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すみれ

せ、星也さん……って……、

すみれ

もしかして、ライバーさんですか……!?

星也

あれっ?知らなかった?僕もまだまだってことかな

星也

現役学生ライバー、天ヶ瀬星也とは僕のことだよ

衝撃の事実に、私が絶句していると、星也さんは茶目っ気たっぷりに笑う。

星也

まあ、俺はあんまり頻繁に配信しないし、個人配信も多いから、知らなくても当たり前かもね。一応これで、紅羽より先輩なんだけど。

すみれ

し、失礼しました…!ずっとママ…母の部下の方かと思ってました。

いつも大人びた雰囲気で、私にアドバイスをしてくれる星也さんが、

まさかライバーで、しかも学生だなんて!

想像もしていないことに、私は驚きを隠せない。

星也

それにしても、有能だと噂に名高いすみれさんが解雇だなんて、本当にもったいないね。はじめの頃はスマホも使えず、ロビーでうろうろしてたのに、すごい成長だ。

いつかロビーで助けてもらったときのことを茶化されて、私は恥ずかしくなる。

すみれ

ちょっ、星也さん!

星也

面白いし、よければ僕のところでアシスタントしない?

すみれ

えっ!?

星也

僕も大学があるから、生活のリズムは大体合うだろうし。紅羽のことが心配なんじゃない?

星也

今は完全に部外者だから紅羽の情報も入ってこないでしょ?僕の下にいれば、元気にしてるかぐらいは、分かるかもしれないよ

突然の申し出に私はさらに驚いた。

いつもの冗談かと思ったけれど、話を聞く限り、星也さんは至って本気のようだ。

これまで、なし崩し的に紅羽さんの目覚まし係として働いてきたけれど

ほかのライバーさんの元で働くことなんて、考えてもみなかった。

すみれ

(星也さんの元で働く…か。)

すみれ

(わたしって、なんのためにアルバイトしてたんだっけ…)

思えば、きっかけはママのお使い感覚だったし、動機は報酬目当てだった。

でも。

すみれ

すみません、星矢さん。

すみれ

お申し出はとても光栄ですけど、でも、今はほかの方のお手伝いをすることは考えられなくて…

すみれ

私は、紅羽さんのファーストライブを成功させることを使命に、ここ数週間毎日働かせていただいてました。

すみれ

今は道半ばでこういう状況になってしまいましたが…、

すみれ

ライブの結果が出るまでは、遠くからでも、しっかり見守りたいんです。

私がそういうと、星也さんはあはは、と苦笑いして頬を掻いた。

星也

そっか。わかりました。ふられちゃったな。

星也

でも、そういうことなら

星也

配信だけでも、見てあげな。多分、紅羽も喜ぶから

すみれ

……はい。

私が見ることを紅羽さんが喜んでくれるかは果たして分からなかったけれど。

純粋に星也さんからの慰めの言葉に勇気づけられた。

すみれ

(配信…か)

すみれ

(うん、見てみよう。)

すみれ

(紅羽さん、体調崩してないかな。)

紅羽

…………

大丈夫?紅羽

紅羽

あー、一瞬クラッときただけ。平気。

ダンスレッスンの休憩中、一瞬目の前が真っ白になった俺を

奏が支えてくれる。

俺は奏の手をそっと外すと、ゆっくり辺りを見渡して

片足ずつ地面を踏みしめて、量の足でしっかりと立つことを意識する。

大丈夫、俺はまだやれる。

配信だって、ライブ練だって。

不本意ながら、案件配信は何本か削られてしまったけれど、

幸か不幸か、そのおかげもあって、俺はなんとかやれていた。

紅羽

(あいつ…)

今はすっかり音信のなくなった、あの女。

ある日突然俺をたたき起こしにやってきて、甲斐甲斐しく世話を焼いていた。

紅羽

(勝手に俺の生活を荒らしたくせに、いなくなるときは一瞬で消えやがった)

紅羽

(女って生き物は、結局みんなそうなんだ)

紅羽

(俺には、奏だけいればいい)

隣にいる奏が、視線を受けてこちらを見る。

紅羽、本当に大丈夫?顔色がよくないよ。

紅羽

俺が血色悪いのはいつものことだろ

また、そうやってごまかして。分かるよ?また食べてないんでしょ

紅羽

食べてる

ウィダーでしょ

紅羽

………

ほらね。俺には分かるんだから。

ちゃんと食べないとだめだよ、たしなめる奏を横目に、俺は今来た仕事のチャットアプリの通知を確認する。

マネージャーから、契約関係の書類の確認と、雑誌のインタビューのドラフト、

質問事項の確認など諸々が送られている。

紅羽

(………)

紅羽

(………頭いてぇ)

途中まで呼んで、文字の羅列に頭痛がしてチャット画面を閉じた。

こういうとき、あの女が口頭で連絡のやりとりをしてくれていたことが

案外役に立っていたのだと、今更少し後悔する。

紅羽

(…そういえば、)

紅羽

(昨日の、配信…)

気になって、俺は、昨日の配信のサマリー画面を開く。

同接は昨日も落ちてない。

コメントや高評価の数も上々。

紅羽

(みんなが、俺を見てくれてる)

紅羽

(ちゃんと、見てくれてる。見放さずに。)

紅羽

だから、大丈夫

えっ?何か言った?

先生

はい!じゃあ練習再開しまーす!

奏からの言葉には応えずに、俺たちは練習に戻る。

十分に水を飲んだはずなのに、なんだかまだどこか渇いている気がする。

紅羽

(…ああ、なんか)

紅羽

(濃いめの味噌汁が、飲みてえな…)

超人気Vtuberの目覚まし係になりまして

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