由梨(ゆり)
ねぇ
直人(なおと)
·····
由梨(ゆり)
ねえってば!
直人(なおと)
ん?
由梨(ゆり)
なんで無視するの?
直人(なおと)
別に、無視してるわけじゃない。
由梨(ゆり)
さっきから、ずっとスマホ見てばっか···
目の前の私のこと、全然見てくれないじゃん。
直人(なおと)
だから違···
由梨(ゆり)
また、あの女?
直人(なおと)
仕事のLINEだ。
勘違いされても困る。
由梨(ゆり)
嘘···
私知ってるんだから!
直人が、知らない女と歩いてるところ!
直人(なおと)
それは俺じゃない。
勘違いはよしてくれ。
由梨(ゆり)
へぇ···
こーんなそっくりな別人がいるのね?
直人(なおと)
な!?
盗撮···
お前それ、犯罪だぞ?
由梨(ゆり)
直人が悪いんじゃない。
浮気なんてするから。
私以外の女なんか見るから!
直人(なおと)
でもこれ、俺の妹だぞ?
由梨(ゆり)
妹···?
妹がいたなんて、私聞いてない
直人(なおと)
わざわざ教えることじゃないだろ
由梨(ゆり)
なんで···
なんで?
いつもいつも···
私、彼女なんだよ?
貴方のこと、全部知りたいんだよ。
なのに、何でいつも···教えてくれないの?
直人(なおと)
そういうの、面倒なんだよ。
もう、よしてくれ···
由梨(ゆり)
わかった
直人(なおと)
····
由梨(ゆり)
うん。
よく切れそう···((狂笑
直人(なおと)
ち、ちょっと待て!
何のつもりだ?
由梨(ゆり)
何って···
あ、そっか。
(直人に包丁を向け微笑む)
直人(なおと)
····!?
(怯えるように後退る)
由梨(ゆり)
ねぇ、妹さんの住所、教えてよ。
直人(なおと)
···教えられない
由梨(ゆり)
なんで?
直人(なおと)
今の君には、教えられない
由梨(ゆり)
···わかった
(包丁を向けゆっくりと直人に近づく)
直人(なおと)
!?
俺を···殺すつもりか···?
由梨(ゆり)
妹さんの居場所、教えてくれないならね
直人(なおと)
···わかった。
殺したいなら、殺してくれて構わない。
それで君の気が···晴れるならな···
由梨(ゆり)
そう···じゃあ
(押し倒し包丁を振り翳す)
直人(なおと)
····
(静かに目を閉じる)
直人(なおと)
っ!?
ぐ···あぁ···
直人が痛みに目を開けると、包丁を振りおろした由梨。
そして痛む左手に目を向けると、そこにあったはずの自分の小指がなくなっていた。
由梨(ゆり)
すぐには殺さない。
妹さんの居場所を教えてくれるまで、殺さない。
直人(なおと)
お前···正気か?
由梨(ゆり)
教えてくれたら、殺さないけど···
直人(なおと)
ぐっ···
由梨(ゆり)
それまで直人···生きてるかなぁ?((狂笑
直人(なおと)
や···やめろっ!
直人(なおと)
ぅ···あぁ···
由梨(ゆり)
クスクス
左手の指、ぜーんぶなくなっちゃったね
直人(なおと)
これ以上···やるなら···警察···に····うぐっ
由梨(ゆり)
言うまで直人の指、残ってるかな~♪
直人(なおと)
や、やめ···
ひぎっ!?
直人(なおと)
ハァ···ハァ···
由梨(ゆり)
あーあ、指なくなっちゃったね···
言っちゃえば楽になれるのに···
なんで教えてくれないの?
直人(なおと)
美夢は···大事な妹···なんだ···お前に···殺させない···
由梨(ゆり)
ふーん···
直人(なおと)
···ぅぐあっ!
由梨(ゆり)
私のことは大事にしてくれないのに、妹さんのことはそんなに愛してるんだぁ···
直人(なおと)
ぅ···ぐぅ···
由梨(ゆり)
ねぇ···私を見てよ···
私だけを見てよ···
直人(なおと)
ひっ!?
や···やめ···
由梨(ゆり)
ちゃんと喋ってよ
直人(なおと)
ぐっ···
痛っ···
お···落ち着···け···うぐ!?
由梨(ゆり)
そんな言葉が聞きたいんじゃない。
私が聞きたいのは、妹さんの居場所。
私への愛の言葉。
直人(なおと)
や···やめろ···
由梨(ゆり)
言ってくれるまでやめない。
私だけを見てくれるまでやめない。
直人(なおと)
うぅ···ぐっ···
直人(なおと)
·····
直人(なおと)
····
由梨(ゆり)
ねぇ、直人。
早く言ってよ。
由梨(ゆり)
妹さんはどこにいるの?
由梨(ゆり)
ねぇ···
由梨(ゆり)
ねえってば!!
由梨(ゆり)
はぁ···はぁ···
どうして···?
由梨(ゆり)
私は···私はただ···愛してほしかっただけなのに···妹さんと同じように···それ以上に!
愛してほしかっただけなのに···
由梨(ゆり)
なんで···
なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!?
由梨は、既に動かなくなった直人の死体を何度も刺しながら続ける
由梨(ゆり)
なんで誰も···私を愛してくれないのよぉ···
お願い···直人···
由梨(ゆり)
もう一度···
好きって言ってよ···
どれだけ泣いてすがっても
目の前の死体は答えない
静かな部屋に
孤独な由梨の泣き声だけが
響きわたっていた