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大学内が色とりどりの看板と模擬店の匂いに包まれる、学園祭シーズン。
実行委員を務めるハルは、その中心で文字通り「分刻み」のスケジュールをこなしていた。
女子
友人
次から次へと飛んでくる声に、ハルはいつもの完璧な笑顔で応える。
けれど、その視線は無意識に、人混みの端っこを彷徨っていた。
瀬戸 ハル
最後に奏と話したのは三日前。忙しすぎて、喫茶店にも旧校舎にも行けていない。
そんなハルの隣に、一人の華やかな女子学生が歩み寄った。
実行委員の副委員長で、ハルとお似合いだと噂されている「美奈(みな)」だ。
美奈
美奈
瀬戸 ハル
美奈
美奈
周囲にいた学生たちが「おぉー!」と冷やかす。
ハルは困ったように眉を下げた。
瀬戸 ハル
美奈
美奈が冗談めかして笑う。
その瞬間、ハルの視界に、図書館の袋を下げてトボトボと歩く「間(あいだ)」の男が映った。
瀬戸 ハル
ハルは美奈の制止を振り切り、全力で人混みをかき分けた。
奏は突然自分の名前を呼ばれ、驚いて足を止める。
市川 奏
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
奏の言葉は、いつもより少しだけ尖っていた。
彼の視線は、ハルの背後に立つ美奈に向かっている。
ハルは初めて、奏の瞳に宿る「冷たい炎」を見た。
それは、嫉妬という名の、剥き出しの感情だった。
瀬戸 ハル
市川 奏
市川 奏
市川 奏
奏は冷たく言い放つと、ハルの手を振り払って足早に去っていった。
ハルは呆然と立ち尽くす。
いつも淡々としていた奏が見せた、初めての拒絶。
瀬戸 ハル
胸の奥が、焼け付くように熱い。
モテ男として、来るもの拒まず去るもの追わずを貫いてきたハルの中で、何かが音を立てて壊れた。
瀬戸 ハル
美奈
ハルは全ての仕事を放り出し、奏を追いかけた。
向かった先は、二人の始まりの場所。旧校舎の空き教室だ。
案の定、奏は窓際に座り、本も読まずに夕暮れの校庭を眺めていた。
ハルは肩で息をしながら、勢いよくドアを閉める。
瀬戸 ハル
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
静寂が、教室を支配した。
ハルの絶叫に近い告白に、奏がゆっくりと振り返る。
その瞳には、涙が溜まっていた。
市川 奏
市川 奏
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
ハルは奏の肩を強く掴んだ。
金髪のライオンが、ついに獲物を逃さないように爪を立てる。
瀬戸 ハル
瀬戸 ハル
市川 奏
奏の目から、一粒の涙が零れ落ちる。
それは、ハルへの独占欲が、ついに限界を超えた証拠だった。
市川 奏
市川 奏
奏がハルのシャツを、震える手でギュッと握りしめる。
ハルはその体を、折れんばかりに強く抱きしめた。
瀬戸 ハル
市川 奏
泣き笑いのような声を出しながら、二人は初めて、誰にも邪魔されない空間で、深く、甘い口づけを交わした。
外からは学園祭の賑やかな音楽が聞こえてくる。
けれど、この空き教室だけは、二人の「特別」な世界に塗り替えられていた。
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