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着いた佐久間の家は意外と広かった。俺の家より広いんじゃないかな

大ちゃん

取り敢えず、寝とけ

あべ

あ、うん…ありがとう…

大ちゃん

俺リビングにいるから。何かあったら呼んでくれて構わねぇからな

ニコリとも笑わないけれど、優しく撫でてくれる大ちゃん。祖父母のことを思い出して涙が頬を伝う

大ちゃん

どうした?何か嫌だったか?

あべ

え、?

大ちゃん

泣いてる

あべ

あ、ごめ、大丈夫

大ちゃん

大丈夫なら良いが…

あべ

ごめんね、心配かけちゃって

大ちゃん

謝んなくていい。当たり前のことだから

大ちゃんはそう言って部屋から出ていった。少しだけ寂しい気持ちがあるものの、今は体調が優れない方が辛いので目を閉じる

あべ

……ねれるかな、

俺の予想を上回るふわふわベッドのせいでそのままぐっすり眠りに落ちてしまった

次に目が覚めたのは夕方の四時。ゆっくり体を起こし、ぼーっとしていれば急に寂しくなる

あべ

……んん、

どうしても今日はこの寂しさに耐えられる自信がなく、大ちゃんの居るリビングに向かう

部屋からヒョコ、と顔だけ出してみれば、大ちゃんの後ろ姿が目を入る

あべ

良かった…いた…

小さな声でそう呟いては大ちゃんに近寄る

大ちゃん

んお、どうした?

ぎゅっ、と後ろから抱き着いてみれば、少し驚いた声を出した大ちゃん。珈琲を飲みながら本を読んでいたらしい

あべ

寂しくて…

大ちゃん

なるほどな。呼んでくれりゃ部屋に行ったのに

あべ

あ……呼べばよかったのか…

大ちゃん

頭に無かったんだな

あべ

無かった…寂しいの方が勝りすぎて…

大ちゃん

なるほどな

座って珈琲を飲んでいた大ちゃんは、珈琲カップを机に置き、本を閉じて俺の手を引く

あべ

んん?どこ行くの?

大ちゃん

寝室

あべ

俺眠くないよ?

大ちゃん

知ってる

俺は引っ張られながら大ちゃんの後を着いていく

ベッドに寝ろと言われたので言われるがままに寝転がれば、大ちゃんが隣に寝転ぶ

あべ

わ……ちっか…

大ちゃん

確かにな

あべ

良いの?付き合ってもないのに…

大ちゃん

誰かにバレるわけでもねぇから大丈夫だろ

そう言って俺の事を優しく抱き締める大ちゃん。久々の人肌に触れたせいか、また涙が頬を伝う

大ちゃん

こうすんのも悪くねぇな

あべ

うん……

大ちゃん

……。

急に大ちゃんが静かになる。不意に視線を上げてみれば、大ちゃんは心地良さそうな顔で眠りに落ちていた

あべ

ふふ、寝ちゃった

大ちゃん

……。

あべ

こうやって見ると顔立ち綺麗だな…中性的って言うのか、

大ちゃん。基、佐久間の顔をじっと見詰めていれば、んん、と少し顔を顰めて寝返りを打たれてしまう

あべ

あ、綺麗な顔が…

大ちゃん

……。

少しだけ荒い呼吸をする大ちゃん。夢の中で嫌なことでもあっているのか次第に汗をかき始める

あべ

大丈夫かな…

大ちゃん

んん……

どうにも落ち着かないのかゴロゴロと寝返りを打ち始めた。俺はそんな大ちゃんを優しく抱き締めてみる

大ちゃん

……。

あべ

お、

少し落ち着いたのか先程までの荒い呼吸が嘘のように静かになり、規則正しい寝息が聞こえ始めてくる

あべ

……んあ、やば、ねちゃう

大ちゃん

ス-…ス-…

大ちゃんの寝息を聞いていればこちらも眠くなり、また眠りに落ちてしまった

めぐろ

……くん

めぐろ

あ……

めぐろ

あべ……

めぐろ

阿部くん

あべ

んん、?

優しい声に起こされ、目を開ける。目の前には目黒が居た。隣には大ちゃん

めぐろ

おはよっす

あべ

おはよぉ…

めぐろ

二人とも気持ち良さそうに寝てたんで、起こすのあれだったんすけど

あべ

どぉしたのぉ?

めぐろ

阿部くん、泊まるなら荷物持ってこなきゃだなって思いまして

あべ

あ、確かに……

めぐろ

取りに行きませんか?って言うお誘いっす

あべ

行く〜

めぐろ

んじゃ行きましょ

ぐっすり眠っている大ちゃんを起こさないように起き上がっては目黒と共に俺に家に向かう

俺の家に入り、洋服等を大きめのバッグに詰め込む

めぐろ

それにしても……

あべ

へ?

めぐろ

んや、不眠症の大ちゃんがぐっすり寝てんの初めて見たんで…

あべ

そうなの?

めぐろ

はい。佐久間くんはおっちょこちょいでよく怪我するんす。んで、大ちゃんは視力が悪くて不眠症なんすよね

あべ

そぉなんだね…

めぐろ

薬飲んでなさげだったのにぐっすり寝てんなぁって思って

あべ

それは不思議に思うな…

めぐろ

安心しきってたんすかね…

あべ

んー…俺が人肌恋しくて甘えたからかなぁ…?

めぐろ

んー……わっかんないっすね

あべ

分かんない

バッグの中にギュムギュムと服を押し込んではパンパンのバッグを目黒にポイッと渡して玄関から外へ出る

目黒と一緒に佐久間の家に帰っていれば、遠くから小さな影がゆらゆらと揺れながらこちらへとやってくる

めぐろ

あ、あれ多分大ちゃん

あべ

へっ?あ、嘘

めぐろ

ほんと

大ちゃん

はぁ…こんな所に居た、

めぐろ

んは、すみません

大ちゃん

攻めて置き手紙ぐらいしろ……

めぐろ

さーせん

大ちゃん

シュークリーム

めぐろ

はいはい笑

あべ

シュークリーム?

めぐろ

大ちゃんの好物っす

あべ

へぇ……可愛いもの好きなんだ?

大ちゃん

可愛いのか?

あべ

可愛い

めぐろ

可愛いっすね

大ちゃん

そうか……

可愛いと言われて少しだけしどろもどろしている大ちゃんを見て、目黒と俺でクスッと笑いを零しながら佐久間の家に向かう

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