高谷さんに連れられて自分の部屋まで帰ってきた。
家の外ではずっと、サイレンが響いていた
メイド長(高谷)
…大丈夫だった?

メイド長(高谷)
ごめんなさい。私がもっとちゃんと見ていれば……

葵
そんなこと…

葵
高谷さんは悪くないよ?

メイド長(高谷)
でも…

メイド長(高谷)
私は、あなたを守ると決めたのに

葵
…前から思ってたんだけどさ、なんで僕に優しくしてくれるの?

葵
僕の事…拾ってくれたあの日も

メイド長(高谷)
……そうね…

メイド長(高谷)
貴方には話してなかったわね…

葵
???

メイド長(高谷)
私…息子がいたのよ

葵
えっ?!((待って、高谷さんいくつ…?))

メイド長(高谷)
貴方より少しだけ年下の…いい子だったのよ?

葵
だった…?

メイド長(高谷)
…………数年前、突然いなくなったの

葵
えっ………?

メイド長(高谷)
夫はあの子が生まれて直ぐに亡くなったから、私にとって息子は唯一の大切な家族だったわ

メイド長(高谷)
いつもなら既に帰っている時間になってもあの子は帰ってくなくて……

メイド長(高谷)
いつまで待っても帰ってこないから警察にも連絡したの

メイド長(高谷)
…………結局見つからなかったのだけれど

葵
((全然知らなかった……))

メイド長(高谷)
それでね、何年も何年も探したわ

メイド長(高谷)
ご主人様も調べて下さっているの。

メイド長(高谷)
……それでも、未だに見つからなくて

メイド長(高谷)
あの子はきっともう…………そんな時、ボロボロになって雨に打たれているあなたを見つけたの

メイド長(高谷)
初めは、少しでもいいことをすれば、神様がみてくださってあの子を返してくれるんじゃないかって、あなたに手を差し伸べたわ

メイド長(高谷)
……でも、あなたの笑顔を見ているうちに、私…あなたと息子を重ねてたの

メイド長(高谷)
それに気づいた時、色んな感情が込み上げてきたわ。このままこの子といていいのか、この子は私の息子の代わりなんかじゃない、とか…

メイド長(高谷)
色々考えた後、出した答えが、何があってもあなたを守る事だったのよ…

葵
…………でも、僕…

メイド長(高谷)
そうね、あなたは私の息子じゃない。

メイド長(高谷)
けど……それでいいの

メイド長(高谷)
あなたが元気に、笑顔でいてくれると、息子もきっとどこかで幸せに生きてるんじゃないかって思えるの

葵
………((何年間も戻ってないなら、息子さんはきっと…))

メイド長(高谷)
だから……お願い。

メイド長(高谷)
私に、あなたを守らせてちょうだい…

葵
…………もし、

メイド長(高谷)
…?

葵
もし、息子さんと再会出来たら…?

メイド長(高谷)
……その時は、2人とも守るわ(泣きそうになりながら優しく微笑み)

葵
………僕、居てもいいの…?迷惑じゃ…

メイド長(高谷)
迷惑なんてならないわ

メイド長(高谷)
あなたはもう、私にとって大切な子なんだから…((ギュウ

葵
!!!!

暴力を振るう父親に
見て見ぬふりをする母親
僕の事をおもちゃ扱いする兄弟
死にたくても、どうしようもない自分が嫌で嫌できらいだった
泣きたくても泣けない
泣けば父親や兄弟が黙ってないから
「助けて欲しい」と言ったところで
実際に何かしてくれる人なんていないし、もしなにかしてくれたとしても
それは僕が家の外の人に家族のことを告げ口したと、逆に怒られかねない
周りに人にも、家族にも、
自分にも、
僕が弱い事を知られちゃダメだった
誰にも、バレないようにしないといけなかった…けど、
あの日僕は、駅のホームに行って
黄色い線の外側に行こうとした
葵
((あれ……?"あの人"って…誰だっけ…))

次に思い出せるのは
雨の中ボロボロになっている僕を
高谷さんが助けてくれたあの日
メイド長(高谷)
どう…したの?

葵
えっ?あ、んーん…なんでもない

葵
ちょっとだけ…昔の事思い出しただけ…

メイド長(高谷)
!!!!記憶が、戻ったの?

葵
い、1部だけ…なんだけど、それすらも曖昧なんだよね…

メイド長(高谷)
それでも、少しでも思い出せたことが大きな進歩よ!

葵
そ、そうだよね……((あんまり、思い出したくない記憶だったけどなぁ…))

葵
ん?

メイド長(高谷)
ご主人様かしら?

葵
どうぞ…?

桃也
葵!大丈夫か??(肩をガシィッ)

葵
ぅわぁっ?!だ、大丈夫…

葵
みんなが…助けてくれたから

桃也
ごめん、怖い思いさせて…

桃也
実は最近変なやつがいるのは知ってたんだけど…葵狙いか確証がなくて何も出来なかったんだよ……

葵
え、いいって…!そんなこと

桃也
いや、良くないから。

桃也
葵はもう、俺の家族みたいなもんなんだよ

桃也
西谷さんも、高谷さんも…ここで働いてる人はみんな、俺の家族だから

葵
………なんか、高谷さんと似たようなこと言ってるし…

桃也
えっ

メイド長(高谷)
ふふふ、失礼いたしました

メイド長(高谷)
でも、みんな思ってることは同じってことですよ

桃也
………とりあえず、あいつは警察に連れていってもらったからもう大丈夫だけど…

桃也
2人ともまたなんかあったらすぐ俺に言ってね?

葵
う、うん……

メイド長(高谷)
私もですか…?

桃也
当たり前でしょ

メイド長(高谷)
でも、私既に息子のことでご主人様の負担になっているんじゃ……

桃也
あぁ、その事…実はもうすぐ高谷さんの息子見つかりそうだよ

メイド長(高谷)
えっ…………?

葵
ほんとに?!?!

桃也
ほんとほんと

桃也
俺の昔の知り合いがさ、海外にいるんだけど、2.3年前に人身売買してる奴の事暴露したらしくてさ

桃也
その時1番初めに保護した男の子がそのままその知り合いに遣われたいって申し出たらしくて…

桃也
で、その子の特徴が高谷さんの息子さんに似てるのと、その人身売買してた奴らが人を仕入れてた場所が高谷さんの家の近くだったこと。

桃也
バレないように海外に飛んで更に数年監禁してから売ってた事…これが明るみになってる事。ここから考えるにこの子はかなり有力候補だと思う

メイド長(高谷)
うそ…………ほんと…に……

葵
その人と直接あって確認できないの…?

桃也
…………もちろん、知り合いが日本に戻ってくる予定があるらしいから、その時合わせて貰えるように頼んどいたから

メイド長(高谷)
………っ

メイド長(高谷)
ありがとうございます…!
ほんとに、なんと感謝すればいいのか……!!!

桃也
いいって…

桃也
高谷さんの息子さんだといいな((ニコッ

葵
((やっぱりこの人、いい人って言葉じゃ足りないぐらいいい人なんだな…))
