんとき
?
?
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
シャークんはもう
隠すつもりもないのか
目を黒くして
きんときをにまにまと
見つめていた
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
シャークんは
きんときの上から退くと
きんときは腰を抑えながら
起き上がった
きんとき
どうせ走って逃げたところで
人狼の脚力の前では無意味だ
せめて寝首をかかれないように
きんときはシャークんを
強く警戒しながら
拠点へと歩き出した
しかし拠点へ戻る最中――
きんとき達は
スケルトンの群れに
出くわしてしまった
シャークん
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
シャークん
シャークんはスケルトンの
大群を前にして笑う
きんときは呑気な奴だと
呆れた視線を向けた
シャークん
そのシャークんの微笑みに
きんときの脳裏に
既視感が過った
きんとき
シャークん
きんとき
今はそんな事を
気にしている場合ではない
きんときは斧を構え
シャークんは弓を構えた
シャークん
きんとき
二人はスケルトンの 大群を蹴散らした
その戦闘の最中――
きんときは思い出していた
それは遠い過去の記憶――
――汝は人狼なりや?
学生たちの間で流行した
役を決めて
話をするだけの遊戯
その中できんときは
奇跡を目の当たりにした
いつの間にか
本当に最初から
そこに存在していたように
彼はいた
シャークん
きんとき
シャークん
どさっと地面に寝転んだ
シャークんに向かって
きんときは壊れた斧を
投げ捨てながら走り出す
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんときはシャークんの
両肩を掴んで
上半身を起こすと
ガクガクと揺さぶった
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
頭に強い痛みが走って
きんときは頭を抱えた
いきなり頭を抱えたきんときに
シャークんは慌てて
倒れそうになった
きんときを支えた
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんときは吐き気を催すと
きんとき
こみ上げてきたものを
その場に嘔吐した
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
――――
罪と罰としよう
――――
記憶を消そう
―――――
また逢う日まで俺は……
――――
いつか……
―――
また六人で……
神の審判が下される時――
罰が下る
空から降ってきた三叉槍は
きんときの胸を貫いていた――
シャークんはその光景に
目を瞠る
きんときの身体は
重力に従って
地面に倒れた
ドサッ――
シャークん
シャークんが慌てて
きんときの体を起こすと
きんときの胸を貫いていた
三叉槍は
光の粒となって消えた
シャークん
シャークん
きんとき
――失敗した
すべてを思い出した
きんとき
咳き込むと血を吐いた
きんとき
きんとき
きんとき
きんとき
―――――
そう言ってシャークんは
独りここまで
離れてくれたのに
きんとき
きんとき
きんときは失意の最中
徐々に瞼を下ろしていく
きんとき
―――
脳裏に浮かんだ
親友の笑顔に
きんときは眼を見開いた
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
シャークん
きんとき
きんとき
シャークん
シャークん
――Nakamuとシャークんを
出会わせるわけにはいかない
きんときと同じように
Nakamuが シャークんと出会えば
Nakamuも罰が 下る可能性がある
きんとき
きんとき
きんとき
きんときは痛む体に 鞭を打って
ポケットに入っていた
サバイバルナイフを投げ捨てた
何も遺さず逝けば
Nakamuがどうなって しまうかわからない
きんときの行方が 知れなくなって
希望を見出せず
絶望してしまう かもしれない
このサバイバルナイフは
Nakamuに希望を 持たせるためだった
それからきんときは
息も絶え絶えに
シャークんの腕を掴む
シャークんの服に
じわりときんときの血が滲む
きんとき
シャークん
シャークん
きんとき
慌てふためくシャークんに
きんときは僅かに
笑みを浮かべた
いざと言う時の土壇場で
パニックになって
何もできなくなるのが
彼らしい――
――貫かれた傷が痛い
きんとき
口を動かすが声が出ない
何も覚えていないはずの シャークんが
きんときの命の危機に
こんなに慌ててくれている
――息を吸えない
シャークん
苦しい
シャークん
酷く寒い
シャークん
体が冷えていく
きんとき
きんとき
きんとき
シャークん
それでも
こんな事になるとは思わなかった
まさか
まさか自分が足をひっぱるなんて
一番遠くにいるのは
いつも赤だと思っていたのに
――ごめん……
みんな、ごめん
ごめんな
Nakamu――
アオォ―――……ン
きんときが息絶えた時
深い森に 狼の遠吠えが響き渡った
?
?
シャークんは
きんときの遺体を抱えて
訳もわからず逃げていた
何から逃げれば いいのかもわからない
ただただシャークんは
きんときの遺言に従い
深い森から逃げ出した
きんときを置いては いけなかった
彼はきっと
何か大切な事を
伝えようとしていた
シャークんはそれを
聞き損なった
シャークん
シャークん
シャークん
孤独を過ごした
深い森を捨て
シャークんはどこなのかも
わからない山へやってきた
シャークん
もうシャークんが過ごした
深い森への帰り方すら
わからない
シャークんはそこにあった
一本の若い木の下に
きんときを埋めた
シャークんはその場で
きんときを埋めた場所から
空を見上げる
シャークん
シャークん
空から降ってきた
あの三叉槍は
なぜああも的確に
きんときを貫いたの だろうか――?