???
西日が差し込む静かな校舎を、一人の影が歩く
遠くで吹奏楽部が練習する音が聞こえるが、気に留める様子もない
音も立てず、静かに階段を上がるその人物は
しかし呼吸だけが、緊張のためにひどく荒くなっていた
手すりにすがる指先ははっきりと震えておぼつかない
その脳裏にあるのは、クラスメイトが話していた噂話だけだった
女子1
女子2
女子2
???
目の前を黄色い鎖が遮っていた
一瞬、それに戸惑い息をのむ
これ以上あがってはいけないという形式的な閉鎖感
意を決したようにそれをくぐり抜け
電気もついていない、さらに上の階へとあがっていく
女子1
女子1
女子1
女子1
屋上へ繋がる扉の前に、小さいダンボール箱が置かれている
古ぼけてホコリすら乗ったその正面には、確かに
お願いボックスと、マジックペンで殴り書きされていた
???
???
掠れてこぼれ落ちた声が、手と同様に震えている
一度ポケットをまさぐったその手には
しわの寄った封筒が握りしめられていた
女子1
女子1
女子1
女子2
女子2
女子1
女子1
女子1
女子1
???
回想したその言葉に、とっさに恐怖心を煽られた様子で
乱暴に手紙を押し込み、逃げるように階段を駆け下りていく
西日の差す階段に、再び静けさが広がった
ただ、遠ざかっていく足音が完全に聞こえなくなった頃
ただの箱であるはずのそれから、黒いもやが沸き立ったのを
目にしたのは、誰もいなかった
翌朝
車掌
ピリリリリリリリリリ
山野英真
山野英真
見るからに下ろしたての制服に身を包んだ影がホームに駆け下り
外ハネした黒髪が、閉じていくドアをすり抜けるように駆け込んだ
山野英真
山野英真
安堵しつつ、乗客の注目が集まっていることに気づいて肩身を狭める
5月の大型連休明け、最初の日
通常、高校一年生であればようやく新生活に慣れ始める頃のはずだが
ある事情で私立高校への編入が決まり、今日が転校初日
ガラスに映る真新しい制服と、寝かしつけたはずの寝癖をのぞき込み
英真は緊張した様子で大きく息を吐いた
山野英真
スマホに提げているお守りを握りしめ、深呼吸する
乗り慣れない電車の、見慣れない車窓
これまでと違う生活が始まる予感を不安に思いながら
英真は静かに唇を噛んだ
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
?
山野英真
山野英真
山野英真
?
山野英真
不注意からぶつかってしまった謝罪の言葉を遮るように悲鳴が上がる
振り向いた生徒は、睨みつけるような眼光で振り返っていた
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
英真がパニックで硬直する中
今や完全に向き直った男子生徒が首を傾ぐ
しかしその片眉が怪訝そうに持ち上げられると
やがてなにかを凝視するように顔が近づいた
?
?
山野英真
山野英真
山野英真
?
山野英真
山野英真
?
引き留める声を振りきり、一目散に校門をくぐる
わいわいと賑やかさを増していく通学路に紛れるように
英真は校舎の中に飛び込んだ
担任
担任
担任
山野英真
無事に職員室に辿り着き、担任の紹介と挨拶を経て教室へ向かう
ハツラツとした印象の数学教師の声が
予鈴後の穏やかなザワつきの中でやけに響いた
担任
担任
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
担任
担任
担任
担任
担任
山野英真
山野英真
拍手とともに、クラス全員の目が集まる居心地の悪さに背筋が伸びる
しかしその中で、自然と一人の生徒と目が合った
鬼王篁
山野英真
ごく短く切り揃えられた茶髪に、三白眼
しかし先ほど追突した生徒とは違い謎の安心感を覚える雰囲気に
英真は知らず知らず、ふにゃりと表情を緩めていた
放課後
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
山野英真
靴を履き替え、朝とは真逆の気分で校門へと向かう
その途中にある、中央広場にあるベンチ
そこに腰を下ろしたまま、見覚えのある人物が英真を見つめていた
山野英真
山野英真
鬼王篁
鬼王篁
鬼王篁
ゆらりと立ち上がる
その動作は妙に重々しかった
鬼王篁
鬼王篁
山野英真
篁が中空でなにかを掴む仕草をした瞬間
ずん、と、なにか重いものが突き立てられたような音がした
山野英真
鬼王篁
鬼王篁
一度言葉を切った篁の眼光が、夕陽を反射し赤く煌めく
細く吐き出された息がかすかな音を立てるのを聞きながら
英真はただ、困惑に顔を引きつらせるしかなかった
鬼王篁
鬼王篁
鬼王篁
鬼王篁
コメント
26件
英真くん可愛い系の男の子なんですね☺️✨ 鬼王くんや不良さんとの会話からして、霊や妖怪に憑かれやすい体質なのでしょうか? 見覚えのあるキャラも出てきて、これからもっと面白い展開になりそうで楽しみです!