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それから私には、いつもの日常が戻ってきていた。
学校からの帰り道。電車の空いている席に座れた私は、
すぐにイヤホンの電源を入れて、配信アプリを立ち上げる。
すみれ
すみれ
すみれ
すみれ
すっかり毎日習慣となっていたその行為が、もう必要でないことに、ふと気がつく。
いつもだったら、配信で紅羽さんの様子や、体調、食べたいものなどを確認して、翌日のメニューに組み込んだりしていたのだけれど。
すみれ
自分で思っていたより、予想外に喪失感が大きくて、なんだか驚く。
すみれ
いま、配信で紅羽さんの姿を見たら、なんだか切なくなってしまう気がして。
私はそっと配信アプリを上にスワイプして消すと、
音楽を流してスマホの画面を落とした。
すると、タイミングを見計らったかのように、ママからチャットが届く。
ママもママで、きっと私のことを気遣ってくれているのだろう。
会社に顔を出すのはあまり気が進まなかったが、忙しくしていれば少しは気が紛れる気がして、
私はママへのお弁当を作るため、帰路を急ぐことにした。
すみれ
手作り弁当を持って、会社のロビーでママを待つ。
ここには、つい最近来たばかりだというのに、
社用パスを返してしまった私は、たちまちお客様に戻ってしまっていた。
部外者を確実に閉め出すための関係者口がなんだか高い塀のように感じられて、
私は無意識にため息をついた。
すみれ
すみれ
たしか、今日は曜日的にダンス練習の日でもないし、
紅羽さんは事務所に来ていないだろう。
こないだの今日で、会社のロビーで顔を合わせるのは気まずかったが、
さすがにその辺りは、ママも配慮してくれているはずだ。
ゴウン…
そんなことを思いながら待っていると、関係者口の向こう側のエレベーターのひとつが動き出した音がした。
階数表示を見ると31階から降りてくるようだ。
すみれ
私は、ロビーのベンチを立って、ママが降りてくるのを待った。
しかし、1階についたそのエレベーターから降りてきたのは、ママではなく。
星也
すみれ
いつかこのロビーで、そして会社の廊下ですみれにアドバイスをくれた、この会社の従業員、天ヶ瀬星也さんだった。
すみれ
星也
すみれ
星也
すみれ
不意打ちの発言に、一瞬動揺してしまう。
すると、星矢さんはすぐに眉をしかめて、さりげなくロビーのベンチに座るよう私を促した。
星也
すみれ
星也
すみれ
星也
私は、ざっくりとことのあらましを星矢さんへ話した。
星也さんはときどき相づちを打ちながら、黙って話を聞いてくれた。
星也
すみれ
星也
星也
すみれ
私は星也さんの優しい言葉を噛みしめた。
星也さんは、決定したのは社員だとか、私のせいじゃないとか、そういう責任の問題じゃなくて、
人としての倫理観の観点から正しい行いをしたと言ってくれたのが、私はとても嬉しかった
星也
すみれ
すみれ
星也
すみれ
星也
すみれ
すみれ
すみれ
私は、一瞬、情報を整理しきれなくなって固まる。
コラボ?配信?
その時、それまで星也さんになんとなく感じていた違和感の正体が、突然明らかになった。
すみれ
すみれ
星也
星也さんは茶目っ気たっぷりに笑った。
星也