これは、ある少女の物語である。
少女、というのは間違っているかも しれない。
Aの事について、 分かっているのは 性別のみだからだ。
それ以外は、名前も年齢も国籍も わからない。
ただ、彼女の物語には、 たくさんの年齢で登場する。
そのため、少女という表現を させてもらう。
夢のような夢
少女A
お母さん
母
どうしたの?
少女A
眠れないの。
母
大丈夫よ、さぁ、
目を閉じて。
目を閉じて。
母
お母さんが絵本を読んであげましょう。
母
むかしむかしのお話です。
~
母
めでたし、めでたし。
少女A
ありがとう、お母さん
母
まだ眠れないかしら?
少女A
うん
少女A
だって、夢をみるから。
母
夢?
母
楽しい夢が待ってるわ。
母
早く眠ればいいのよ。
少女A
楽しい夢?
少女A
本当?
母
えぇ。
少女A
だったら、私、眠る。
母
おやすみなさい
少女A
おやすみなさい
少女A
はっ
少女A
朝、か
少女A
最近、いつも同じ夢をみるの。
友人
夢?
友人
珍しくファンタジックな
お話じゃない!
お話じゃない!
少女A
うん。
友人
どんな夢なの?
少女A
少女A
お母さんが、私を寝かしつけてくれる夢。
少女A
絵本を読んだり、一緒に羊を数えたりして。
少女A
夢の中で眠るの。
少女A
可笑しいでしょう?
友人
いい夢だと思う。落ち着くじゃない。
友人
けど
友人
お母さんって、確か
少女A
死んでる。
少女A
私が幼い頃だったわ。
少女A
子育てでノイローゼ、
井戸に身を投げて。
井戸に身を投げて。
少女A
ありがちな、自殺よ。
友人
ありがち、って……
少女A
これはいいの。
少女A
ただ、夢占いってあるでしょ?
少女A
どういう意味があるのか……
少女A
気にならない?
友人
友人
今日のあなたは変だわ。
友人
いつもなら、現実主義で、占いなんて信じないのに。
少女A
そうかしら。
少女A
気が動転しているのかもね。
母
起きて。
少女A
お母さん
少女A
おはよう
母
おはよう
少女A
夢、楽しくなかった。
母
あら、どんな夢だった?
少女A
私が大人になる夢。
少女A
お友達がいて……
少女A
お母さんが……
少女A
なんだったかな、覚えてない。
母
そう。
母
さぁ、着替えて。
少女A
はい、お母さん。
物語はこれでおしまい
どちらがAの夢なのか
それはAしかしらないのであります。