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3日で終わる恋

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3日で終わる恋

1 - 3日で終わる恋 第1話

♥

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2020年08月04日

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ある日の朝

朝比奈 冬真

おはよう

中原 秋子

おはよう、朝比奈くん

朝比奈 冬真

アイツもう来てる?

中原 秋子

うん…

『アイツ』とは、幼なじみの夏川芽瑠(なつかわめる)のことだ

彼女は、ちょっと特殊な体質の持ち主で…

朝比奈 冬真

(今日はあの日か)

中原 秋子

私はもう声かけたから、朝比奈くんも

朝比奈 冬真

うん、行ってくる

実は、芽瑠は3日で一部の記憶が消えてしまうのだ──

朝比奈 冬真

(中学時代のいじめが原因だって聞いたけど…)

朝比奈 冬真

(いじめたやつを俺は許せない)

朝比奈 冬真

(アイツ本人も、その体質を自覚してるから)

朝比奈 冬真

(2年になってからは、積極的に友達作ってないみたいだし)

今日は、前回記憶が消えてから3日──

朝比奈 冬真

(きっとまた、僕と中原さんの記憶は消えてるだろう…)

朝比奈 冬真

おはよう、芽瑠

夏川 芽瑠

…………

夏川 芽瑠

夏川 芽瑠

…えっと、おはよう

朝比奈 冬真

(あぁ…まぁ、そういう反応だよな)

もう何回も繰り返してるから、慣れてるはずなのに…

朝比奈 冬真

(苦しい…)

朝比奈 冬真

(やっぱり、忘れられるのって何回経験しても切ないもんだな)

夏川 芽瑠

えっと…

朝比奈 冬真

朝比奈冬真(あさひなとうま)。芽瑠の幼なじみだよ

夏川 芽瑠

あの、私──

朝比奈 冬真

うん、知ってる

朝比奈 冬真

僕と中原さんは、芽瑠の体質のこと把握してるから

夏川 芽瑠

そっか…ごめんね

朝比奈 冬真

何で謝んの?芽瑠はなにも悪いことしてないだろ?

夏川 芽瑠

夏川 芽瑠

そう…だけど…私がこんなだから、ふたりには辛い思いさせちゃってる

中原 秋子

芽瑠ちゃん、私たちなら大丈夫だからさ。ね?朝比奈くん

朝比奈 冬真

あぁ。僕たちが何回でも思い出させてあげる

朝比奈 冬真

何回でも友達になるから

芽瑠の記憶から消えるのは、ごく限られた人のことだけで

仲がいいほど、消えやすいらしい

朝比奈 冬真

(他のクラスメイトや、自分自身のことは覚えてるって言ってたっけ…)

中原 秋子

周り見渡してみてどう?私と朝比奈くんくらい?忘れちゃったのって

夏川 芽瑠

…うん、そうみたい

中原 秋子

そっか~

中原 秋子

でもまぁ、逆を言えばさ…

中原 秋子

それだけ芽瑠ちゃんに想ってもらえてるってことだし~!

朝比奈 冬真

(相変わらず、中原さんはポジティブだな)

朝比奈 冬真

(まぁ確かにそういうことだけど)

朝比奈 冬真

(僕の芽瑠への気持ちは…──)

夏川 芽瑠

あっ、もうひとり…分からない人いる

夏川 芽瑠

あの人…

そう言って視線を送ったのは

少し離れた場所にいる僕の友達、春田秀二(はるたしゅうじ)のことだった

中原 秋子

あぁ~、春田くんね

中原 秋子

あの子は、春田秀二(はるたしゅうじ)くんだよ

中原 秋子

朝比奈くんの友達!

夏川 芽瑠

ありがとう

朝比奈 冬真

(秀二のこと忘れたのは初めてだよな?)

朝比奈 冬真

最近一緒にいることが増えてたからな…芽瑠も

中原 秋子

そうだね~。仲良くなると記憶から消えやすいもんね

夏川 芽瑠

…うん

夏川 芽瑠

(春田くんは…朝比奈くんの友達…と)

夏川 芽瑠

(覚えた…!)

夏川 芽瑠

(3日間でまた忘れちゃうかもだけど…)

ポン…

夏川 芽瑠

…っ

朝比奈 冬真

(あっ、ヤベっ…。安心させようとして、つい頭をポンってしちまった…)

朝比奈 冬真

(すげぇ、驚いた顔されてる…)

朝比奈 冬真

ごめん、びっくりさせたよな

中原 秋子

芽瑠ちゃん、朝比奈くんの癖だからコレ笑

中原 秋子

悪く思わないであげてね?

夏川 芽瑠

う、うん…っ

夏川 芽瑠

(男の子に頭を撫でられるなんて…)

夏川 芽瑠

(何かドキッとしちゃった…)

夏川 芽瑠

(でも、それよりも気になる人がいる)

夏川 芽瑠

(きっと私はこの気持ちを知ってる)

夏川 芽瑠

(たぶん、私は──)

その日の放課後

僕たちはいつも通り、秀二含め4人で帰っている

春田 秀二

あれ~?何か芽瑠ちゃん、おとなしくない?

夏川 芽瑠

そ、そんなことないよ…っ

朝比奈 冬真

バーカ、秀二。芽瑠も色々考えることくらいあんだよ

朝比奈 冬真

な?笑

夏川 芽瑠

う、うん

朝比奈 冬真

(多分、秀二のことを忘れてしまってるから)

朝比奈 冬真

(どう接したらいいのか分かんないんだろうな…)

春田 秀二

だとしても、冬真!バカはひどくね!?笑

中原 秋子

春田くんがバカなのはいつものことなのにね?笑

春田 秀二

うわっ。中原さんまで!

夏川 芽瑠

あはははっ

朝比奈 冬真

(よかった。笑ってる…)

芽瑠が記憶をなくす日は

僕や中原さんがさりげなく、お互いの情報を会話の中で芽瑠に伝えるようにしている

朝比奈 冬真

(今回は秀二の記憶もないから、中原さんがうまくカバーしてくれた…)

春田 秀二

じゃあ、オレはこっちだから…また明日~!

中原 秋子

またね~!私もここでバイバイ!

夏川 芽瑠

うん、また明日!

秀二と中原さんとはそれぞれ分かれ道で、さよならをした…

朝比奈 冬真

(僕と芽瑠は家が隣だから一緒に帰ってるけど…)

朝比奈 冬真

(この空気…どうしたものか)

夏川 芽瑠

朝比奈くん…あの…相談があるんだけど

朝比奈 冬真

…?どうした?

夏川 芽瑠

あのね、好きな人がいるの…っ

朝比奈 冬真

えっ!?

朝比奈 冬真

(初耳だぞ!)

朝比奈 冬真

そうなんだ…

朝比奈 冬真

(僕も芽瑠のことが昔から好きなんだけど…まだ気持ち言えてないんだよな)

朝比奈 冬真

(言っても、忘れられるの分かってるから…)

朝比奈 冬真

(自分が切なくなるだけだと思って、言えてない…)

朝比奈 冬真

相手って?

夏川 芽瑠

夏川 芽瑠

3年の麻生先輩なんだけど

朝比奈 冬真

えっ…麻生先輩?

朝比奈 冬真

(あの人って確か…好きな人がいるって噂あるよな?)

朝比奈 冬真

(芽瑠のやつ…知らないのか?)

朝比奈 冬真

(その記憶が消えてるとか?)

朝比奈 冬真

朝比奈 冬真

(いや、でも先輩のことは覚えてるしな…)

夏川 芽瑠

麻生先輩がどうかしたの?

朝比奈 冬真

あっ、いや…

夏川 芽瑠

…?どう、思う?

朝比奈 冬真

どうって…

朝比奈 冬真

(僕が芽瑠のことを好きだっていうのは、芽瑠は知らないし…)

朝比奈 冬真

(麻生先輩のことを、どうこう言うわけにもいかないし…)

朝比奈 冬真

いい先輩だとは思うけど…う~ん…僕に聞かれてもよく分からないかな。ごめん…

夏川 芽瑠

そ、そうだよね…!私こそ、ごめんね

夏川 芽瑠

こんなこと朝比奈くんに聞いちゃって…。忘れて!

朝比奈 冬真

(それは無理!!)

翌日の朝

ちょうど芽瑠と途中で会ったから、一緒に登校してきたけれど

それがいけなかったのかもしれない──

夏川 芽瑠

あっ、麻生先輩だ…!話しかけてみようかな?

朝比奈 冬真

…っ。やめたほうがいいと思う…

夏川 芽瑠

…何で?

朝比奈 冬真

(『先輩には好きな人がいる』って言えばいいのに…言えない…)

朝比奈 冬真

ほら、なんか急いでるみたいだし…さ?

夏川 芽瑠

普通に歩いてるよ?話しかけてみ──

ガシッ

夏川 芽瑠

…!

芽瑠が麻生先輩のほうに走り出そうとした瞬間

僕は芽瑠の腕を掴んでいた

朝比奈 冬真

やめとけって

夏川 芽瑠

(昨日から様子がおかしいよ…朝比奈くん)

夏川 芽瑠

(先輩のことになると、態度が変わってる気がする…)

夏川 芽瑠

色々私のこと分かってくれてる朝比奈くんだから、先輩のこと相談したのに…

夏川 芽瑠

もういい…っ!

そう言って、僕を振り切り、下駄箱のほうへ走っていった…

朝比奈 冬真

(だからこそ、あの先輩はやめといたほうがいいって言ってんのに!)

朝比奈 冬真

(くそっ、どうしたらいいんだ…!)

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