雨のち、君

コイツの名前は、タマ子。

2週間くらい前からこの路地裏に 住み着いている野良猫。

ちなみに私の名前は、詩（うた）。

キラキラの女子高生だ。

ガーン

この男、場地圭介はあれから 毎日ここへ来るようになった。

こうやって、他愛もない話をして

誰もいない路地裏で、笑い合うのが 日課になっていた。

場地と会うのは

もう、苦ではなくなっていた。

まるで

カタン

ガシッ

さっきまで憂鬱だった気持ちが

まるで、太陽が差し込むかのように

心地よい温度になっていた。

言ってしまいたい

実は、好きだったって。

この気持ちに気づいたのは、 ついこの間のことだって。

明日、なんて告白しよう。

やっぱシンプルに、 好きです。付き合ってください？

いや、あのバカな圭介のことだから ｢付き合う..ってなんだ？｣ とか言い出すぞーーーー

ちぇ、先生に怒られた

これも全部ケースケのせいだ

だからね、圭介

私の告白、断ったら許さないもんね

頭が真っ白になった。

追いつけない、というよりか 信じられないという気持ちが強かった。

圭介らしい死に様。

圭介らしい生き方。

でもさ、

私と、タマ子を置いて逝くなんて やっぱりバカすぎるよ .. 。笑

分かるよ。

本当は、分かってるよ。

アンタのことだから、何か 理由があってそうしたんだって。

だって貴方は、いつも正しい道を選ぶから。

タタッ

ガサゴソ

タマ子の口には

" 一通の手紙 " が咥えてあった。

詩へ

雑な字で、すぐに誰だか分かった。

ペラッ

おぅ、詩

元気か？笑

これを開いて読んでるってことは ..

俺はもう、この世にいねぇんだな笑

お前は今頃、泣きじゃくってこの手紙 を読んでるだろーけどよ ..

あ、強がったって無駄だぜ？笑

俺にはぜーんぶお見通しだからな！✌️

で、本題に戻すけどよ

あー、そうだな ..

お前と初めて出会ったときの話でもするか？笑

俺さ、実は結構前からお前のこと 知ってんだ。

一目惚れ、って奴か？

お前を一目見たとき、俺の心が バクバクなったんだよ。

あ、バカにすんなよ！？

だから、まぁ ..

その時からお前のことが好き ..

だー！！ なんで手紙に書くとこんな恥ずいんだよ！！

今のは一旦なし！！

んで、ある日

勇気を出して、声かけようとしたんだよ

何がなんでも、名前覚えてほしくてよ笑

バカだよな、俺

内心、ちょー焦ったぜ

中3なんてバレたら、ガキだって 舐められると思ってよ

嘘まで吐いて、お前に近づいた。

ごめんな。

こんな俺で、本当にごめん

.. でも、後悔はしてない。

俺のこの人生は、最高に幸せだったぜ笑

いつかお前も、そう思えるような日が 来ると信じて

これで良かったと思って

俺の分まで、幸せになってくれ。笑

ふざけんな

1人だけ ..

1人だけ ..

ずっと、私のこと好きだった ってことじゃん。

両思いだったじゃん。 私たち

もっと早く気持ちを伝えていれば。

もっと早く、気づいていれば。

なんて、今更後悔してる 自分に腹が立つ。

バシャッ

ザー

ﾎﾟﾂ .. ﾎﾟﾂ

『 雨のち、君 』 読み切り / アラコン 📍（アラシクロバネのコンテスト）