テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
この人生で1番最初の記憶
それは、母親の体内
あぁ、また俺は生まれ変わるのか
なんて考えながら羊水の中に 浮かんでた
ふと横を見ると
いや、目が機能してないから、 見たわけじゃないな
とにかく、母親の体内には 俺以外にも何かいることに 気づいたんだ
"それ"は生きていた
生きようともがいていた
"それ"は俺の最愛の人だった
レイ
この一生でも
お前は俺を愛してくれるのだろうか
いや
愛さなくていいから
お前が幸せな未来が来れば
俺はそれで良いから
前の人間としての一生では
俺のせいでレイが死んだ
アイツは
俺を愛したせいで死んだんだ
アイツは
俺の命と自分の命
「天秤にかけるまでもない」と
笑いながら
子供のように無邪気な笑顔のまま
逝ってしまった
「生まれ変われたら」
「また、会えたら」
「名前を呼んで」
「あたしたちなら、 たとえ記憶が無くなってても」
「それだけで十分だから」
「待ってるから」
レイは俺との再会を願って逝った
俺は
もうレイと関わるのが怖くなった
もう、これ以上
笑って逝くお前を見たくなかった
この一生では
俺とレイは双子として産まれる
なら、恋人同士になんて
なれっこない
"普通なら"
こんなこと言っちゃ悪いが
残念ながらレイは普通じゃない
双子で遺伝子が100%同じでも
それが俺なら、アイツは愛する
どうすれば良いか考えた
まだ発達していない頭で考えた
レイの幸せのために
必死だった
そして思いついたのが
結合双生児
今思うとぶっ飛んでんな俺
なんか、わけわかんなくなって
投げやりになってたんだろうな
ま、とにかくさ
お察しのとうり
俺は自分からレイと混ざった
けっこーキモいな
わかってたけど
でも、それがあの時の最善だったんだ
そう、思うようにしてる
レイと離れるのは嫌だし
でも、レイが俺を個人として 認識できちゃうと
またああなるんじゃないかって 思っちまうし
だから、一緒になった
これなら、ずっと一緒で
でも恋人にはならないだろ?
やっぱ俺って、天才だったんだ
でも、驚いたことに
俺とレイ以外にもう1人
生きている奴がいた
イザナだ
ビビった
今まで双子で産まれることは あったけど
三つ子は初めてだった
イザナもこの一生では家族なんだ
なら、俺はレイとイザナの 幸せを願う
2人を絶対に守り抜く
でも
上手くいくわけないと わかってた
母親の腹の外の会話が 少し理解できていたからだ
「本気で悪魔を産む気なのかい」
「この子たちは悪魔なんかじゃ ありません!」
「でも三つ子だろう」
「人間の三つ子です!」
「今からでも遅くはない、堕胎しろ」
「いやです。産まれてきた子たちが 悪魔かどうか、確認してからでも 遅くはないでしょう!」
「この子たちは間違いなく 私の子なんです!!」
「そして、私も父親も人間です!」
「悪魔なわけがない!」
「父親はお前が孕んだ途端に 蒸発したじゃないか」
「きっと自分が悪魔だと気づかれる のが怖くて逃げたんだ」
「違う!!!」
「アンタたちは狂ってる!!」
「この世に悪魔なんているわけない」
「アンタらの勝手な思い込みに 私の子供たちをまきこむな!」
「アンタらの勝手な思い込みで、 子供たちの未来を奪うな!」
「一族の落ちこぼれが何を言う」
「口を慎め女郎」
周りの人間に殴られたのか
羊水が大きく揺れた
はぁ
今回も周辺環境は終わってんな
まぁ、母親が味方なのは よかった
そして俺たちは
産まれた
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ
テコテコ