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四月。
満開の桜の下、真新しい制服に身を包んだ新田慎(しんたまこと)は、
ゆっくりと校門をくぐった。
新田 慎(しんた まこと
ブリーチをかけた金髪。
耳にはシルバーのピアス。
鏡の前で何度も練習した笑わない顔と、無駄に話さない態度。
───これが俺の“高校デビュー”。
もう誰にも、バカにされないように。
過去の自分を切り捨てたつもりだった。
だけど、心臓の鼓動はやけにうるさくて、手のひらには汗が滲んでいた。
教室に入っても、誰にも目を合わせず、自分の席にそっと座る。
誰も話しかけてこないでくれ───そう願っていた、はずだったのに。
尾川 稜太(おがわ りょうた
急に明るい声が飛び込んできた。
思わず顔を上げると、黒髪をセンター分けにした、笑顔の男子が立っていた。
尾川 稜太(おがわ りょうた
一瞬、息が止まった。
見ず知らずの人間が、自分に笑いかけてる───
それだけで、警戒心が喉元までこみ上げる。
新田 慎(しんた まこと
尾川 稜太(おがわ りょうた
新田 慎(しんた まこと
稜太は何かに成功したように笑った。
尾川 稜太(おがわ りょうた
新田 慎(しんた まこと
慎の眉がぴくりと動いた。
でも稜太は気にせず、自分の机にランドセル(みたいな通学バッグ)を投げ置くと、
当然のように慎の隣に腰を下ろした。
尾川 稜太(おがわ りょうた
尾川 稜太(おがわ りょうた
新田 慎(しんた まこと
尾川 稜太(おがわ りょうた
慎は、思わず口元を噤んだ。
こんなやつ、今まで出会ったことない。
強引で、笑ってて、でも不快じゃなくて───
新田 慎(しんた まこと
小さく呟いたその声は、もう、以前の慎のものじゃなかった。
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