潮が満ちる前の海に私は黒い帽子を抱いて空を見上げた
今日はあの憎らしいやつの命日
墓に線香もやったし、花も生けた
遺書も書いたし、蟹も食べた
後は潮が満ちるのみ。
だけど足首辺りまで入ってきたどす黒い海水を見ると少しばかり足が震える。
怖いわけじゃない。でもやっと向こう側に行けるという歓喜と、誰かさんの期待を裏切ってしまったことに対して後ろめたさがある。
大丈夫だ、大丈夫と自分に言い聞かせる。 首まで海水が登ってきた
私は黒い帽子を離さないよう強く握り体の力を抜いた。
太宰
コメント
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語彙力を分けてくだされ師匠! (ノ-o-)ノ┫
とても素晴らしいが辛いです幸せじゃないじゃないか尊いけど尊いけど