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第1話 - あ

2023年10月24日

#恋愛

結城　真矢

タツキ

さく、ちょっといいか？

タツキ

婚約者のマリカのことで、相談があるんだ

タツキ

女の立場から、どう思うか教えてほしい

サクラコ

どうしたのよたーちゃん

タツキ

最近、あいつの束縛が激しいんだ

タツキ

俺がちょっとでも仕事で遅くなると浮気を疑い、

タツキ

仕事関係の女性と電話やメールで話してると浮気を疑い、

タツキ

俺の持ち物を探って、女性の名刺を探し出しては

タツキ

浮気を疑って、問い詰めてくる

タツキ

自分で買った時計も、女からのプレゼントじゃないかと

タツキ

もうしつこいんだ…

サクラコ

あらら、それは面倒臭いねぇ…

サクラコ

それだけ愛されてるってことなんだろうけど

タツキ

果ては勝手に俺のスマホを調べてたんだ

タツキ

俺もうおかしくなりそうだよ…！

サクラコ

まぁ、たーちゃんは妹の私から見ても

サクラコ

イケメンで稼いでてモテるから、浮気が心配なのも

サクラコ

ちょっとはわかるけどさｗ

タツキ

おいおい、さくまで何言ってんだよ！

タツキ

俺は浮気なんてしない、一途な男だっての！

サクラコ

はいはい、わかってるよｗ

サクラコ

高校の頃、付き合ってた彼女に重いって言われて

サクラコ

振られて泣いてたくらいだしねーｗｗ

タツキ

おい、そのことは忘れろっての！！

サクラコ

でも、束縛が激しくなったのって最近？

タツキ

あぁ。前はそんなでもなかった

タツキ

そのくせ、自分は平気で外泊するし、

タツキ

逆に俺がスマホ覗こうとするとものすごい勢いて怒るんだ

サクラコ

怪しいねぇ～

サクラコ

もしかして、浮気してるのは彼女の方なんじゃないの？

タツキ

え！？あれだけ束縛しておいて、そりゃないだろ！

サクラコ

いやいや、よく言うでしょ

サクラコ

浮気している人は、自分のしてることを

サクラコ

相手もやってるんじゃないかと考えて、

サクラコ

相手の浮気をやたら疑うって

サクラコ

事実、私が担当した浮気調査でも、

サクラコ

そんなケース山ほどあったわ

タツキ

マジか…信じたくないけど、女の勘はあたるっていうからな

タツキ

確かに最近マリカの奴、スマホを肌身離さず持って

タツキ

ずっと誰かとやり取りしてたり、

タツキ

やたら化粧して出かけたり、

タツキ

見慣れない服やバッグが増えてたりするし、

タツキ

夜の方も減ったし…

タツキ

あぁー！！こんな風にお互い信じられなくなるなんて、

タツキ

結婚間近なのに俺達もう、終わりなのかな…

サクラコ

はっきりさせるためには、探偵に依頼するのが一番だよ

タツキ

何だよそれ、宣伝か？

サクラコ

私は大事な兄のために言ってるんだよ

タツキ

…費用は？

サクラコ

浮気調査にかかる費用は最低でも10万円くらい

サクラコ

でも、兄妹価格で特別に半額の五万円でやってあげてもいいよ

タツキ

…乗った！

サクラコ

あ、スマホにはパスコードかけといた方がいいよ

サクラコ

触手絵とか、見られたくないものがあるならねｗ

タツキ

だからあれは忘れろっての！

～数日後～

マリカ

この泥棒猫が！

サクラコ

どなたですか？

サクラコ

どうして私のLINEを…

マリカ

とぼけるんじゃないわよ！

マリカ

タツキのスマホから連絡先を見つけたのよ

サクラコ

もしかして、マリカさん？

サクラコ

タツキのスマホ、パスコード掛けたって言ってたはずなんだけど…

マリカ

婚約者を舐めないでちょうだい

マリカ

パスコードくらいすぐわかるんだから

マリカ

それより、こそこそ二人で会おうなんて…

マリカ

覚悟してなさい、思い知らせてやるんだから！！

マリカ

～数時間後～

マリカ

どう？思い知った？この泥棒猫！

サクラコ

あの後気を失って、救急搬送されました。やはり、お腹を殴ったのはあなただったんですね

サクラコ

どうしてこんな酷いことをするのですか…

マリカ

とぼけないでよ。酷いのはそっちでしょう！

マリカ

あんたが、私の婚約者のタツキに手を出すからよ！

サクラコ

え？

マリカ

前から疑わしいと思ってたけど、

マリカ

やっぱり浮気してたのね！！

マリカ

でもこれで思い知ったでしょう

マリカ

所詮あんたは愛人に過ぎないってことよ

マリカ

さっさとタツキの前から消えて頂戴！

マリカ

でないと慰謝料請求するわよ！

サクラコ

あの、落ち着いてください

サクラコ

勘違いされているようですけど、

サクラコ

私、タツキの浮気相手ではないですよ

マリカ

嘘つかないでよ！

マリカ

私、あんた達のやり取り見たんだから！！

マリカ

何であそこまで相手のことよく知ってるのよ！！

マリカ

何で『さく『とか『たーちゃん』とか

マリカ

あだ名で呼び合ってるのよ！

マリカ

あんた達がそういう関係だからでしょ！

サクラコ

違います

サクラコ

私は、タツキの双子の妹なんです

マリカ

へ？

サクラコ

タツキから聞いていませんでしたか？双子の妹がいるって

マリカ

聞いてたわよ

マリカ

でもそれこそ嘘だわ！

マリカ

だって、双子ってそっくりなものでしょ！

マリカ

それなのにあんたとタツキ、全然似てないじゃない！

マリカ

そうやって浮気をごまかそうったって無駄よ

マリカ

騙されないわ！！

サクラコ

あのねぇ…

サクラコ

双子と言っても、私達は男女の双子ですから、

サクラコ

当然二卵性です

サクラコ

しかも成人もしてるのに、そっくりなわけないでしょう

サクラコ

ちなみに、そっくりというわけではないですが、よく見れば

サクラコ

目鼻立ちとか似てるって言われますよ、私達

サクラコ

疑うならば、私達の両親やタツキの友人達に

サクラコ

確認してみてもいいし、アルバムも戸籍謄本もありますよ

マリカ

え、じゃあ…本当に双子なわけ？

サクラコ

えぇ。生まれた時から一緒でしたから、

サクラコ

相手のことをよく知り尽くしてるのも当然

サクラコ

『さく』『たーちゃん』というのも、

サクラコ

幼い頃からのあだ名です

マリカ

…や、やだもー！ややこしいことしないでくださいよぉ！

マリカ

そうならそうと、もっと早くに紹介してくれたらいいのに！

サクラコ

…はぁ？

マリカ

ごめんなさ～い、うっかり間違えちゃって

マリカ

私、よく天然って言われるドジっ子タイプなんです！

マリカ

でもでも、タツキだっていけないんですよ

マリカ

浮気まがいのことして、私を不安にさせたりするから！

マリカ

最近特に冷たいし！

マリカ

お姉さんの方からも叱ってあげてください！

マリカ

彼女を不安にさせないようにって！

マリカ

これから仲良くしましょうね、お姉さん！

サクラコ

…はぁ。あきれてものが言えないわ

サクラコ

勝手な勘違いと思い込みで人に暴力を振るって

サクラコ

病院送りにしておいて、

サクラコ

よくもそんな風に開き直れますね！

マリカ

な、何よ謝ったじゃない！

サクラコ

これが謝罪する態度ですか！？

サクラコ

自分のことを天然だのドジっ子だの言って、

サクラコ

挙句の果てに、タツキのせいにして…

サクラコ

たーちゃんはなんでこんな女と婚約までしたんだろう

サクラコ

我が兄ながら見る目がなさすぎるわ、本当に

マリカ

だ、だって、浮気相手と間違えちゃったんだから仕方ないじゃない！

マリカ

お姉さんだって、私と同じ立場なら同じことするはず！

サクラコ

いいえ、しません

サクラコ

まずはもっとしっかり確かめて行動するし、

サクラコ

仮に浮気相手であったとしても、いきなり殴ったりしませんよ

マリカ

浮気相手だったら、殴られて当然じゃない！

サクラコ

そんなことはないでしょう

サクラコ

相手は騙されていただけかもしれないし、

サクラコ

暴力なんか振るったら、自分が法律上不利になるだけですから

サクラコ

第一マリカさん、あなた、タツキのこと言えるのでしょうか？

マリカ

な、なんのことよ

サクラコ

私、実は探偵をやってましてですね

サクラコ

タツキの依頼で、あなたのこと調べていたんですよ

マリカ

あ、タツキったら勝手に何してるのよ！

マリカ

婚約者である私のことを疑うなんて！

マリカ

というか、私のこと調べてた！？

マリカ

そんなの、プライバシーの侵害よ！

サクラコ

それ、あなたが言います？

サクラコ

散々タツキのことを疑ってきたあなたが

サクラコ

プライバシーの侵害だって、あなたがタツキに散々してきたことでしょう

マリカ

それは…

サクラコ

でも確かに、こちらが勝手に調べていたことについては

サクラコ

お詫び申し上げます。申し訳ございません

サクラコ

だけど、調べ始めてすぐ、ザクザクと取れたんですよ

サクラコ

あなたの浮気の証拠が…

マリカ

ひっ…これは違うの！

サクラコ

何が違うんですか？キスしたり、男と腕組んで

サクラコ

ホテルに入ったり…

サクラコ

こんなわかりやすいのに、気付かなかったタツキには呆れますよ

マリカ

違う！それは私の双子の兄よ！

サクラコ

私達の真似しようったって無駄ですよｗ

サクラコ

あなたに男の兄弟がいないのなんて調査済みですから

サクラコ

男の身分だって調べてますし

サクラコ

というか、ここまでしてたら仮に兄弟でもアウトですよ

マリカ

だって、タツキが寂しい思いをさせるからいけないんだもん！

サクラコ

来た来た、浮気の言い訳のテンプレ

サクラコ

またタツキのせいにするんですね

マリカ

お姉さん、まさかその証拠、

マリカ

タツキに見せたりしないでしょう！？

サクラコ

え、当然見せますが

サクラコ

だってタツキが依頼してくれたんだから

マリカ

そんな！私を尾行してたのは許しますから、

マリカ

その代わり、浮気のことはなかったことにしてください！

マリカ

穏便にしましょうよ、ね、お姉さん！

サクラコ

できるわけないでしょう

サクラコ

あなたのような人と、大事な兄の結婚には賛成できませんから

マリカ

賛成してよ！私もう束縛なんかしないし、

マリカ

浮気もしないし、お姉さんとも仲良くしてあげるから！

サクラコ

信じられるわけないでしょ。というか、仲良くしたくもないし

マリカ

どうしたらいう事聞いてくれるのよ！

マリカ

というか、『お姉さん』っていうのが間違いだったんだ…

サクラコ

ん？

マリカ

あなたは双子とはいえ、タツキの妹よね？

マリカ

つまり、年上とはいえ私の義妹に当たるわけで、

マリカ

私の方が姉で、立場は上ってわけね！

マリカ

義姉の言うことは聞いてくれる？

マリカ

あんたの方が下の立場なんだから！

サクラコ

はぁ…どっちが上とか下とか関係ないですよ

サクラコ

というか、もうタツキに見せちゃいましたし

マリカ

はぁぁあああ！？

マリカ

ちょっと何してくれてんのよ！！

サクラコ

タツキ、がっかりしてました

サクラコ

あなたとは婚約破棄して、相手の男共々

サクラコ

慰謝料を請求するって言ってます

マリカ

婚約破棄！？嘘でしょ、もう結婚式も目前なのに

マリカ

それに慰謝料って何！？私達、まだ結婚してないんだよ！

マリカ

なのに慰謝料請求されるの！？

サクラコ

婚約段階でも慰謝料は発生するんですよ

サクラコ

そんなことも知らないんですか？

マリカ

そんなぁ…私、タツキが高収入だから

マリカ

寿退社もしちゃったし、早く結婚できるよう

マリカ

タツキを急かして、もうちょっとのところまで来たのに

マリカ

散財して貯金もすっからかんだし、

マリカ

その上慰謝料なんて払えないよぉ～！

マリカ

お姉さん、何とかしてタツキを説得して！

マリカ

私、すっごく反省してるからぁ！

サクラコ

するわけないでしょう、そんなこと

サクラコ

何なら私も、あなたに慰謝料請求するつもりですから

マリカ

嘘！！

サクラコ

当然ですよね

サクラコ

お腹殴られて、救急搬送されたんですから

マリカ

そんなの、そっちもプライバシー侵害してきたんだから

マリカ

相殺ってことにしましょうよ！

マリカ

そんな大したことないでしょう？

サクラコ

私、以前手術して、その手術跡にダメージを食らったんですよ

サクラコ

この機会にあなたも知るべきです

サクラコ

突発的に暴力を振るうことの危うさを

マリカ

嘘、待ってごめんなさい！

マリカ

これ以上慰謝料請求されたら、私生きていけない！

サクラコ

知りません。自業自得じゃないですか

サクラコ

そう言えば、タツキ言ってましたね

サクラコ

お互いの家族の紹介なんていいから、と

サクラコ

マリカさんが結婚を急かしてきた、って

マリカ

こんな事なら紹介してもらえばよかった

マリカ

そしたら間違えなかったのに…

～後日談～

サクラコ

その後、マリカさんは婚約破棄され、浮気相手共々慰謝料請求された上に

サクラコ

挙式のキャンセル費用も全額負担することに

サクラコ

更に浮気相手には逆恨みされて逃げられ、

サクラコ

両親にも勘当され、

サクラコ

今では安いアパートで独り暮らしをしながら、

サクラコ

必死にバイトを掛け持ちして働いているそうですよ

サクラコ

私はたーちゃんこと兄に感謝され、謝罪されましたが、

サクラコ

『もっと女を見る目を養え！』と叱ってやりましたｗ

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結城　真矢

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