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起きてからもう一度咀嚼しますね
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフルは強い瞳で少女を見つめる。
クロッフル
少女は歩き始めた。
クロッフルから見て、その世界のすべてが新鮮だった。
沿って並ぶ、堅実な造りの建物。
色で分けられ、整備された地面。
空を覆う線。
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
そう言ってクロッフルが見たのは、一束の電線だった。
小学生①
小学生②
小学生③
気づくと背後には群れがいて。
クロッフルの身体をすり抜けて、少年少女が門をくぐっていく。
山本菌
クロッフル
そんな中、一人の少女が他の生徒から離れたところを歩いていた。
低い目線で、なにやら憂鬱な雰囲気だ。
山本菌
教師すらも挨拶をしなかったことで、クロッフルはようやく理解する。
彼女が離れたところを歩いていたのではない。
彼女以外が、彼女から離れていたのだと。
事実、彼女が行くと、そのあとにはまた群れが来た。
彼女の周囲のみ、誰も近づこうとしない。
山本菌
少女は下駄箱に手を伸ばした。
しかし、そこに上履きがない。
ため息をこぼすと、少女はそのまま靴下で歩いた。
山本菌
教室に入ると、そのゴミ箱に靴が二足あった。
少女はそれを拾い、中に入っていた消しカスなんかを落とした。
席に座り、そこで靴を履く。
自分を囲む視線のすべてが赤く光っている。
そのように思えた。
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
(精神体)
(精神体)
(精神体)
(精神体)
(精神体)
(精神体)
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
空気が変わる。
クロッフル
クロッフル
クロッフル
クロッフル
少女の背後の空間が捻れた。
ヒビが奔って、穴が開く。
深い闇が見えた。
『ぴんぽーん』
『ぴんぽーん』
『ぴんぽーん』
女が扉を開くと、その瞬間に拳が来た。
わけもわからずに後退。
バランスを崩し、玄関に倒れた。
女は両手のひらを見せ、やめてくれるよう懇願する。
侵入者はなにも言わない。
腹を蹴られる。
内臓がゲロになるような感覚を知る。
女は、照明の輪郭が溶けるのを眺めていた。
身体が痛みや吐き気で混沌としていても、頭は冷めきっていたのだ。
そして、その輪郭ともに意識も霞んでいく。
腹が踏み潰された。
溜まっていたなにかが、ついに脳にも辿り着いた。
急に意識がハッキリとして、女はその場でゲロをした。
次に咳をした。
女はそれでようやく、思い出したように恐怖した。
血を見たからだ。
女は背を向け、逃げた。
「死にたくない、死にたくない」とでも叫ぶように、
力の抜けてしまった足腰の、関節の動きだけで、四つん這いで。
半死のムカデ、羽根の千切れたセミ、雨明けのミミズ。
そう、その姿はまるで……
『しュルしュルしュルしュル……』
「カンカンカンカンカンカン」
女は動きを止める。
あるモノが正面を横切った。
モンキーシンバル。
それはゼンマイで動く、シンバルを持った猿のおもちゃだった。
それはそんなふうに音を出す。
そう。女のその姿はまるで、その玩具のようだった。
右と左という単純な動きで、ちょびちょびと逃げる。
息を何度も繰り返し、吸って吐いているが、その実それはさほど機能していない。
ほら、聞こえるはずだ。
器官の奥が、音を出している。
『しュルしュル、しュルしュル』と。
そして、シンバルの方はというと、実際には聞こえない。
しかし、この二人の心では確かに響いていたはずだ。
もっと重くてチープな、なんとも適当な音が響いているはず。
女は腹の底から声を出した。
続けて、大量の血が吐き出される。
女は髪を掴まれ、そこまま台所へと運ばれた。
侵入者は女を持ち上げ、その頭部を流し台に叩きつける。
叩きつける。叩きつける。叩きつける。
血に涙が混じる。
それは、最期の懇願だった。
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
侵入者は、女に食器用洗剤をかけた。
そして、より強く叩きつけ、シンクに擦り付ける。
それはなんともえげつなく、残虐な行為。
だが同時に、極めて日常的にも見えた。
侵入者はこの間、延々と言葉をこぼしていた。
「洗わなきゃ、洗わなきゃ、洗わなきゃ……」と。
女の髪を掴みながら、もう片方の手で洗剤をかけ、水も流していた。
殺人の様子であることには変わりない。
しかし、侵入者が本当にそう思っているのかは別のように思えた。
彼女は本当に、ただしつこい油汚れを落とそうとしているようにも見えた。
洗わなきゃ、洗わなきゃ、洗わなきゃ、洗わなきゃ……。
(侵入者)
侵入者の手が止まった。
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
女は動かない。
(侵入者)
女は動かない。
「カンカンカンカンカンカン」
それは、断罪の鼓動。その音だった。
迫りくる、とてつもなく大きななにかの音だった。
侵入者は微笑む。
その音が止まった。
小学生①
小学生②
小学生③
(侵入者)
侵入者は顔を上げる。
そこには、シンバルモンキーの玩具があった。
そして、それは口を開く。
「全部、お前のせいだよ。」
『ぴんぽーん』
『ぴんぽーん』
『ぴんぽーん』
(侵入者)
帰ろうとする二人に、マッチョが立ち塞がる。
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
マッチョ
自宅警備員
自宅警備員
マッチョ
マッチョ
(侵入者)
侵入者は微笑む。
「カンカンカンカンカンカン」
シンバルモンキーが動き始めた。笑っている。
侵入者は思わず退く。
足を滑らせ、倒れた。
侵入者を見るすべての目線が赤く光った。
そのように思えた。
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
(侵入者)
侵入者の影が外れる。
そこにいたのは、山本紅里夢だった。
ノイズが奔った。
紅里夢は自身の唇に触れ、少し考えた。
そして、顔を上げる。
その目は以前より光って見えた。
『ぴんぽーん』
チャイムが鳴り、扉が開く。
すると、すべてが光に包まれた。
『らんらん♪ らんらららん♪』
聞こえるか。世界のひしめく音が。
運命はすでに壊された。
物語は壊された。
勇者という存在してはならぬ歯車が、突如現れたのだ。
『らんらん♪ らんらららん♪』
聞こえるか。あの歌声が。
世界のひしめく音が。
私の名は、山本紅里夢。
この世界は――幻想は――!