真夏日とはいえども
夕方にもなれば 流石に気温も下がってくるだろう
そんな高を括っていた 私だったけれど
蒸し暑さは増すばかり
沈みかけた夕陽の光で
空には 山吹色のグラデーションがかかっていた
ハルナ
ユウト
本当なら高校から歩いて3分程の駅前
土地鑑にあまり自信のなかった私は 紙に書かれた住所を見て
まるでダウジングのようにフラフラと 彷徨いながらも
電信柱やブロック塀に書かれた街区表示を頼りに辿っていた
探し始めて1時間と少し
スマホのロック画面を見ると 18時半を既にまわっている
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ユウト
ユウト
なんて応えれば良いのか分からなくて
「そうなんだ?」
と思わず苦笑いで返してしまった
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ユウト
ハルナ
ハルナ
ハルナ
すると呆気なかった
駅舎から真っ正面に堂々と建つ
いかにも〝雑居ビル〟って感じの建物
黒ずんだ白い外壁のお陰で 外からでも充分の怪しさだ
なんなら書いてある
『黒頭ビル』って
ハルナ
ユウト
ハルナ
ハルナ
ユウト
ガラス張りのドアを ゆっくりと開けて踏み入った
入ってすぐ右横には
このビル全体の 小さな受付があったけれど
ハルナ
そのカウンターに置かれた
入場者を記録していた 黄ばんだ名簿用紙と
最後、乱雑に放られたと思われる 縮んだHBの鉛筆が
少し寂しそうに見えた
ユウト
ユウト
ハルナ
このビルの中は薄暗い上に
随分と埃っぽかった
1階には点検中の札が掛かった エレベーターと
山積みのダンボールが 踏み場を占拠する階段がある
あまり管理されていないのは 言葉通り目に見えた
ハルナ
ハルナ
コツコツと
階段を登りながら ふと疑問に思う
ユウト
ユウト
ハルナ
ハルナ
勢いで来てしまったけれど
それは考えていなかった
名も知らぬ怪しい人に教わった
怪しいビルの住所先に
まともな人が住んでいる確率って
とんでもなく低いんじゃ…
そうやって不安に駆られていても
緊張と惰性で階段を登りきってしまう
ユウト
ユウト
ハルナ
目的の場所の玄関ドアは
このボロボロの雑居ビルには とてもじゃないけど似合わない
上品な年季の入り方をした 木製のドアだった
漆の様なコーティングをされた 丸いドアノブにそっと握ると
十数年も自身で使っていたかの様に よく手に馴染んだ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
その辺に捨て置かれた様にあった 謎の野球バットを手に持ち
今度こそゆっくりとドアを開けた
ハルナ
ハルナ
ユウト
〝これから助けになってくれるかもしれない人に対してバットを構える〟
それほど警戒しながら入った のにも関わらず
室内から 一番最初に聞こえたのは
空気を震わせる様な 大きないびきだった
ユウト
ユウト
ユウト
真っ正面に
事務机に両足を組んで乗せ
腕組みをしながら寝ている男がいる
私たちが近付いていき 恐る恐る声を掛ける前に
その人は目を覚ました
よれたワイシャツの胸ポケットから 眼鏡を取り出して掛けると
鋭い眼光で私(若しくは私たち?) を睨みつけた
ハルナ
ハルナ
私に向かって
人差し指を ちょいちょいと指す
ハルナ
ハルナ
確かに右肩にオナモミが付いていた
ハルナ
ハルナ
ユウト
ユウト
ユウト
ユウト
ハルナ
マジもんだった
〝カミヤ シズマ〟
と名乗ったその人に
私たちはここまで来た 経緯を話した
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
ユウト
ユウト
ユウト
ハルナ
通りで小学生の割には 大人っぽいと思ったワケだ
シズマ
ユウト
ユウト
ユウト
ハルナ
不意に起こった フラッシュバックを
必死に掻き消す
シズマ
ユウト
シズマ
シズマ
シズマさんは腕を組むと
ブツブツと何かを呟いた
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ハルナ
ユウト
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
ハルナ
ユウト
ハルナ
ハルナ
ハルナ
シズマ
シズマ
シズマ
シズマ
ハルナ
シズマ
ハルナ
«to be continued»
コメント
4件
野球っ子wwww
最高〜のオチでした〜w
生粋の野球っ子笑 笑っちゃいました笑笑