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審神者は本丸の最奥に位置する 避難場所、通称奥宮へ辿り着く 稲葉江は審神者を腕から下ろす

こんのすけ

ここならば結界の守りも最大限になります!

審神者

奥宮……入る日が来るなんて……

乱藤四郎

ボク、外で警備しておくよ

こんのすけ

分かりました
他の皆さんにも来ていただけるよう通信で呼びかけます!

乱藤四郎

稲葉は主をよろしく

稲葉江

ああ……

こんのすけと乱藤四郎を見送ると、稲葉江は奥宮の頑丈な扉を閉める

審神者

稲葉さん……

稲葉江

震えて……いるな

審神者

こんな事になるなんて…

稲葉江

………………

審神者

何があってもこの子を
産みたい……
だから今死ぬ訳には…

稲葉江

ああ……その通りだ

稲葉江は審神者の肩を抱く

稲葉江

我の命に代えても……
必ずお前を……

審神者

ううん!稲葉さんも一緒がいいです

稲葉江

…………

審神者

約束、してくれましたよね?

審神者

一人にしないって……

稲葉江

っ……

審神者

必ず生き延びよう
稲葉さん

稲葉江

…………ああ

二人は座敷の片隅で強く抱き合う

こんのすけ

《あるじさま!》

ふと、審神者の持っている携帯端末に通信が入る

審神者

どうしたの?こんのすけ

こんのすけ

《敵の動きは本丸全体を囲みながら徐々に結界を攻撃しています》

こんのすけ

《本丸に残った刀剣男士の皆さんが健闘してくださっていますが、何ぶん敵の数が多すぎます!》

こんのすけ

《結界が破れるまで長くて二十分弱……!》

審神者

二十分……

こんのすけ

《それまでに何としてでも敵を殲滅しなくては……!》

審神者

みんな……頼んだよ

こんのすけ

《稲葉江さん、あるじさまを引き続きよろしくお願いします!》

稲葉江

ああ……

通信はそこで途絶えた

審神者

皆……頑張って……

審神者の身体が震え、涙を堪えている 主として、戦えぬ者として刀剣男士達の無事を祈る

稲葉江

…………

ふと、稲葉江は審神者の名を呼ぶ

稲葉江

暫し……耳を貸せ

審神者

はい……?

稲葉江

近頃、夢見が悪いと我は言ったな

審神者

はい……それが?

稲葉江

…………その夢はここ暫くずっと我の瞼に映り続けている

稲葉江

今この光景を目にして
確信した

稲葉江

予知夢……だとな

審神者

予知、夢…

稲葉江

ああ…この家屋が崩れ去り……

審神者

…………

稲葉江

お前が…………

審神者

そ……そんな

稲葉江

幻に惑わされるなどと考えぬ様にしていたが……

稲葉江

まさか……本当にこのような事になるとはな

審神者

稲葉さん……だからあんなに辛そうに……

稲葉江

お前を怯えさせぬよう黙っていたが……時は遅かった、か……

稲葉江

だが、今は我が居る

審神者

はい

稲葉江

必ず……お前を護る

審神者

はい……信じています

審神者

何があっても……私を……

その瞬間 轟音が鳴り響く

審神者

っ……え!?まさか……!

稲葉江

こんなにも早いとは……!

審神者

結界がっ……!

審神者

みんなは……!

そう言って立ち上がろうとする審神者の腕を、稲葉江が掴む

稲葉江

お前が表へ出てどうする気だ!

審神者

でも……!

稲葉江

信じる、と言ったろ

稲葉江

刀達を……

審神者

ええ……

稲葉江

今はお前の身の安全が
最重要だ
だから落ち着け

審神者

はい……

こんのすけ

《あるじさま!》

審神者

こんのすけ!今、結界が……

こんのすけ

《はい……これ程敵の動きが活発なのは初めてです》

こんのすけ

《しかしそれと同時に、少しばかり様子がおかしいのです》

審神者

どういうこと……?

こんのすけ

《それが……敵は攻撃するというより、何かを探しているようなのです》

審神者

え?

こんのすけ

《本丸の建物内にいち早く侵入しようと刀剣男士の皆さんには見向きもしないのです》

審神者

何かを……探す……

審神者

まさか……!

稲葉江

ああ……ややもすると

稲葉江

狙いはお前……
審神者だろう

こんのすけ

《なっ……なんですって!》

稲葉江

あくまで我らの憶測に過ぎぬが……

審神者

そうとしか……思えない

審神者

だって……

こんのすけ

《奥宮に敵が近づかぬよう皆さんに支持します!》

こんのすけ

《あるじさまを必ずやお守りします!》

審神者

うん……!

通信が再び切れ、座敷に静寂が訪れる

審神者

敵の狙いは……この子

そう言って審神者は腹部に手を当てる

審神者

この襲撃のタイミング…
そうとしか思えない…!
卑劣な奴ら……!

稲葉江

下衆共が…お前には指一本触れさせはしない……!

二人は固く手を握る 遠くに聞こえていた筈の 惨憺(さんたん)たる音が近づく

稲葉江

時は近い……!

審神者

稲葉さんっ……!

稲葉江

っ……!来るぞ!

奥宮の戸が強い衝撃に軋み 戸の向こうから何本もの刃が刺さる 稲葉江はゆっくりと刀に手を掛ける

稲葉江

この悪夢…我が刃で断ち切ってくれる!

審神者

はい……

いよいよ戸が限界に達する 亀裂の向こうから、鬼共の眼光が覗く

審神者

……稲葉江

審神者

戦いなさい

稲葉江

承知……!

奥宮になだれ込む醜い鬼共 稲葉江の背が、遠くなる 美しい刀の一閃が、鬼共の身体に走る

審神者

稲葉さん……

審神者は稲葉江の戦う姿を、凛として見守る 猛々しく刃を振るう愛しい人 審神者は今や少しの怯えもない

こんのすけ

《あるじさま!今そちらに援軍を送ります!》

審神者

うん

審神者

ここは稲葉さんが持ちこたえてる
急いで!

こんのすけ

《はい!》

幾重にも及ぶ刃の舞踏は激しさを増す 稲葉江の身体に傷が重なる 初陣から帰ってきた姿と重なる 今やそこで狼狽することは無い

稲葉江

はぁあああ!!

稲葉江の掛け声と共に銀色の一閃 が最後の鬼を斬りつける 稲葉江の荒い息の他に 物音がしなくなった

審神者

稲葉さんっ……!

審神者

やりましたね!

稲葉江

敵の気配はまだ遠くに感じるが……

稲葉江

一先ずはやり過ごしたか…

審神者

良かった……

張り詰めていた緊張の糸が解れる その時だ

審神者

え……

背後の壁が崩れる 禍々しい刃が──審神者に迫る

審神者

っ……!!

その瞬間 稲葉江の影が、審神者を覆った

稲葉江

ぐっ……!

審神者

嘘……

審神者

稲葉、さん……?

稲葉江の左胸を、刃が貫いていた

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