翠
圉鵺市と比べるとここは人が少ないからいいな。

私は普段ずっとアジトにいるため気分転換に少し外出をしてみたくなった。
翠
槐達、しっかり留守番してくれるといいんだが...

まあ、あの猫の件で槐に警告をしたから恐らく大丈夫なはず...だと思いたい。
翠
あれ?あの姿...

私が歩いていると目の前に青髪のポニーテールの少女がいた。
翠
大将...?

凛
おや?翠さん奇遇ですね。どうしたんですか?こんなところで。

翠
私は普段ずっとアジトにいるので気分転換に少し外へ...

凛
そうですか。確かに、いい散歩日和ですからね。

翠
大将はなぜここに?

凛
私はシェアハウスの皆さんに働きすぎだと言われてしまい、強制的に休日を満喫しろと言われたので人の少ない戒楼市に来たんです。

翠
確かに大将は昔から人の3倍は動きますからね笑

凛
私自身家事は得意な方なのであまり疲れないんですけどね。

凛
そうだ、せっかく会ったんですから一緒にどこかへ行きませんか?

翠
えっ‼︎い、一緒に⁉︎

大将と『一緒に』だと...⁉︎まさかこれはデートではないかっ⁉︎でも私はまだ心の準備が...
凛
お忙しいようなら翠さんの用事の方を優先して構いませんけど...

翠
い、いえ‼︎大将がお誘いしてくれたんですから、私はありがたく受けさせていただきますっ‼︎

凛
?

凛
そうですか、ではどこに行きましょうか?

翠
わ、私は大将と一緒ならどこへでも...

凛
...なら無難に動物園でも行きましょうか。

翠
やはり休日ということもあって人が多いですね。

凛
はぐれないように気をつけて歩きましょうか。

凛
ああ、可愛い...

大将が見ているのはミミズクだ。確かによく見ると可愛い。しかし...
凛
あっ、口パクパクしてますよ。

大将の方が可愛いすぎるっ‼︎動物に対して目を輝かせている大将がとにかく可愛いっ‼︎
凛
あっ、すいません。つい夢中になってしまいました。そろそろ別の場所に行きましょうか。

凛
やっぱりライオンはいつ見ても他の動物とは迫力が違いますね。

翠
百獣の王ですからね笑

凛
あれ?でもなんだか檻の隅に行ってしまいましたね。

凛
どうしたんでしょうか?

翠
まさか...

凛
?

凛
翠さん、どこに行くんですか?

凛
あれ?ライオンがこちら側に戻ってきた...

昔、槐に言われたことがある。「姐さん...怖いオーラが滲み出てますよ?」と。どうやらそのせいでライオンが怖がってしまったのだろう。
翠
私がいなければ...

凛
....

凛
そろそろお昼ですしフードコートに行きましょうか。

凛
翠さんは何が食べたいですか?

翠
私は大将が食べたいものであれば何でも...

凛
何が食べたいですか?

翠
えっ、ですから私は大将が...

凛
な・に・が・た・べ・た・い・で・す・か?

翠
...小腹がすいた程度なのでクレープが食べたいです。

凛
分かりました、では私もクレープにしましょう。

翠
ちょ、大将⁉︎お会計は私が払いますよ‼︎

凛
いえ、私が払います。今日は色々お世話になっているので。

翠
そんな大将の手を煩わせるなど...

凛

凛
私が払うっつてんだろ。

翠
っ‼︎

凛
では翠さんは席を確保しといてください。

翠
は、はい。

今の大将、完全に怒っていた...。間違いない、私の返事が適当すぎだ。とにかくまず最初に謝罪をしなければ...
凛
...楽しくないですか?

翠
は、はい?

凛
今日はすいませんでした。翠さんの大切な時間を無駄にしてしまって。

翠
えっ⁉︎ど、どうして大将が謝ってるんですかっ⁉︎

凛
私は今日一日中、自分の言いたいことだけ言って、挙げ句の果て気に入らないことがあると翠さんにあたってしまって...

翠
違いますよ‼︎私が大将に対する返事を適当に返してしまったんです。それに日頃から無意識に出している怖いオーラのせいで動物を遠ざけてしまったり...

翠
それに大将のその行動は普通なんですよ。

凛
私が普通...?

翠
大将は昔から誰にでも優しく、どんなことに対しても怒らない。

翠
大将は自分を偽って他人に接している。だから少しずつでもいいので本当の自分をさらけ出してみてはいかがですか?

凛
本当の自分...

翠
はっ‼︎す、すいません‼︎私としたことが大変おこがましいことを...‼︎

凛
翠さん、ありがとうございます。

翠
へっ?

凛
なんだか悩んでいた私がバカみたいです。

凛
さぁ、気分を変えてクレープを食べましょう。

翠
えっ?は、はい‼︎

大将は自分を表現することがまだ難しいのだろう。しかし私は少しずつ応援していきたい。
翠
好きですよ、大将。

凛
えっ?

翠
は?え?

ヤバイ‼︎口に出してた⁉︎何を言っているんだ私はっ‼︎
翠
え、えーっと...これは動物が好きだなぁってだけで‼︎

凛
でも今大将って...

翠
違います違います‼︎大将動物好きですよね、の意味です‼︎決して、その、恋愛感情とかではなくてですね‼︎

凛
?

凛
そうですか。

凛
では、まだ見ていない動物がいるのでそっちに行きましょうか。

翠
は、はいっ‼︎

凛
今日はありがとうございました。

翠
いえ、私の方こそ‼︎

凛
翠さんのおかげで悩んでいた気持ちが少し晴れたのでよかったです。

翠
いえ、私も自分の思いを伝えることができてよかったです。

凛
それってさっきの好き...

翠
ああああっ‼︎違います違います‼︎そっちは動物に対して言っただけです‼︎

凛
冗談ですよ。

翠
は、恥ずかしいのでもう忘れてください...

凛
では今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです。

翠
あ、あの...‼︎

凛
?

凛
どうしましたか?

翠
また、機会があれば...2人でどこかに行きませんか?

凛
もちろんいいですよ。

凛
では暗くなると危ないのでまた...

翠
は、はいっ‼︎今日はありがとうございました‼︎

凛

凛
翠さん。

翠
えっ?は、はい。

翠
えっ...

翠
えええーっ⁉︎ど、ど、どうされたんですか⁉︎

凛
私も...いえ、私の方が

凛

凛
大好きですよ。

凛
それでは、また会いましょう。

翠
た、大将...それは不意打ちすぎますよ...

真っ赤に燃えたような夕焼けに包まれた今日は私の人生で最高の休日になった。